証券会社には、主に営業担当者が対面や電話でお客さんに対応する総合証券会社とインターネット専業のネット証券会社があります。総合証券にもネット取引はありますが、対面に人手がかかることなどからネット証券より手数料が高くなり、ネット取引では劣勢です。しかし、スマートフォンを使って株取引をする若者が徐々に増え、総合証券でも将来を見越してスマホによる取引に本格的に取り組む動きが出てきています。大和証券グループ本社は4月に「CONNECT(コネクト)」というスマホ取引を中心とする新会社を設立し、営業の許可を金融庁に申請しています。国内の総合証券は人口減や低成長経済の中で新しい顧客の開拓が必要になっています。高齢顧客を守りながら若者を開拓していくという両面作戦でデジタル時代に対応しようとしています。
(写真は、東京証券取引所「東証アローズ」=東京都中央区)
総合証券は証券に関わる幅広い仕事
主な総合証券としては、野村ホールディングス、大和証券グループ本社、SMBC日興証券、三菱UFJ証券ホールディングス、みずほ証券などがあります。主なネット証券としては、SBI証券、楽天証券、マネックスグループ、松井証券、カブドットコム証券などがあります。総合証券は株取引の仲介だけでなく、債券売買の仲介や株式公開の準備、M&Aのコンサルタントなど証券に関わる幅広い仕事をしています。ネット証券は基本的にネットによる株取引の仲介が仕事です。今のところ、会社の規模は大手総合証券の方がネット証券より大きくなっています。
個人取引はネットが大半
総合証券では株の対面取引がまだ残っています。法人相手は対面が基本ですし、個人でも古くから取引のある高齢者などは対面が多くなっています。対面取引は担当者からきめ細かい情報提供がありますが、手数料は高くなります。一方で、新しく株取引を始める人はほとんどが手数料の安いネット取引を選んでいます。その結果、今は個人の株取引の大半がネット取引になっています。総合証券でもネット取引に力を入れようとしてきましたが、対面取引もしている中では手数料を下げるにも限界があり、新しい顧客はネット専業に流れているのが現状です。
(写真は、楽天証券の新たなネット取引システム。指紋などで認証されればログインが完了する=同社提供)
野村はLINE証券で若者対策
大和証券は、ネット専業の証券会社の営業を始めることにしました。ネット専業の別会社とすることで手数料を安くすることができます。業界最低水準の手数料とする計画です。対象としている顧客は投資未経験者や若者などで、スマホでの取引を想定しています。中田誠司・大和証券グループ本社社長(写真)は「本格的に切り込んでいなかったネット市場に経営資源をつぎ込めば、既存のネット証券各社にとっても脅威になると思う」と話しています。こうした動きは最大手の野村ホールディングスにもあり、LINEと一緒にLINE証券を設立し、若者によるスマホ取引を取り込もうとしています。
高齢者にもあの手この手のサービス
総合証券は若者の開拓に力を入れる一方、高齢者へのサービスも強化しています。多額の資産を持っている高齢者をつなぎとめておきたいためです。高齢者向けのセミナーを開いたり、相続や医療、介護などの相談を受ける社員を増やしたり、あの手この手のサービスをしています。
(写真は、墓、遺言など各分野のブースも出展した野村の終活セミナー。約300人が参加した=野村証券提供)
資本主義を支える仕事
証券業界の仕事は顧客の資金を増やすという営業が中心です。もちろん増やすことができず減らすこともあります。厳しい仕事です。ただ、仕事の結果、顧客の資金は上場企業に入り、企業はその資金を使って新しい付加価値を生みだします。つまり、株式売買は日本の資本主義を支える仕事です。とても大きな役割をになっている業界だという意識が、厳しい仕事をこなすうえで大切だと思います。