年々売上高が伸びているネット通販ですが、その中でもプラットフォーマーと呼ばれるアマゾン、楽天、ヤフーの大手3社を公正取引委員会が調査することになりました。1%分のポイント還元の費用を出品者に負担させていることを独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたるとみているためです。アマゾンなどプラットフォーマーと呼ばれる巨大企業が市場で独占的な立場になることで起きる問題については、主要7カ国( G7)でも規制できないものかという議論になっています。日本でもそうした議論がネット通販大手3社に及んでいるのです。ネット通販自体はこれからも伸びていくでしょうが、成長と競争の公平をどう両立させるか、という大きな課題を抱えています。
大手3社で4割占める
経済産業省の調査によると、日本の消費者向け電子商取引の金額は2017年で16兆5000億円でした。年々数%ずつ伸びています。このうち、アマゾン、楽天、ヤフーの大手3社が6兆7000億円と全体の4割を占めています。大手3社はいずれもネットショップをまとめた「オンラインモール」を展開しており、ネット上でサービスの場を提供するプラットフォーマーと呼ばれています。
出店者からは不満の声
公取委は昨年、オンラインモールの出店者に対してアンケートや聞き取り調査をしました。出店先での販売をやめることの難易度を聞いたところ、「容易にやめられない」が7割近くに上りました。また、モールの利用料や決済方法についても多くの出店者が「不満がある」と答えました。公取委はプラットフォーマーが取引上強い立場に立っていると分析、別のモールに移ることを制限したり、不当に利用料を値上げしたり、決済方法を一方的に変更したりすることがないか、目を光らせることにしました。今回の調査は、アマゾンが5月に始める1%ポイント還元が出品者負担で行われることが独禁法違反になるかどうかを調べます。楽天とヤフーも出品者負担ですでに1%還元をしており、公取委はこの両社も調査の対象にしています。
大手は「規制は極力慎重に」
こうした調査は、プラットフォーマーに対する規制が必要だという国内外にある議論が背景にあります。政府は昨年、楽天とヤフーに対してヒアリングをしました。楽天は、「プラットフォームを直接の対象とする規制は技術革新の阻害要因にならないよう極力慎重にすべき」と主張、ヤフーも「多種多様なサービスを一括して規制すると予期しない弊害を生む可能性がある」と主張しました。そのほかにも「規制をかけるなら海外企業にも等しくかけるべきだ」とも主張しました。プラットフォーマー側の規制への抵抗感は強いようです。
成長性と課題の両方を知ろう
ネット通販には、オンラインモール以外にも商品カテゴリーを限定したものや、消費者同士が売買する形式のものなどがあります。市場は年々大きくなっていますが、日本の小売業全体の販売額は約140兆円ありますから、まだ1割を超えたところです。これからまだまだ伸びると思われますが、こうした規制の議論や運送業の人手不足などいくつかの課題を乗り越える必要があります。成長性と課題の両方を知っておくといいと思います。
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