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2019年05月29日

「FCA+ルノー・日産・三菱」 世界トップ連合めざす理由

自動車・輸送用機器

 フランスの自動車大手ルノーと欧米大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が経営統合に向けて動き出しました。ルノーは日産自動車三菱自動車と連合を組んでいますので、そこにFCAが加われば、ドイツのフォルクスワーゲンを抜いて新車販売台数で世界最大の自動車グループの誕生となります。自動車業界は今、大きな転換期を迎えています。ガソリンエンジンから電気自動車燃料電池車などにシフトしつつあるうえ、自動運転が実用化目前になっています。完全な自動運転が実用化されると、自動車は単なる移動手段から「移動する部屋」になります。また、所有するものではなく使用するものになるとも予想されています。そうした大変化を伴う次世代車の開発には巨額の資金が必要になります。業界では、資金力を強めるために巨大化する動きがまだ続くとみられています。もちろん日本の自動車メーカーも巨大化と無縁ではいられません。

(写真は、フィアットの代表的な小型車「500」=フィアット日本法人のウェブサイトから)

日産の自立については正反対の見方

 ルノーとFCAの経営統合はまだ検討段階ですが、両社ともに前向きな姿勢ですので、実現する可能性が高いとみられています。もちろん、日産や三菱も利害関係者になりますが、グループの主導権を持っているルノーが決断すれば、従わざるを得ないでしょう。この経営統合は日産や三菱にとって、いい面と悪い面がありそうです。いい面は3社連合から4社連合になることで連携の選択肢が増えることです。悪い面はグループ内で日産の発言力が弱くなりかねないことです。日産が最も気にかけている経営の自立を貫けるかという点については、正反対の見方が出ています。ルノーの大株主で日産との経営統合を強く求めているフランス政府の持ち株比率が下がることで統合圧力が弱まるという見方と、日産の発言力が連合内で落ちるためルノーの圧力をかわしきれなくなるという見方があります。

4社連合はダントツ1位に

 世界の自動車メーカーの2018年新車販売台数は、フォルクスワーゲンが1083万台でトップでした。しかし、2位のルノー・日産・三菱連合、3位のトヨタ自動車との差はわずかです。しかし、ルノー・日産・三菱連合に8位のFCAが加われば1559万台になり、ダントツの1位になります。20世紀に「ビッグスリー」といわれたのは、アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)、フォードー・モーター、クライスラーでしたが、クライスラーはFCAの傘下に入り、ゼネラル・モーターズは世界4位、フォードは世界6位と、ビッグスリーにかつてのような存在感はなくなっています。

ホンダの次の一手は?

 日本の自動車メーカーは、実質的に3つのグループに集約しつつあります。日産と三菱はルノーとの連合。トヨタはダイハツ工業日野自動車を子会社にしており、マツダスバルスズキとは連携を深め、ゆるいトヨタグループを形作っています。ホンダは基本的に自主独立の路線です。ただ、世界7位の規模は中途半端でもっと規模を大きくしないと新時代を乗り切れないのではないかという声もあります。2018年にはゼネラル・モーターズと自動運転技術で提携しました。さらに次の一手があるのか、注目されます。

(写真は、ホンダが発表した中国専用の電気自動車〈EV〉「X―NVコンセプト」=4月16日、中国・上海市)

柔軟な発想が必要に

 完全自動運転が実用化するのは、2020年代後半から2030年代とみられます。それまではまだまだ業界は動きそうです。しかも今ある自動車メーカーの合従連衡(がっしょうれんこう)だけではなく、自動車業界以外の会社が業界の主役に躍り出るかもしれません。グーグルが自動運転技術で先頭を走っているように、IT業界の重要性が増すはずです。加えて、クルマが「移動する部屋」になるとすると、使い方の新しいアイデアが大事になります。どんなビジネスモデルを作るかという競争が激しくなりそうです。自動車業界を志望する人には、クルマが好きとか機械に強いとかという動機だけでなく、柔軟な発想が必要になっていると思います。

(写真は、シリコンバレーを走るグーグルの自動運転実験車)

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