自動車産業は日本の基幹産業と言われます。日本自動車工業会日本自動車工業会によりますと、関連産業で働く人は直接・間接含めて約540万人にのぼり、売上高は日本の製造業全体の約20%を占めています。そんな隆々とした産業ですが、激変期を迎えようとしています。技術的には、ガソリン車から電気自動車へ、有人運転から無人運転へ向かおうとしています。利用方法もマイカーからシェアカーに向かっています。自動車メーカーは、造るだけの会社から移動サービスを手がける会社へと変わっていかなければなりません。ただ、目先の業績にはこうした変化はまだ表れていません。大手メーカーの2018年度決算は増収 減益基調で、よくも悪くもない決算と言えます。ただ、2020年代の大きな変化を前に、どれだけ先見の明のある投資ができているか、表面上の決算に表れない布石が将来の明暗を分けます。
(写真は、トヨタ自動車が実用化を目指す自動運転車「eパレット」=1月、米ネバダ州ラスベガス)
大手は増収減益基調
自動車大手7社の2018年4~12月期決算が出そろいました。7社のうち相次ぐリコールのあったスバルを除く6社は売上高が前年同期に比べて増えました。しかし、純利益はスズキが増えただけで、あとの6社は減りました。国内外の需要は堅調だったものの、新興国の通貨安や原材料の高騰などにより利益を圧迫された結果、増収減益基調になっています。
気になる中国市場の変調
業界にとって気になるのは、中国の自動車販売の変調です。中国の自動車販売は2018年には2808万台と、28年ぶりに減りました。保有台数でアメリカに次ぐ世界第2の自動車大国になりましたが、まだ飽和しているとは思えません。地方都市や農村部では普及が十分ではないからです。それでも減ったのは、電気自動車を育成しようとするなどの中国の自動車政策が消費者のニーズに合わなかったことや中国全体の景気が冷えていることなどが挙げられます。こうした中国市場の変調はまだ続くとみられ、輸出したり現地生産したりしている日本の自動車産業にも悪影響が出そうです。
移動サービスの会社になる
しかし、そうした目先の懸念材料よりももっと自動車業界が気にしているのは、クルマ社会自体の変化です。トヨタ自動車は昨年1月、豊田章男社長が「人々の移動を助ける『モビリティーカンパニー』への変革」を宣言しました。今、トヨタは「MaaS(マース)」をキーワードにしています。「モビリティー・アズ・ア・サービス」の頭文字をとった言葉で、欧州発の新しい移動の概念です。厳密な定義はまだありませんが、無人運転のクルマを使ったさまざまなサービスの総称として使われています。トヨタは昨年来、米配車大手のウーバー・テクノロジーズへの出資と自動運転分野の協業を発表したり、カーシェアや定額で車に乗れるサービスを始めたりしています。将来は、自前の車を使って配車やカーシェアをする移動サービスの会社になるための布石を着々と打っています。
将来のクルマ社会どうなる
こうした大変化に対応する会社には、大きな資金とリーダーシップが必要になります。日産自動車や三菱自動車は、ゴーン前会長をめぐる混乱もあってリーダーシップが揺らいでいます。スズキ、マツダ、スバルは企業規模が小さく、先行投資をするにも資金力に限界があります。今のところ、日本企業で大変化に単独で対応できるのはトヨタとホンダとみられています。しかし、新しい時代に競争相手になるのは、自動車会社だけでなくIT企業やサービス企業なども考えられます。この2社ですらどうなるか分からない時代がやってきそうです。逆に言えば、新しい時代のプラットフォームを担うことができれば、今よりもはるかに大きな企業になることも可能です。自動車業界を志望する人は、将来クルマ社会がどうなっているかをしっかり考えて、就活に臨む必要があります。
就活生のための時事まとめ
●100年に一度のクルマ革命①「電気自動車(EV)」
●100年に一度のクルマ革命②「自動運転」で世の中が変わる!も読んでみてください。
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