ニュースのポイント
サントリーホールディングス(HD)が傘下のファストフードチェーンの売却を決めたり、出資比率を下げたりしています。2016年1月にはサンドイッチチェーンの日本サブウェイの株式の65%を、世界のチェーンを統括する本社のサブウェイインターナショナル(オランダ)に売却することを決めました。そして今月は、自ら「創業」し、40年近く維持してきたハンバーガーチェーン、ファーストキッチンの全株式を売却することも明らかにしました。サントリーHDはなぜ、次々とファストフード業界から手を引こうとしているのでしょうか。(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、経済面(6面)「ファーストキッチン株売却へ/サントリー、ウェンディーズに」です。
記事の内容は――サントリーホールディングスは、ハンバーガー店を展開する子会社ファーストキッチンの全ての株式を、同じくハンバーガー店運営のウェンディーズ・ジャパンに売ることを決めた。売却額は明らかにしていない。ファーストキッチンはサントリーが1977年に創業し、現在は全国に135店舗を持つ。2015年の売上高は87億円。サントリーは2014年に米蒸留大手ビーム(現ビームサントリー)を買収するなど酒類や清涼飲料に注力し、その他の事業は見直しを進めている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
みなさんは、ファーストキッチンがサントリーの子会社だと知っていましたか?
よく利用する飲食店チェーンでも、なかなか親会社の名前を知る機会はないものです。それでも飲食業界、サービス業界を志望する人はふだんから、どのチェーンがどの企業の傘下にあるのか意識しておくと日々のニュースの理解がより深まります。
「今日の朝刊」でもたびたび触れていますが、少子高齢化が進む日本市場は成長に限界があり、どの業界もグローバル企業への変身を急いでいます。ファーストキッチンも、サントリーにとっては成長の見込みにくい国内ファストフードチェーンを売って資金調達の一助にでき、買い手である外資ウェンディーズ・ジャパンにとっては、日本にあるファーストキッチン135店舗とその人材が一気に手に入るという「ウィンウィン」の取引です。
サントリーHDは、海外での販路拡大、売上高と同時に知名度をアップさせる即効薬として、積極的にM&Aを進めてきました。2014年には約1兆6000億円を投じてビームを買収、それ以前にも、同社の中核子会社サントリー食品インターナショナルが2009年にオレンジ炭酸飲料オランジーナを展開する仏飲料大手オランジーナ・シュウェップス・グループを買収しています。2015年には国内でも、日本たばこ産業(JT)が撤退した飲料事業を譲り受け、人気ブランドのほか、JT系の自販機網を手に入れました。酒類、清涼飲料への強いこだわりが伝わってきますね。
同HDの売上高は2015年末で2兆6868億円。グローバル化の推進役である新浪剛史社長(上写真)が2020年までの必達目標としている「売上高4兆円」にはまだ大きな隔たりがあります。同社の財務情報によるとネット有利子負債(借入金+社債-現金・預金他)は2015年末時点で、1兆5629億円と、ビーム買収に投じた額がまだ負債のまま残っている計算です。今回はまず借金を減らすという選択をしましたが、主力分野では今後も積極的にM&Aを続けることは間違いないでしょう。
限られた資金を企業がどう使うかは、成長する分野、衰退する分野を知る手がかりになります。経済面の小さな記事にも業界研究のヒントがありますよ。
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