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2020年08月28日

携帯大手3社に逆風と追い風 スマホの未来は?【業界研究ニュース】

通信・インターネット関連

 日本の携帯電話料金は高すぎるとして、総務省は携帯電話業界の競争を促そうとしています。昨年来、途中解約の違約金を大幅に引き下げたり、他社回線を使えなくするSIMロックを解除したり、楽天の新規参入を後押ししたりしてきました。さらにここにきて電話番号を変えずに携帯電話会社を乗り換えられる「番号持ち運び制度(MNP)」の手数料をオンラインで手続きした場合には無料にする方針を明らかにしました。携帯電話業界はスマートフォン(スマホ)の普及で長く伸び続けています。伸びる業界には新規参入者が群がるのが普通ですが、大手になるためには基地局建設など多額の設備費用がかかるため、参入は簡単ではありません。このため、NTTドコモKDDI(au)、ソフトバンクの大手3社の寡占が続いています。国内のスマホの普及は天井に近づいている中で料金の引き下げが実現すると、大手には逆風となります。しかし、スマホの利用範囲は今後ますます広がる見込みで、強い追い風も吹いています。スマホに代わる新しい通信機器も見当たりませんので、携帯電話業界はまだまだ成長する業界だと考えていいでしょう。

(写真は、ソフトバンクの5G対応のスマホ4機種=2020年3月5日、東京都中央区)

大手3社で87%を占める

 携帯電話会社には、自前で基地局を持つ大手と、大手から回線を借りて営業する格安スマホのふたつの業態があります。大手は3社しかありませんでしたが、2020年4月から楽天が参入しました。格安業界には、イオンビックカメラエディオンヨドバシカメラなど多くの会社が参入しています。ただ、グラフを見て下さい。2020年3月時点の携帯電話契約数は、大手3社で86.7%を占め、格安業者は13.3%です。格安業界のシェアは少しずつ大きくなっていますが、大手を脅かすにはほど遠い状況です。大手の中では、NTTドコモが37.7%、KDDIが27.9%、ソフトバンクが21.2%となっています。最近はこのシェアに大きな変動はありません。楽天は契約数がまだ少なく、ほかの大手は「今のところ大きな脅威になるとは思えない」(ソフトバンクの宮内謙社長)と言っています。

働く世代ではほぼ普及

 携帯電話会社の売上高の合計は10兆円を超えています。大手3社は利益も安定しています。ここ10年、スマホが急速に普及したことが伸びを支えています。総務省の「情報通信白書」によると、2019年の個人のスマホ保有率は67.6%、世帯の保有率は83.4%となり初めて8割を超えました。高齢者の中には携帯電話を持っていなかったりガラケーを使っていたりする人も少なくないため、生産年齢人口と言われる15歳から64歳までの働く世代では、スマホがほぼ普及しているとみられます。

(写真は、携帯電話サービスをネットで説明する三木谷浩史会長兼社長=2020年3月3日、ネット配信動画から)

スマホで何でもできる時代へ

 スマホの台数の伸びには一服感が出ていますが、性能の向上や使い方の広がりには限界が見えません。日本では2020年3月下旬から次世代高速移動通信方式「5G」のサービスが始まりました。これまでの4Gより通信速度が数十倍も速く、同時に複数の端末につながり、ほぼリアルタイムで通信できるというすぐれものです。ただ、最初の数年間は利用地域が大都市の一部に限られるほか、通信速度もそれほど速くなりません。5Gのフル機能を利用者が実感できるのは早くても2023年以降になりそうです。そうなると、スマホとさまざまな電気機器を連動させて動かしたり、クルマの自動運転、遠隔医療、農業などに利用したりすることが期待されています。ほかにもエンターテインメント、金融、教育などあらゆる分野で使われる可能性があり、まさにスマホひとつで何でもできる時代になりそうです。

(写真は、NTTドコモの5Gのロゴ=2020年3月18日、東京都中央区)

代わりは見当たらない

 携帯電話業界が安定しているのは、スマホを駆逐するような新しい通信機器が見当たらないこともあります。しばらく前から「これからはウェアラブル端末だ」と言われ、身につける時計型の端末が売り出されています。眼鏡型の端末も開発されています。しかし、スマホの代わりにはなりそうにありません。スマホがある限り、国内では大手3社の優位は動かないでしょう。

(写真は、KDDIが発表した5G対応のスマホ=2020年3月23日、東京都港区)

営業面の競争から未来社会の構想へ

 一方で仕事の面から見ると、今の業界は面白みに欠けるという見方もあります。大手3社の商品に大きな違いはなく、料金やサービスといった営業面の競争になっているからです。ただ、これからのスマホの可能性を考えると、自動車メーカーや電機メーカーなどと一緒になって、未来社会を構想していく仕事に比重が置かれてくる可能性があります。志望している人は、これからスマホに何ができるのかを考えてみましょう。

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