2015年03月04日

体育会系はもう就活で売りにならない?

テーマ:就活

ニュースのポイント

 大学で体育会に所属している学生は就職ではかなり有利――と、ずっと言われてきました。でも、衣料品メーカー「ワールド」執行役員の足立光氏は「就職で『体育会系』を売りにするのはやめた方がいい」と学生に呼びかけています。なぜでしょう。

 今日取り上げるのは、オピニオン面(17面)の「THE HUFFINGTON POSTから 体育会系は企業ニーズに合わぬ/ワールド執行役員 足立光さん」です。
 ザ・ハフィントン・ポスト日本版は、朝日新聞と提携しているニュースブログサイトです。記事の内容は――足立氏は、体育会系について「今の企業側のニーズに合っていない」という。同じ製品を大量生産して売った高度成長期には「日本的な価値観を共有し、言われた通りに疑問を持たずに実行していくという社員」が求められたが、グローバル化が進む今は、英語力や柔軟性などが必要で、それらは上意下達の中で厳しい練習に耐えただけで身につくものではないと指摘する。礼儀正しさや規律といった体育会系の特徴は「社会人生活を送る上では、かえってプラス」だが、別の利点もアピールできるような経験を積むことが理想だと主張する。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 ハフィントン・ポストの足立さんのブログでは、いま企業が求めている人材像の例として、人材会社ラッセル・レイノルズが提唱する「グローバル化時代に求められる人材とは?」を紹介しています。
 ①グローバル英語力 ②セルフ・スターター ③柔軟性 ④異文化の相手に対するコミュニケーション ⑤スペシャリスト ⑥事業構想力――の六つです。

 セルフ・スターターとは、誰かに言われなくても自分から高い目標を設定して行動を始める能力のこと。足立さんは、部の方針に従って行動し、誰かが設定した厳しい練習に耐えるのが当たり前の体育会で養われるものではないと言います。状況に応じて対応できる柔軟性は同じことをやり続ける体育会の行動とは反対だし、英語力など他の能力も体育会で身につくものではないとの主張です。

 もっとも、足立さんは体育会だからダメと言っているわけではありません。中にはコーチの指示に従うだけではなく、部員が目標を設定して練習メニューを自分たちで練り上げた人もいるでしょうし、スポーツの試合の中で柔軟性を身につけた人もいるはず。厳しい練習に耐えたといった「体育会的」な経験に加えて、プラスアルファがあるとより良いという話です。

 実際には多くの企業の採用で、なお体育会系の学生は有利だと思います。「人事のホンネ」に登場する企業にも体育会経験者を歓迎する企業が多くあり、採用担当者が体育会出身という例も目立ちます。体育会で得た経験を積極的にアピールしてください。ただ、体育会にいたこと、優秀な成績を残したことだけでは何も伝わりません。
 
 人事のホンネで、大成建設人事部の河野耕作さんはこう語っています。
「海外で何かに挑戦したり部活を頑張ったり、いい経験をしている方はとても多いのですが、それを自分でうまく振り返ることができていない方が多い。海外に行った、部活を頑張ったという事実はあまり重要ではありません。なぜ海外に行き、そこでどんな困難があって、どう自分なりに考え、どう行動したのかを知りたいんです。でも、そこを突っ込んで聞くと、自分の中で整理できていず『そう言われると、ちょっとわかりません』という回答になることが結構多い。非常にもったいない。逆にそこをちゃんと答えられる方には説得力を感じます」

 体育会に所属していない皆さんも同じですよ。留学もボランティアもサークル活動も、行ったことややったことが大事なのではありません。なぜ、どんな思いで取り組み、どんな努力をしたのか。できるだけ具体的に語れるようにしてください。

※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。ぜひ登録してください。

アーカイブ

テーマ別

月別