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2020年08月07日

苦境の化粧品業界、ネットに活路 コロナ後は将来性あり【業界研究ニュース】

化粧品・生活用品

 化粧品業界がコロナ禍で苦しんでいます。外出自粛やテレワークの普及で、家で過ごす時間が増え、化粧をする機会が減っています。外出する場合でもマスクをするため、口紅の需要が落ちるという影響も出ています。さらに、外国人観光客がいなくなり、お土産として爆買いされていた需要が消えてなくなったことも大きなマイナスです。業界最大手の資生堂は2020年12月期の純損益が220億円の赤字になると発表しました。ほかの化粧品メーカーも赤字や大幅減益が見込まれています。化粧品業界は好不況の波の少ない安定した業界と言われていました。しかも最近は中国など海外の需要の伸びが大きく、成長も期待されていたのですが、コロナ禍で一変しました。ただ、長い目で見ると、コロナ後の社会でも化粧品は必要でしょうし、発展途上国での需要は伸びるはずです。目先の業績悪化を悲観的に見過ぎないことも大切です。

 就活ニュースペーパーは、来週は夏休みのため休載します。8月17日(月)の「週間まとめニュース」から再開する予定です。

(写真は、オンラインでカウンセリングをするポーラの美容部員=2020年7月18日、東京都中央区)

業界団体加盟メーカーは1210社

 化粧の歴史は古く、太古の昔から人々は顔に色を塗るなどしていました。日本で西洋式の化粧品が作られるようになったのは明治時代からで、大正時代から昭和初期にかけてたくさんの会社が化粧品業界に参入しました。現在も化粧品会社の数は多く、日本化粧品工業連合会に加盟している会社は1210社あります。大手と言われるのは4社で、資生堂、花王(傘下にカネボウ化粧品)、コーセーポーラ・オルビスホールディングスです。最近でも新しく参入してくる企業は多く、富士フイルムオンワードホールディングス日本盛なども参入しています。

(写真は、富士フイルム本社。写真で培った技術を発展させた化粧品は今やヘルスケア事業の大きな柱だ=2019年4月16日、東京都港区)

中国と香港が大きく伸びる

 日本の化粧品の出荷額は2016年から大きく伸びていて、2018年時点で1兆7000億円ほどになっています。日本はずっと輸入額が輸出額より多い国だったのですが、2016年に逆転しています。輸出先で大きいのは、中国、香港、韓国、シンガポール、台湾の順で、中でも中国と香港の伸びが目立っています。アジアでは日本製化粧品のブランド力が増しているためです。輸入先として一番大きいのはフランスで、アメリカ、タイの順番となっていて、日本人にはフランス製のブランド力がまだ大きいようです。

(写真は、訪日客らで開店直後からにぎわった近鉄百貨店あべのハルカス本店の化粧品売り場=2018年10月12日、大阪市阿倍野区)

コロナ禍で苦境はしばらく続く

 昨年までは順調に伸びていた業界ですが、コロナ禍のため今年に入って売り上げが急激に落ち込んでいます。資生堂は2020年1~6月の中間決算では、前年の524億円の黒字から213億円の赤字に転落しました。花王は同じ中間決算で化粧品事業が48億円の営業赤字に転落。コーセーは4~6月期の純利益が8割減り、ポーラ・オルビスホールディングスは6月中間決算で純利益が9割減りました。訪日外国人客が減ったことと外出自粛やマスク着用によって化粧品の消費が減ったことが原因です。中国で消費が回復しつつあることがプラス材料ですが、国内や欧米の消費は回復がまだ見込めず、苦境はまだしばらく続きそうです。

(写真は、決算会見をする資生堂の魚谷雅彦社長=2020年8月6日、オンライン取材の画面から)

対面営業からネット営業へ

 化粧品メーカーはこれまで売り方として、百貨店などで肌に触れる対面営業に力を入れていましたが、コロナ禍ではこうした売り方ができなくなりました。そのため各社が活路を求めているのがネットです。ポーラは5月、オンライン会議システムを使った無料のカウンセリングを始めました。美容部員がクリームなどの商品を手に取り、使ってみせながら説明します。すでに1000店舗で導入したそうです。資生堂は7月、美容部員が商品紹介するライブ映像を配信し、消費者が視聴しながら買える「ライブコマース」を本格的に始めました。売上高に占めるネット販売比率を2023年には現在の約2倍の25%に引き上げる計画です。

(写真は、西宮阪急の化粧品売り場ではスタッフがフェースシールドを着けて接客していた=2020年5月21日、兵庫県西宮市)

アパレルの苦境と似ているが違う

 化粧品メーカーの苦境は一見、通勤用やよそ行きの洋服を主力にしているアパレルの苦境に似ています。ともにコロナ禍のステイホームが消費を落としているところが共通しています。ただ、違うところもあります。こうしたアパレルの苦境は世の中のカジュアル化の流れがもともとあったところにコロナ禍がおそった面がありました。化粧品は日本では底堅い需要があり、中国などアジアでは需要が大きく伸びているところでした。コロナ禍が落ち着けば国内外の需要が戻ってくる可能性が高いと考えられます。コロナ後の新しい社会でも将来性はあるとみています。

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