人事のホンネ

株式会社横浜銀行

2018シーズン【第12回 横浜銀行】
メガ銀とは違う!軸は「地域の活性化」 学生時代より勉強必要

人財部金融ビジネススクールグループ長 岡村健寛(おかむら・たけひろ)さん、人財部金融ビジネススクール副調査役 高橋邦行(たかはし・くにゆき)さん

2017年05月15日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第12回は、地方銀行の雄・横浜銀行です。同じ銀行でも、メガバンクとは理念や軸足の置き場が全く異なるそうです。「地銀にしかできないこと」にかける強いプライドが伝わってきました。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──2017年入社の採用実績について教えてください。
 岡村さん(写真右) 男性93人、女性92人で合計185人です。男女半数ずつ採用することを目指しています。

 ──女性が多いですね。「一般職」も含めた人数でしょうか。
 岡村 横浜銀行にはコース別の職種はありません。関わる仕事はさまざまですが、待遇は全員「総合職」となります。

 ──全員総合職はいつからですか。
 岡村 2年前からです。それ以前は「総合職」「一般職」といったコース別に採用していました。それを廃止して、既に働いている行員も新卒も全員「総合職」にしました。
 銀行には女性が多いのですが、コースや職種を分けることで、女性の活躍の場が狭くなっているケースもありました。女性の活躍の場をさらに広げるのが目的の一つです。

 ──理系出身者は何人?
 岡村 15人です。本当はもう少し採用したかったですね。

 ──銀行の理系採用というと、最近では金融とIT(情報技術)を組み合わせたサービス「フィンテック」などに関わる仕事を担うのですか。
 岡村 そうですね、最終的にはそういう仕事に就いてほしいと考えています。フィンテックや市場の運用の分野では、理系の学生が学んだ基礎が役立つことが多くあります。もちろん文系で活躍している人もいますが、リスクを具体化してバランスを考えるときに、理系人材はもっと必要になると思います。

 ──理系も含めて新入行員の配属は?
 岡村 配属時は全員支店で営業をし、銀行員としての基礎を身につけます。後に専門分野に行く場合も、最初の3~4年は「一般的な銀行員」として仕事をします。そうすれば、専門分野で働くときに「自分が銀行の中で何をやっているのか」が分かるようになります。

 ──その後、いろんな専門分野に行くのですね。
 岡村 はい。ICT推進部、リスク管理部、市場国際金融部などは理系の人が活躍することが多い部署ですね。フィンテックは総合企画部の担当です。

  ──理系は大学院卒が多い?
 岡村 いえ、学部卒が多いですね。院卒にはこだわっていません。2017年入社は、院卒は文系2人、理系1人です。

 ──理系の学生にアピールする工夫はしていますか。
 高橋さん(写真左) 2016年度は「理系学生向けセミナー」を開催しました。本部や支店で働いている理系出身者と座談会形式で話ができるようにしています。しっかり企画したのは、2016年度が初めてです。
 銀行は文系のイメージが強いですが、必ずしもそうではなく、理系人材もビッグデータや人工知能(AI)などの分野で能力を発揮できますし、多くの支店でも活躍しています。ただ全体では文系が多く物の見方や考え方が似てしまう傾向があるので、全体のバランスを考えて、いろいろな人材を採っていきたいと考えています。今後も、理系学生に向けたセミナーで発信する予定です。

 岡村 私も理系の学生と話す機会が多くなりました。「横浜銀行って理系を採るんですね」「理系の働き口があるんですか」と言われます。「理系も十分に活躍できるし、考え方や勉強への姿勢を見て採用したい」と話すと、結構驚かれて、「ではインターンシップに参加してみます」という学生も多かったですね。学部は特に指定していません。

 ──理系の学生にとっては、選択肢が増えた感じですね。
 岡村 「メーカーか、研究職しかないと思っていましたが、銀行もあるんですね」と言う学生もいました。

 ──新卒の採用数は例年170~190人で推移していますね。
 岡村 一時期、2008年ごろは倍くらい採用していましたが、極力、波をなくすよう心がけています。採用を増減すると、数年後に人員構成がいびつになってしまいますから。
 私はバブル崩壊後の1998年の入社で同期が少ないんです。銀行としてこの前後の世代の人員が少なくて困っている面もありますので、なるべく安定して採りたいと考えています。

具体的なエピソードないと思いが伝わってこない  横浜銀行のこと研究してきて

■エントリー数とインターン
 ──エントリー数はどのくらいですか。
 高橋 プレエントリーが1万6000人強、本エントリーが4800人です。お陰さまで、毎年少しずつ増えています。

 ──ここ数年、広報活動を強化している?
 岡村 はい。就活イベントにもできる限り参加しています。インターンシップも夏・秋・冬と、1年中開催しています。地方銀行でこれほどインターンシップをしているところはないと思います。

