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2019年01月23日

世界最古「ボン・マルシェ」に続け!百貨店に王道回帰の動き

流通

 世界最古の百貨店であるパリのボン・マルシェが大規模な改装の結果、大きく売り上げを伸ばしています。その戦略を聞いた社長インタビューが朝日新聞に載っています。「子育て世代を重視した」「中国人の団体客は念頭に置かない」「快適に買い物をしてもらう」「重要なのはいい商品が並んでいること」「通販は補完的なもの」などの発言を総合すると、百貨店の王道に戻って成功している、ということのようです。日本の百貨店はかつて「小売りの王様」だったのですが、大型スーパーやインターネット通販に押され、長くじり貧が続いています。店舗の閉鎖が進みますが、一方で、大型改装も進み、百貨店の王道に戻るという動きも見られます。買い物にどんな付加価値をつけられるか、百貨店は単なる小売りでないというところに仕事の面白さがありそうです。

(写真は、ボン・マルシェのパトリス・ワグナー最高経営責任者)

9兆円あった売上高が6兆円割る

 日本百貨店協会によると、1998年に9兆円あった加盟店の売上高は2016年に6兆円を割り込みました。その後もほぼ横ばいが続いています。店舗数は1999年に311ありましたが、2017年には226店に減りました。郊外型の大型スーパーに押されて、郊外にある百貨店が撤退を余儀なくされています。最近はネット通販にも侵食されています。一方で、外国人旅行客の増加による販売増というプラス材料もあります。海外でも2018年10月にアメリカの名門百貨店シアーズが破産するなど、百貨店業界には難しい時代を迎えています。

規模を大きくしようと経営統合

 日本の百貨店大手は、売り上げ順にみると、三越伊勢丹ホールディングス(HD)、大丸と松坂屋のJフロントリテイリング、高島屋、阪急百貨店と阪神百貨店のエイチ・ツー・オーリテイリング、そごうと西武百貨店のセブン&アイホールディングス、東急百貨店の東京急行電鉄と続いています。規模を大きくしないと生き残れないと、21世紀に入ってからブランドは残したまま経営統合したところがたくさんあります。ほかに地方都市では、地元に密着した百貨店があります。

郊外店を閉め旗艦店に投資

 日本百貨店協会加盟の百貨店で閉店したのは、2017年に三越多摩センター店など7店、2018年には名古屋市の老舗百貨店、丸栄など6店が閉店しました。三越伊勢丹HDは2018年9月に伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越の3店舗を2019~20年に閉店すると発表しています。一方で、都心の旗艦店をリニューアルする動きが目立っています。2017年4月には、松坂屋銀座店を核として再開発した「GINZA SIX」がオープンし、2018年9月には高島屋が日本橋店の隣接地に新館を作り、「日本橋高島屋S.C.」として開業しました。三越伊勢丹HDも日本橋三越を150億円かけて改装しています。阪急阪神HDも昨年6月に新装開業した大阪・梅田の阪神百貨店梅田本店の隣にある旧本店を建て替える工事に入ります。いずれもリッチで快適な買い物環境を提供するための投資です。

(写真は、「GINZA SIX」の吹き抜け。草間彌生氏の作品が展示されている)

「コト消費」や付き添いサービスで集客

 集客にはあの手この手を考えています。若い世代にあわせて「コト消費」に力を入れるのもひとつです。店舗内での体験を「モノ消費」につなげようという狙いで、高島屋はヨガ教室や茶道教室のある店も入っています。阪神百貨店梅田本店は、立ち食いができるスナックパークを復活させたり、約400種類のワインの試飲ができるワイン売り場を作ったりしました。日本橋三越では、客にスタッフが付き添うサービスを充実させるなど富裕層の取り込みを強化しています。日本の百貨店業界がパリのボン・マルシェのように復活できるか、注目です。

(写真は、阪神百貨店の「スナックパーク」)

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