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2019年01月16日

輸出は8年連続増 海外に活路求める日本酒業界

食品・飲料

 日本酒ブームなどと言われることがありますが、日本酒業界が右肩下がりであることは変わりません。国内の人口減と高齢化で1人あたりの飲酒量が減っていることに加え、ワインやウイスキーなどとの酒類間競争に押され気味の状況にあります。ただ、日本酒は輸出が年々増えています。海外生産の動きも出ています。政府や業界が海外での売り込みに力を入れたことや、訪日外国人が増えて日本酒が広く知られるようになったことなどが、海外での日本酒人気につながっているようです。全体的には今後も縮小傾向が続くと予想される業界ですが、海外展開に成功したりブランドづくりがうまくいったりした会社は大きく伸びる可能性があります。

(写真は、パリのレストランでワイングラスに注がれる日本酒の人気銘柄「獺祭(だっさい)」=旭酒造提供)

ここ40年で3分の1に

 日本酒の消費量は長らく減少傾向にあります。1975年度には167万キロリットル消費されていましたが、2015年には55万キロリットルと3分の1に減っています。酒類全体を見ると1996年度をピークに減っていますが、減り方はピークから1割程度ですので、日本酒の減り方は相対的に大きいと言えます。ワインなどの果実酒やウイスキー、リキュール、スピリッツなどは増加傾向にありますので、消費者の嗜好がこうしたお酒に移っているようです。

小さいが豊かな「造り酒屋」が多数

 日本酒メーカー(醸造会社)の数も減っています。免許を持っている醸造所の数は2016年度現在1615で、1975年と比べると、ほぼ半分になっています。免許を持っていても製造していないところもありますので、実際に日本酒造りをしているところはもっと少ないとみられます。地域的には、灘のある兵庫県、伏見のある京都府、米と水のいい新潟県などが「酒どころ」となっています。日本酒メーカーには売上高が100億円以上の大企業もあります。白鶴酒造、月桂冠、宝ホールディングス、大関、日本盛、小山本家酒造、菊正宗酒造、旭酒造、黄桜などですが、こうした会社は例外的です。大半のメーカーは全国各地にある古くから続く「造り酒屋」で、規模は小さくなります。ただ、こうしたところは、資産を持った地域の名士であることが多く、単なる中小企業以上の影響力を持っていることが多いものです。

輸出は8年で2.5倍に

 日本酒業界の明るい材料は、輸出の増加です。2010年から増え始め、2017年は187億円になりました。2009年は71億円でしたから、8年で2.5倍になったことになります。輸出先で一番大きいのはアメリカで、全体の32%を占めています。次いで香港、中国、韓国、台湾、シンガポールの順になっています。ヨーロッパはまだ多くありませんが、EUとの経済連携協定(EPA)が2月に発効してEUへの輸出関税がゼロになるので、これから増えるとみられています。

(写真は、日本酒PRのため海外から専門家を招いて開いた試飲会)

「獺祭」メーカーがニューヨークで生産

 海外生産の動きもあります。「獺祭(だっさい)」で有名な旭酒造(山口県岩国市)は、アメリカ・ニューヨーク州で2020年から生産を始めます。アメリカの米と水で最高の品質の日本酒を造ろうとしていて、獺祭の名前は使わないそうです。旭酒造の社長は「アメリカの食文化から変えたい」という意気込みを語っています。他にも、単身アメリカに乗り込んでアリゾナ州で日本酒造りをしている人などもいて、日本酒を「世界の酒」にする動きが強まっています。

(写真は、ニューヨーク州の酒蔵建設について語る旭酒造の桜井一宏社長)

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