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2022年05月20日

決算好調!変化続ける電機業界を知ろう IT・電池が主戦場に【業界研究ニュース】

家電・総合電機

 電機メーカーの2022年3月期の決算が好調です。電機業界には、日立製作所ソニーパナソニックなど日本を代表する有名企業が並んでいます。ただ、電機業界はとても幅の広い業界です。製品としてすぐにイメージするのは家電ですが、通信機器、音響・映像機器、エレベーター、原子力発電所、電池など、電気を使ったり作ったりするものはすべて電機業界の製品に含まれます。さらに最近は人工知能(AI)、仮想現実(VR)、自動車、金融など新しい分野に手を広げる会社があり、「電機業界」とひとくくりにしにくくなりました。電気に関係する技術革新はスピードを増していて、進歩した技術を社会に役立てる電気製品の進化も速まっています。それに伴って、会社の形や働き方、採用方法も変わりはじめました。社会の最先端の進歩を担う電機業界は、これからも変化を遂げながら成長を続けるのは間違いありません。一方で、世界的な競争にさらされる厳しい業界でもあります。働く社員にも変化に対応できる柔軟さが求められます。

(写真は、ソニーグループの経営方針を説明する吉田憲一郎社長=2022年5月18日、東京都港区)

「重電メーカー」と「家電メーカー」

 電機業界は成り立ちによって、得意分野や社風が違います。2022年3月期の電機業界で売り上げがもっとも大きいのは日立です。日立はかつて「重電(じゅうでん)」といわれた分野が強い会社でした。重電は発電機やエレベーターなどの大型の電気製品のことをいい、日立や東芝は「重電メーカー」とよばれました。これに対し、売り上げが2番目のソニーや3番目のパナソニックはかつて「家電メーカー」といわれました。家電メーカーの中でもソニーは音響・映像機器に強いメーカー、パナソニックは白物家電(冷蔵庫、洗濯機など)も強い「総合家電メーカー」といわれました。このほか、富士通など通信機器から発展してきたメーカー、キヤノンなどカメラから発展してきたメーカー、ダイキン工業のように空調機器を得意とするメーカー、電子部品に特化したメーカーなども広い意味で電機業界に入ります。

コロナ禍で好調も先行き警戒

 大手電機メーカーの業績はコロナ禍で好調です。2022年3月期の決算でソニーは本業のもうけを示す営業利益が1兆2023億円と初めて1兆円を超えました。国内の製造業で営業利益が1兆円を超えるのはトヨタ自動車に次いで2社目です。日立製作所は最終的なもうけを示す純利益が5834億円で過去最高になりました。また、パナソニックも増収増益の好決算でした。各社の好決算は、巣ごもり需要で家電製品やゲーム機などが売れたこと、円安で輸出の採算がよくなったことなどが挙げられます。ただ、半導体の品不足が続いていること、鉄やアルミといった原材料の価格が高騰していること、巣ごもり需要の反動がありそうなことなどから、先行きについては各社とも警戒しています。

次世代分野を強化するために投資

 業界各社は、次世代分野を強化するための投資や会社の構造改革を進めています。特に目立つのがソニーです。ソニーグループは世界的半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に建設する半導体工場の運営会社に約570億円を出資することにしました。また、電気自動車(EV)の製造にも乗り出すことにしています。自前での開発を目指すとともに、ホンダと共同開発することにも合意しています。さらにソニーグループでゲーム事業などを担うソニー・インタラクティブエンタテインメントは今年1月、アメリカのゲームソフト開発会社「バンジー」の全株式を約4100億円で取得すると発表しました。日立製作所は構造改革のための事業再編を進めています。2021年にアメリカのIT企業グローバルロジックを約1兆円で買収する一方、中核子会社である日立金属を日米の投資ファンド連合に約8000億円で売却しました。さらに2022年に入って日立建機の保有株の半数を売却することや日立物流の保有株式の大半を売却することにしました。パナソニックは4月から持ち株会社制に移行しました。新たに持ち株会社「パナソニックホールディングス(HD)」をつくり、事業分野ごとに八つの子会社がぶら下がる形です。子会社に権限を持たせ、成長につなげたい考えです。

 半導体についてはこちらも読んでみてください。
「半導体ウォーズ」何が起きてる? 基礎から学ぼう【就活生のための時事まとめ】

(写真は、日立製作所の看板=東京都千代田区)

選択的週休3日制を導入

 電機業界には、社員の働き方についても新しい動きがあります。日立製作所やパナソニックでは「選択的週休3日制」を2022年中にも導入する見通しです。日立の場合、裁量労働制フレックスタイム制で働く人は一定時間働けば週休3日でも給料は減らない仕組みです。たとえば、金曜日を休みにする代わりに月~木曜日は所定労働時間(7時間45分)より長い9~10時間働くことで全体の労働時間を維持するものです。パナソニックの具体策はこれから決まりますが、同様の制度になるとみられます。また、「ジョブ型雇用」を採用する会社も出てきています。日立や富士通などで、幹部社員などの職務を格付けし、それを給与に反映させる制度です。電機業界はIT事業への転換などで即戦力が必要になっているため、年功序列的な給与制度からジョブ型に変えて、即戦力の中途採用を後押しする動きです。

 ジョブ型についてはこちらも読んでみてください。
「ジョブ型」ってなんだ? 富士通・KDDI…続々導入、採用でも【イチ押しニュース】

(写真は、オンラインで会見するパナソニックHDの楠見雄規社長=2022年4月1日)

グローバル企業には英語必要

 電機業界はグローバルに展開している業界です。ソニーやパナソニックのブランドは世界のどこでも目にします。工場や研究開発拠点、販売拠点は世界各地にあります。海外での売り上げのほうが国内よりも大きいとか海外の従業員のほうが国内の従業員より多い会社もたくさんあります。ということは、就職すると海外赴任や海外拠点とやりとりする可能性があるということです。配属にもよりますが、英語はある程度できたほうがよさそうです。

強いのはゲーム機や空調機器

 20世紀後半、日本の電機メーカーは世界でもっとも競争力がありました。日本の家電製品は壊れにくくて使いやすいと言われ、人気でした。また、日本の音響・映像製品は小型で持ち運びやすく、性能もいいと評判でした。カメラや電子部品も世界で圧倒的なシェアを持っていました。電池も日本メーカーが世界のトップを走っていました。しかし、家電は韓国や中国のメーカーに追い抜かれ、今や日本メーカーの影は薄くなっています。そのほかの製品でも強みは薄らいでいて、日本メーカーが強いのはゲーム機や空調機器など限られたものになっています。これからの主戦場としては、AIなどのIT分野やEVの核になる電池分野などが予想されます。日本メーカーが再び競争力を取り戻せるか、正念場だと思います。

(写真は、パナソニックの米テスラ向け新型車載電池=パナソニック提供)

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