2016年10月07日

第一生命が持ち株会社に…狙いは海外

テーマ:経済

ニュースのポイント

 第一生命保険が、持ち株会社体制に移行しました。生保業界は、人口減による顧客数の伸び悩みに加え、日本銀行のマイナス金利政策による金利低下で運用難に苦しんでいます。第一生命は持ち株会社で、海外企業や異業種の買収などをやりやすくなることを狙っています。生保業界だけでなく、国内市場が縮むことが確実になった業界はほかにもあり、どんな会社も海外進出があり得る時代になりつつあります。(朝日新聞社教育コーディネーター 一色清)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「第一生命、攻めの一手 持ち株会社化、買収・提携で利点 異業種参入にも意欲 マイナス金利で打撃」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

かつては「ザ・セイホ」

 生命保険業界と言えば、かつては「ザ・セイホ」とよばれ、巨額のジャパンマネーを運用して世界から注目される成長業界でした。日本の人口が増えている限り、加入者は増え、保険料収入は増えました。一方で、寿命が延び続けることによって支払う保険金が大きく増えることはなく、収入と支払いの差は広がりました。また、株価や地価が上がったり債券などの金利が高かったりすると、運用収益が大きくなり、もうけも大きくなりました。

(写真は、バブル景気の最中だった1988年に撮影された生命保険各社のパンフレットです)

成長の構図が崩れる

 しかし、生保業界が成長する構図が21世紀になって、崩れてきました。日本の人口は2007年をピークに減っています。加入者も減っています。平均寿命はまだ延びていますが、高齢者の数自体がかなりの勢いで増えていますので、死亡者数は増えています。

 さらに、お金の運用環境は最悪です。日銀のマイナス金利政策で、長期国債の金利でさえマイナスになっています。海外も金利の低い状態が続いています。株価も世界中で一進一退が続いています。

 保険商品は、一定の利率で運用できることを前提に設計されていますので、その利率で運用できなくなれば、生保会社が損を抱えることになります。

次の戦略は?

 状況を打開するために、生保会社がやろうとしているのが、海外に出て行くか、別の事業に出て行くか、です。ここ1、2年で大手生命保険会社はアメリカの生命保険会社を買収しています。

 さらに、人口が増えていてまだ生命保険が普及していないアジアの国などで事業を積極的に展開しようとしています。保険以外の分野をやっているベンチャー企業の買収にも動き出しています。

どんな会社も海外進出の可能性

 国内市場が小さくなるので海外進出に力を入れているのは、食品業界やビールなどの飲料業界もそうです。海外の旺盛な胃袋需要をあてにしているのです。

 ほかにも、ブライダルとかエステなどのサービス産業でも海外で勝負する姿勢を見せているところがたくさんあります。国内の人口が減ることは、企業を海外に押し出すことになります。

 「国内市場だけを相手にしている会社だから、英語や海外生活が苦手な自分にぴったりだ」と思って志望しても、入社すると海外進出の仕事が待っていることもありえます。どんな会社も、海外での仕事の可能性があると心して、就職活動をしてください。


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