2013年08月05日

大学が多すぎるってホント?

テーマ:教育

ニュースのポイント

 朝日新聞社と河合塾の「ひらく 日本の大学」調査で、大学の学長の6割が全国に783校ある大学数を「多い」と認識していることがわかりました。大学進学率が5割を超える「大学全入時代」ですが、国際比較などから日本の進学率はまだまだ低いとの指摘もあります。日本の大学の数は多いのでしょうか?

 今日取り上げるのは、1面の「学長の6割『大学多い』/本社・河合塾調査/『経営厳しい』36%」です。
 記事の内容は――調査で、大学数が「多い」と答えたのは362校(59%)、「適正」は160校(26%)、「少ない」は17校(3%)だった。「多い」と答えた学長に、その影響を複数回答で尋ねると、「学生の質の低下」83%、「大学の経営難」73%、「教育の質の低下」57%だった。1992年に205万人だった18歳人口は昨年119万人に減少。一方、この20年間で大学の数は規制緩和で523校から約1.5倍に増えた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 少子化で若者の数は減っているのに、なぜ就活は楽にならないのだろう。こんな疑問を抱いたことがあるかもしれません。長い景気の低迷、あるいはリーマン・ショック後の不況で企業の求人数が減った経済的な理由が大きいのですが、大学増にともなう進学率アップで大学生の数が増えたことも構造的な要因の一つです。

 昨年秋には、当時の田中真紀子文部科学相が「大学がすごくたくさんつくられ、教育の質がかなり低下してきている」として、ほぼ決まっていた3大学の新設を急に不認可にすると言い出して大騒ぎになりました。乱暴なやり方に批判が相次ぎ、結局認可されましたが、田中氏の主張そのものには賛同する意見が多くありました。

 一方で、もっと進学率を上げるべきだとの意見もあります。主要国の1990年から2009年にかけての大学進学率をみると、豪州35%→94%、韓国37%→71%、米国45%→70%、フィンランド45%→69%、スウェーデン31%→69%など、大きく上がっている国が目立ちます。進学率の伸びが大きいほど経済成長も大きいとの指摘もあります。日本は36%→50%でした。元文部科学副大臣の鈴木寛さんは「今後10年間に国内で雇用が増える分野は①医療・介護・健康・保育②情報・文化産業③グローバル人材の3分野。それぞれ200万から400万人程度の雇用創出効果が見込まれる。医療・介護・情報などの産業では、従事者の9割以上が高等教育修了者だ」として、産業構造の劇的な変化に対応するために、質をともなった大学進学率の向上を図るべきだと説きます。

 大学の数は、大学教育や学生の質に直結する問題であり、今後の日本の高等教育の行く末、ひいては将来の日本の産業競争力を左右する大テーマでもあるのです。今日の3面では、明治大と立教大など、大学間の連携に活路を見いだそうと知恵を絞る試みも紹介しています。

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