テレビは家電業界の主力製品です。日本でテレビ放送が始まって66年になりますが、白黒テレビからカラーテレビ、ブラウン管テレビから液晶などの薄型テレビ、アナログからデジタルといった進化を遂げてきました。今は、よりきめ細かで美しい映像がみられる4Kテレビへの進化の時期を迎えていて、4Kテレビは家電量販店などで商戦のまっただ中にあります。さらにその先にあるのがもっときめ細かい映像の8Kテレビです。国内メーカーでは、シャープが先陣を切って販売を始めていて、ソニーが年内発売を発表しました。8Kに対応するコンテンツがまだあまりないにもかかわらず参入するのは、将来の主戦場に先手を打っておきたいためです。8Kテレビ市場がどこまで大きくなり、どこが覇権を握るのか、業界の視線は4Kから8Kに移りつつあります。
(写真は、4K・8K放送の開始ボタンを押す深田恭子さん〈左から2人目〉ら=2018年12月1日)
8KはNHKが世界で初めて放送
4Kや8Kは画素数の違いを表しています。これまでの放送の主流は2Kですが、それに比べて4Kは4倍、8Kは16倍の画素数になります。その分、きめ細かい画質になります。日本では昨年12月から4K8Kの本放送が始まりました。4KはNHKや民放キー局の系列局などがBSやCSに新設した16チャンネルでみることができます。8KはNHKのBSチャンネルでみることができます。8Kは世界で初めての放送になります。
日韓の4社が参入を表明
ソニーは、7日からアメリカ・ラスベガスで始まった家電・技術見本市「CES」で8Kへの年内参入を発表しました。98インチと85インチの超大型液晶テレビで、まず欧米で発売することにしています。日本での発売は検討中です。8Kテレビはシャープが昨年11月に世界で初めて売り出しました。また、世界の2強と言われる韓国のサムスン電子とLG電子が昨年、参入を発表しています。これで韓国の2社と日本の2社が8Kへの参入を明らかにしたことになります。
(写真は、ソニーが発表した8Kの超大型液晶テレビ=米ラスベガス)
今はまだ4K商戦の入り口段階
ただ、8Kのコンテンツは、まだNHKのBSでしかみられません。4Kでは、ネットフリックスなどが独自コンテンツで映像を作っていますが、8Kはネットでもまだコンテンツがほとんどないのが実情です。4Kテレビを持っている人は昨年9月の業界の調査では6%に過ぎませんでした。政府は2020年の東京五輪・パラリンピックまでに家庭への普及率を5割にするとしていますが、今は4Kテレビ商戦の入り口段階と言えます。
8K時代の陣取り競争
それでも業界が相次いで8Kに参入するのは、将来のシェア確保のためです。4Kが普及した後には8Kが主流になる時期が来るとみて、その時のための陣取り競争をしようとしているのです。世界をみると、中国などは新しい技術の普及スピードが速く、あっという間に8Kが主流になるのではないかという見方もあるからです。
一方で、普及には時間がかかるという見方もあります。8Kの良さは画面が大きいほど感じられるため、80~100インチ程度の超大型が主流になると予想されています。そうなると、値段も高くなり、実際にシャープが販売している8Kテレビの値段は80インチで200万円、70インチで100万円、60インチで75万円となっています。値段は量産すれば安くなることが考えられますが、大画面となると日本の家庭では置き場所に困るという問題もあります。
(写真は、4K・8Kテレビの年末商戦)
未来社会に必要な技術
それでも業界が8Kにこだわる理由はほかにもあります。シャープはCESで、8K映像を走行中の車両や電車に届けるシステムを展示しました。救急車で搬送中の患者の様子を離れた場所の医師に鮮明な画像で伝え、適切な処置を促すことなどに使えます。家庭でみるテレビ画像だけでなく、未来社会に必要な技術とも考えているのです。
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