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2018年12月26日

株価は急落したが…証券業界が長期的には成長する理由

銀行・証券・保険

 世界の株式市場が大荒れになっています。米中貿易摩擦や利上げなどによってニューヨーク市場の株価が下がり、下落の波が世界に波及しています。東京市場でも大幅な下落が続き、日経平均株価は25日に1年3カ月ぶりに2万円を割り込みました。株式市場の変調の影響を真っ先に受けるのが、証券業界です。一般的に株価が下がれば株の売買が低調になり、証券業界には逆風になります。これから先の株価の動きを見通すことはできませんが、市場の今の空気は証券業界の業績悪化を予感させます。ただ、日本の家計は欧米に比べて預貯金の占める割合が大きく株式投資は小さいという特徴があり、経済の活性化のために「貯蓄から投資へ」が経済界のキャッチフレーズになっています。そうなれば長期的には成長業界と考えられるのですが、どうなるでしょうか。

(写真は、日経平均株価2万円割れを表示する株価ボード=12月25日午前11時30分過ぎ、東京都中央区)

株や債券を売買するのが仕事

 証券会社の主な仕事は、債券投資信託不動産投資信託(リート)などを売買することです。仕事内容をさらに仕分けすると、まずお客さんが株や債券を株式市場で売買するのを仲介して手数料を得る業務があります。次に自社の資金で株や債券の売買をして利益を出す業務があります。また企業が株や債券を発行する際、責任を持って引き受けて販売し、手数料を受け取る業務もあります。他にもM&Aで手数料を受け取ったり、企業に資金運用のコンサルタントをしたりするなど、証券会社は業務の幅を広げています。

(写真は、東京証券取引所の建物)

野村筆頭に大手は5社

 大手証券会社としては野村ホールディングス、大和証券グループ本社、SMBC日興証券、三菱UFJ証券ホールディングス、みずほ証券の5社があります。規模は野村が他を大きく引き離して大きくなっています。この5社はお客さんと営業担当者が直接話す対面営業を主にしています。一方で、マネックス証券、松井証券などネット専業の証券会社も伸びています。顧客からすれば対面営業は市場の情報や商品の提案などを受けられるというメリットがありますが、手数料はネット専業より高くなります。高齢層や富裕層は対面営業を選び、比較的若い層や頻繁に売買する投資家はネットを選ぶ傾向があります。

(写真は、野村証券のトレーディングフロア)

売買が低調になると業績は悪化

 証券会社の業績は,株式市場の動向に影響されます。売買手数料は、買うときも売るときも一定比率ありますので、売ったり買ったりが盛んに行われる状況だと証券会社はもうかります。ただ、株価が大きく下がれば投資家が市場から離れて売買が低調になる場合が多く、低い株価だと手数料もその分低くなることも加わり、もうからなくなるのが一般的です。自社の資金で株や債券を売買している場合も、株価が下がると損を出すことが多いはずです。また、新しく株式を公開しようとする企業も減ります。こうしたことから、証券業界は株価が下がると業績に悪い影響が出ることが多くなります。

(写真は、東京証券取引所の情報発信拠点「東証アローズ」)

長い目で見れば重要性増す?

 ただ、長期的に見ると違った面も見えます。日本の家計が持つ金融資産は2018年3月末で1829兆円もあります。その構成をみると、現金・預金が52.5%もあります。次に多いのは保険・年金等で28.5%、株式は10.9%にすぎません。アメリカは最も多いのが株式で36.2%、現金・預金は13.1%です。ユーロ圏はアメリカと日本の中間くらいで、現金・預金は33.0%、株式が19.2%です。「日本の家計は堅実すぎて、企業にお金がまわりにくい」という声が以前からあり、「アメリカのようにもっと株式投資をしましょう」というのが政府や経済界の主張です。長い目で見れば、株式投資の流れが徐々に強まる可能性は高く、証券業界の重要性は増すのではないかと考えられます。

(写真は、米ニューヨークの金融街にある雄牛〈ブル〉像。英語で上昇相場をブルマーケットといい、好景気の象徴とされている)

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