人事のホンネ

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【特別編 Part8】
面接はキャッチボール 丸暗記はNG、1分で話す練習を!

2019年05月21日

 毎日のように面接を受ける日々だと思います。でも、何度面接を受けても通らない人、いませんか。要因はいろいろですが、多くの人が陥りがちなのが「話がだらだら長い」です。採用担当者は「面接はキャッチボールですから」と口をそろえます。企業はなぜキャッチボールができるかどうかを重視するのでしょうか。(編集長・木之本敬介)

(写真は、「面接解禁日」に面接会場に向かう学生たち=2018年6月1日、東京都渋谷区)

キャッチボールは「仕事の基本」

JR東海】(面接のポイントは)普通のコミュニケーションがとれるかどうか。こちらから質問した趣旨を理解して端的に答える――という言葉のキャッチボールが円滑にできることが一番大事だし、それが仕事の基本だと思います。(コミュニケーションがとれない学生は多い?)中にはいます。言葉のキャッチボールができなかったり、質問の趣旨とまったく違う答えが返ってきたり、一つの話を延々5分10分話し続けてしまったり。逆に何を聞いても答えが一問一答で返ってくる学生もいます。能力が高くても、まずは自然なコミュニケーションがとれることが一番ですね。

丸紅】面接といえども会話のキャッチボールであることにかわりはないので、きちんとキャッチボールができるかどうかも重要です。質問の意図をきちんと理解してポイントをずらさずに回答をしながらも、自分自身のPRも含めて言いたいことをしっかりと伝えることができる人との面接は、会話が弾むものです。コミュニケーションと言うと、話す力に焦点が当たりがちですが、相手の立場に立って話ができるかどうか、つまり「聞く力」も大きなポイントです。商社の仕事で求められるコミュニケーションも同じなのではないでしょうか。

 経団連が加盟企業に行っている新卒採用に関するアンケート調査の「選考にあたって特に重視した点」で、毎年トップを続けているのが「コミュニケーション能力」です。2位以下の「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」を挙げた企業が5~6割なのに対し、コミュ力は8割以上。どんな仕事も、コミュ力がないとできないということです。企業はその力を、言葉のキャッチボールができるかどうかで判断しているわけです。
 コミュ力は「話す力」だけではありません。質問を正確に理解できなければ、面接官の求めには応じられません。だから「聞く力」も大事なんですね。キャッチボールがうまくできて会話が弾む面接は、たいてい良い結果につながります。

雑談でも面接?

横浜銀行】ESの記述に沿って質問していきます。会話のキャッチボールができるかは見ますね。銀行の仕事はコミュニケーション能力、普通に人と会話できることが大前提だからです。
 聞くポイントは、基本的には各面接担当者に任せていますが、私の場合は雑談のような面接です。「今朝、電車が遅れていたよね」「暑いねえ」といった会話から入って、「会話ができるか」「機転が利くか」を見ています。志望動機も聞きますが、動機そのものより「こういう理由で、こう考えて志望したんです」と整理されているか、そこに本当の思いが込められているかを判断します。(用意してきた答えだけでは対応できない?)そうですね、丸暗記した内容を間違えないように話す学生も多くいます。緊張する場なので、丸暗記がダメということではありませんが、「本当の考えを自分の言葉でしゃべれるか」が重要です。

三菱ケミカル】(面接で重視するのは)なるべく学生にしゃべってもらうようにして、その場でのやりとりを大切にしています。ESにそって順番に聞いていくのではなく、対話の中で、どういう表現をするか、どんなバックグラウンドがあるのかを見ます。

 面接を受けた学生から「雑談で終わっちゃった」という感想を聞くことがあります。あえて雑談をして、リラックスした普段の姿を見ると同時にコミュ力や対応力を判断するやり方です。
 横浜銀行の方は必ずしも否定していませんが、面接で話す内容を丸暗記するのは絶対にやめましょう。「覚えてきたことを一生懸命思い出しながらしゃべっている」のがバレバレですし、相手の心には響きません。緊張で忘れてしまったらパニックですよね。暗記は百害あって一利なし。面接準備では、出だしとキーワード、オチを用意しておき、あとはその場で自分の言葉にするのがお勧めです。