 ──インターンはどんな内容ですか。
 高橋 支店業務に触れ合う機会を多くしています。初日は本部の人間が話し、2日目は支店の行員が話します。法人営業の担当なら取引先の支援を、個人営業担当なら生命保険などの提案を学生と一緒に考えます。最終日は支店に行って、支店長と質疑応答をしたり、若手行員と対談したりします。3日間で15人ぐらいの行員が関わります。

 岡村 一方的に講義を聞くのではなく、対談やロールプレイング形式で行うのが特徴です。たとえば、学生が行員役、行員がお客様の役をして、商品の提案をし、みんなで話し合います。

 ──インターンも競争が激しそうですね。
 書類と面接で選考します。倍率は、冬の回で5~6倍くらいです。

■説明会とOB・OG訪問
 ──説明会はどんな形式ですか。
 高橋 3月は本店1階のホールで、全学生向けの説明会をしました。それとは別に理系の学生向け、女子学生向けの説明会も開いています。4月には少人数の対談形式の会を多く行います。

 ──説明会は、受け付け開始と同時に満席になる?
 岡村 そうですね、申し訳ないのですが、すぐ埋まってしまいます。

 ──金融機関は説明会に出た回数が重要という噂も聞きますが。
 岡村 確かに、何回も参加していると「興味を持ってくれているんだな」と思います。でも、「幅広く業界研究していて、説明会に出なかった」という優秀な学生も多くいます。あくまで志望度を測る一つの材料という感じです。

 ──OB・OG訪問の紹介はしていますか。
 高橋 「○○大学の先輩を紹介してください」という場合は、対応しきれないのでお断りしています。ただ、卒業名簿などを見て「○○支店の○○さんにお話を聞きたいです」という場合は、私どもからその行員に連絡して、会ってもらうようにしています。

■ES
 ――選考内容について教えてください。
 高橋 1次選考はエントリーシート(ES)とWEBサイトの適性検査です。WEBテストは自宅で受けるタイプで、基礎知識や地頭力を測る問題です。性格診断などもあります。

 ──ESに「成績」という項目がありますが、何を書く欄ですか。
 高橋 たとえば「優」がいくつ、「良」がいくつなどと書いてもらいます。ただし、成績の良さや悪さだけで判断することはありません。

 ──高校や中学時代の部活動を書く欄もありますね。
 岡村 個性や趣味を知りたいと思っています。面接の時の話題にもなりますね。

 ──「これまで困難に直面しながらも成し遂げたこと」(400字)では何を見ますか。
 高橋 エピソードの大小より、質問にしっかり答えられているかを見ます。よくあるのは、繰り返し同じことを書いて、100文字くらいで書ける内容を400文字にしていて内容が乏しいものです。具体的なエピソードがないケースも多い。理屈は書いてあっても、本当の思いが伝わってこない。ESだけでなく、面接でもそうですが。

 ──過去のESで良い例や悪い例があれば教えてください。
 高橋 順序立てて分かりやすい文章がいいですね。たとえばアルバイトの経験なら単に「居酒屋の売り上げが何万円上がりました」と書くのではなく、「いつも何万円のところ、私が○○したら○万円上がりました」とすると、価値が伝わります。塾の講師なら、「何点上がりました」よりも「平均で何点から何点に上がりました」とすると、ベースが分かる。具体的な事象の個別の結果が分かる学生は非常に良いと思いますね。漠然と数字だけおかれても分かりません。

 ──「横浜銀行で実現したいことは……そこにあなたの経験や強みをどう活かせますか」は志望動機ですね。
 岡村 動機そのものより、そう考えるに至った過程を知りたいですね。たとえば「地域トップバンクで、学んできたことをいかしたい」と書いてあるだけでは、「どうしてうちに興味を持ってくれたのだろう?」と感じます。「メガバンクや他の金融機関ではなく、横浜銀行を選ぶ理由」を人生経験も交えてきちんと書いてほしい。
 たとえば、自分のリアルな生活と関連づけて「横浜銀行がこうなると、生活にこういうメリットがある。入行したら変えていきたい」などと書いてあると、実現可能性は別として、よく考えているなと思います。

 ──面接に進む数は?
 岡村 2000人弱ですね。ESを一生懸命読んで絞ります。

 ──ESで優劣ははっきり出ますか。
 高橋 結構はっきりわかります。たとえば、店舗網が全国にあると思っていたり、「世界中の支店で活躍したい」と書いていたりすると、もっと横浜銀行のことを研究してきてほしいと思います。

 ──横浜や神奈川が「好き」という記述は?
 岡村 多いですね。「実家が神奈川なので」といった記述はよく見ます。一方で2017年入社の185人のうち、東京・神奈川以外の出身者も40人弱います。大学から関東の人もいますが、ずっと地方在住で、東京や神奈川に全く縁がない人もいますよ。

 ──そういう学生は、どんなアピールを?
 高橋 「地元」というアピールをできないので、その分しっかり企業研究をしてきますし、セミナーにも出ています。何度も出席できないので、集中してしっかり聞いてくれている印象ですね。残って個別に質問をして研究している学生もいます。地元の地方銀行も考えたうえで、「横浜銀行でしかできないこと」を考えてきていますね。