2020年06月29日

リニア新幹線、2027年開業困難に 巨大事業にリスクあり【週間ニュースまとめ6月22日~28日】

テーマ:週間ニュースまとめ

 総事業費9兆円というJR東海の巨大プロジェクトであるリニア中央新幹線の建設に暗雲が漂い始めました。静岡県内の南アルプストンネルを掘る工事に川勝平太・静岡県知事が同意しないためです。川勝知事は工事によって大井川の水量が減ることを問題視しています。大井川は静岡県民の飲料水や農業用水として使われており、工事は県民の生活に大きな影響を及ぼすというものです。この主張はもっともですが、背景には別の不満もあります。リニアが通過する都府県の中で駅ができないのは静岡県だけです。一方でリニアができれば東海道新幹線の旅客数は減ることが予想されます。そうなれば静岡県内の駅に止まるひかりやこだまの本数が減る可能性があります。川勝知事は「静岡県にとっていいことはひとつもない」と言っています。自前のお金でつくるというJR東海の経営にもここにきて不安な要素が出てきました。JR東海はドル箱の東海道新幹線を持っていますので、高収益の超優良企業でした。ところが新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。リニア計画は東京―名古屋―大阪の3大都市圏の人の流れがますます増えることが前提になっていますが、外国人観光客はほとんどいなくなり、出張のビジネスマンも激減しました。いずれ外国人観光客は戻ってくるかもしれませんが、リモートワークが急速に定着してきたビジネスマンの出張は減るかもしれません。リニアの建設工事が遅れ、JR東海の経営がこれまでのような順風満帆でなくなれば、リニアの負担が重くのしかかってきます。まだどうなるかわかりませんが、当初描いたバラ色の未来像に微妙に影がさしてきたのは間違いありません。計画から完成まで長い時間がかかる巨大プロジェクトにはリスクがつきものです。長い時間の間に社会の状況が大きく変わるためです。中海(島根県・鳥取県)や諫早湾(長崎県)の干拓事業は戦後の米不足を解消する目的で計画されました。しかし、20世紀終盤に完成したときには米余りの時代になっていました。結局、巨額をつぎ込んで何のためにしたのかわからない事業になりました。巨大プロジェクトを始める際には、よほどしっかりした将来見通しを持っていないといけないということは歴史が証明しています。リニアの行く末を注意して見ていきましょう。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

(図解は、リニア中央新幹線の計画)

【科学】スパコン富岳、世界一「2位じゃだめ」追及の京に続き(6/23.Mon)

 理化学研究所富士通が開発したスーパーコンピューター富岳(ふがく)」が、22日に発表されたスパコンの計算速度ランキング「TOP500」で世界一になった。日本勢が首位を奪うのは「2位じゃだめなんでしょうか」と追及された先代の「(けい)」以来9年ぶり。無理に速さを追うのではなく、使いやすい「オンリーワン」のスパコンを目指した先に「ナンバーワン」の花が咲いた。先代の京は世界一を強く意識したあまり使いにくくなり、利用は広がらなかった。主要企業が撤退するなど、開発の混乱もあった。富岳はこれを反省し、「使いやすいオンリーワン」のスパコンを目指した。名称も、利用の裾野が広がるよう富士山にちなんだ。開発費は国費だけで1100億円。中国が、富岳の倍の性能で今年デビューさせようとしていた新型が間に合わなかったこともあり、「ナンバーワン」の座も転がり込んだ。富岳の本格稼働は来年度の予定だが、すでに新型コロナウイルス感染症対策の研究で実績を上げ始めている。将来は創薬や高性能な材料の開発、気象・温暖化予測などに利用される。

【社会】ディズニーランド、7月1日から再開へ 当面は事前予約(6/23.Tue)

 オリエンタルランドは23日、新型コロナウイルスの影響で臨時休園中の東京ディズニーランドディズニーシー(千葉県浦安市)について、7月1日に再開すると発表した。再開は約4カ月ぶり。当面の間は事前予約制とし、入園者数を半分以下に抑える。来園者には検温やマスク着用をお願いするという。両パークは2月末から休園が続いている。当初は3月中旬に再開する予定だったが、緊急事態宣言や自治体の休業要請などを受けて休園期間を延長。6月1日の時点では再開について、「パーク運営の準備や社内外の状況が整った段階で判断する」などとしていた。再開後も当面はアトラクションやレストランなどの一部を休止し、パレードやショーは休止するという。また映画「美女と野獣」などがテーマの新エリアの開業時期については未定だという。

【経済】オリンパスがカメラ事業を売却へ スマホ普及で低迷(6/24.Wed)

 オリンパスは24日、カメラ事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに譲渡すると発表した。9月末までに最終契約を結び、年内の売却完了をめざすという。売却額は未定。同事業では、ミラーレスカメラ「OM-D」や「PEN(ペン)」シリーズを展開している。オリンパスのカメラ事業は1936年に始まり、その技術は内視鏡などの医療事業にも応用されてきた。ただ近年はスマートフォンの普及でカメラ市場は縮小し、業績が低迷。カメラ事業は、2020年3月期まで3年連続で営業損失(赤字)を計上していた。同事業を手放し、開発投資を成長分野の医療機器などに集中させる。

【社会】リニア、27年開業困難に 静岡知事、準備工事認めず(6/26.Fri)

 リニア中央新幹線の品川(東京)―名古屋間の2027年の開業が遅れる公算が大きくなった。JR東海が6月中の着手が必要としていた静岡県内の工事の準備について、川勝平太知事は26日、「認められない」と明言。環境問題をめぐって溝が埋まっていない。川勝知事とJR東海の金子慎社長は同日、県庁で同問題をめぐって初めて会談した。JR東海は準備工事に6月中に着手できなければ「27年開業が困難」と言及しており、トップ会談で打開を図ろうとしたが、平行線に終わった。川勝知事は会談後の報道陣の取材にも、JR東海が求める工事の大部分は「本体工事と一体。認められない」と断言。この発言を受け、JR東海幹部は同日夜、開業が遅れる公算が大きいとの認識を示した。開業が遅れれば、総事業費9兆円の巨大インフラ事業は軌道修正を余儀なくされそうだ。最速で37年の大阪延伸開業の計画にも影響がでる可能性がある。リニアは開業から半世紀余が経過した東海道新幹線を補完し、東京、名古屋、大阪の三大都市をつなぐ大動脈を二重にすることを掲げ、JR東海が2014年に着工。最高時速約500キロで品川―名古屋間を最速40分で結ぶ。9兆円全額をJR東海が負担し、国も財政投融資から約3兆円を貸し付けた。

【国際】世界のコロナ感染者、累計1000万人超える 最多は米国(6/28.Sun)

 新型コロナウイルスの世界の感染者が28日、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計で累計1000万人を超えた。死者は世界で50万人に迫っている。日本時間28日午後7時時点の集計によると、感染者数は米国が最多の251万人超(全体の4分の1)で、ブラジル約131万人、ロシア約63万人、インド約53万人、英国約31万人と続く。

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