すべてを見られている

全日本空輸(ANA)】面接の際には具体的な仕事の領域やキャリアパスをイメージしながら、そこでどのようなパフォーマンスができそうか、また将来的なポテンシャルはどの程度ありそうか、などをイメージしながら人物把握に努めています。あいさつの仕方やコミュニケーションの取り方ひとつから、例えば成長してきた環境やコンピテンシー(能力、行動特性)など様々なことが理解できたりします。会話のキャッチボールをしながら、相手が伝えたい内容にあわせて掘り下げることを心がけています。

住友生命】その人の人間そのもの、人間性を見たい。ESに書いてきたこと、やってきたことはもちろんですが、会った瞬間から、どんな挨拶をするかとか、目を見ながら話すかとか、服の端を触って話すなど、しぐさ一つとっても気になります。人間の総合力を見たいので、会話のキャッチボールをすることで、その人のやってきたことと、そこにくっついてくる思いを掘り下げたい。
 求めるタイプは、一つは素直に努力ができる人。あとは、人と一緒にする仕事が圧倒的に多いので、他人に共感・感動できる人です。「いろんなことにチャレンジしました」「素直にやってみました」という人は多いのですが、本物の努力をしてきた人を採用したい。ほんとに泥臭く努力した学生時代の実績や経験、取り組んだことがある人。やってきたことをつぶさに聞きたい。準備してきたことをバーッと言うのは皆さん上手ですが、我々はなるべく会話でキャッチボールして「その時どう思ったの?」と突っ込んで聞きます。リアルにやっていれば思ったことをすぐ言えると思う。半分以上脚色だと言葉に詰まります。キャッチボールする力も能力。それによって、本当の努力かどうかを見たい。

 話の中身だけでなく、あいさつ、話し方、しぐさなど、あらゆるところを見られます。さらに、キャッチボールしながらこれまでの体験を深掘りされます。本気で取り組んだことであれば、どんな角度から突っ込まれても自信を持って答えられます。心配いりません。

洞察力、危険察知能力もコミュ力

電通】サービス業なのでコミュニケーション能力を一番に見ています。すぐ人と仲良くなれますという狭義のコミュニケーション能力じゃなく広義の能力です。要は、面談員の質問を素早く理解し、自分の考えを的確に簡潔にまとめて、分かりやすく説明できるかどうかというベーシックな面。あとは、イマジネーションというか洞察力。こう言うと面談員はどういう気持ちになるのか、だとするとどう伝えればいいんだろうなど、細やかな対応ができるかどうか。
 危険察知能力もありますね。「志望動機は?」と問われて、用意してきた動機を延々としゃべり続けたりしたら危険察知能力ゼロでしょう。面談員が飽きていることに気づかず、短い面談時間の中で5分間も志望動機をしゃべるなんてあり得ない。そういったことも含めてコミュニケーション能力なんです。
 仕事でもありますよね。お得意さんのところに行って、相手の顔色を見ながら、今日は新しい話を聞いていただけそうかな?とか、それともあんまりややこしい話を長時間はできないなとか、短めに切り上げるべきかなとかを考える。そういう、人と相対する能力は1次面談である程度見られるんじゃないでしょうか。

 面接では一つの質問に「1分」程度で答えるようにしましょう。キャッチボールですから、一つの質問に3分、5分、だらだら話し続けたら何が起きるかわかりますか? 面接官の頭には「話をまとめられない学生」というイメージがどんどんふくらみ、もう話の中身は入ってきません。「○分以内で」の指定がなければ1回の答えは15秒から長くても1分で。相手が興味を持ったようなら長めに、興味がなさそうなら短めに切り上げ、次の質問を待つ。面接官の反応を見ながら臨機応変に対応することも大切です。最初にズバリ結論を言ってから理由や具体例を説明すると、話しやすく、相手も聞きやすくなります。1分程度でまとめる練習はしておきましょうね。

みなさんに一言!

テレビ朝日】時間いっぱいしゃべり続けて「自分の言いたいことは全部言えた」と気持ちよく帰る学生がいますが、面接はキャッチボールです。こちらが聞きたいことを聞けなかったら意味がない。この人はそういう機微がないんじゃないかと思うと、一緒に仕事をするのは難しいですよね。例えば「手短にお願いします」と言われ、自己紹介したあと「けっこうしゃべるんだね」と言われたら、「長かったんだな」と理解して次の話題に反映させるとか。「一つ目は……、二つ目は……」と、記憶の中枢から読み出すような人も考えものです。気持ちはわかりますが、目の前に相手がいるのにお決まりのトークしかできない営業マンが来たら、「やっぱりちょっとね」ってなるじゃないですか。

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