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2019年02月20日

時代は「脱プラ」へ 前向きな石油化学企業に好機

化学

 海を汚す微少なプラスチック(マイクロプラスチック)が大きな環境問題になっています。そのため使い捨てのプラスチック製品をなくす取り組みが世界各国で進んでいます。日本でも使い捨て製品をなくしたりリサイクル体制をしっかりつくったりする取り組みを進めようとしています。プラスチック自体がなくなるわけではありませんが、先進国ではプラスチック製品が減る方向に向かう可能性があります。プラスチックの素材をつくっている石油化学業界やプラスチック製品をつくっている加工業界などには打撃になるかもしれません。ただ、代わりになる素材を開発すれば大きな商機になります。マイクロプラスチック問題に対する化学業界や関連業界の取り組みが注目されています。

(写真は、色とりどりのマイクロプラスチック。山形県の海岸で回収された)

最終的には人間が取り込む

 プラスチック製品の中には使い捨てされるものがあります。ストロー、ペットボトル、レジ袋、食品包装、洗濯バサミなどです。こうした製品が回収されずに捨てられると、紫外線に当たってそのうち細かいプラスチックになります。雨が降ると川に流れ込み、海に流れ込みます。こうしたマイクロプラスチックが魚に取り込まれ、食物連鎖により最終的に人間に取り込まれます。すでに人間に取り込まれているという研究結果もあります。どのくらい有害かはまだはっきりしませんが、プラスチックを体内に取り込むことが健康にいいとはとても思えません。

化学業界など5団体が対策検討

 こうしたことから、世界では対策がとられ始めています。プラスチック製ストローなどの使用禁止、レジ袋廃止、リサイクル体制の整備などです。日本はやや出遅れていますが、環境省や業界団体で対策の検討が始まっています。業界は、化学業界5団体が昨年9月に「海洋プラスチック問題対応協議会」を設立しました。5団体は、日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟、プラスチック循環利用協会、石油化学工業協会、塩ビ工業・環境協会。協議会の会長には、石油化学業界大手の三井化学の淡輪敏社長が就任しました。

(写真は、レストランで使われている紙製のストロー。米国シアトルでは2018年7月から飲食店でのプラスチック製ストロー使用が禁止された)

原油から製品へ多くの会社関わる

 プラスチックのほとんどは石油からつくられます。原油は輸入され、石油精製会社が油の重さによって、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などに分解します。このナフサが原料として石油化学コンビナートに運ばれ、プラスチックのもととなる粒状のものがつくられます。それがプラスチック加工会社の工場に運ばれ、プラスチック製品になります。つまり、プラスチックができるまでには、石油精製会社、石油化学会社、プラスチック加工会社などたくさんの会社が関わります。石油化学会社は大企業で、三井化学、三菱ケミカル、住友化学、カネカなどがあります。繊維会社のイメージがある旭化成や東レも今は化学会社としてプラスチックの生産にも関わっています。プラスチック加工会社は中小企業が多くなります。

ピンチをチャンスに 前向きな会社有望

 世界のプラスチック生産量は年に約4億㌧です。日本は年約1500万㌧です。生産量は今のところ増加傾向にありますが、マイクロプラスチック問題が大きくなっているため、将来は先進国では減る可能性があります。ただ、プラスチックが果たしている役割は減るものではなく、別の素材が必要になります。例えば、同じプラスチックでも生分解性プラスチックは捨てられても微生物によって分解されて土に還ります。価格の高さやリサイクルの体制が整っていないことなどを克服すれば、大きく伸びる可能性があります。製紙業界は、紙が包装などでプラスチックの役割を代替できるのではないかとみて、新製品の開発に力を入れています。これまでにもさまざまな環境問題が発生しましたが、問題を克服する過程で縮む会社、伸びる会社が出てきました。ピンチをチャンスにしようと前向きに取り組んでいる会社は有望だと思います。

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