ここ数年、多くの企業が好景気を謳歌しています。ただ、中には経営不振で身売りや大リストラを強いられた企業もあります。台湾企業に身売りしたシャープや医療機器、白物家電を分野ごと売った東芝がそれです。いずれも家電業界の有名企業でした。日本の家電産業といえば、かつては世界で圧倒的な競争力を誇っていましたが、21世紀になって徐々に競争力が衰えてきました。パナソニックは100年の伝統を持つ代表的な家電メーカーですが、一昨年から「脱家電」をかかげています。これからはすべてのものがネットにつながるIoT(Internet of Things=モノのインターネット)社会がくると言われています。家電業界はこの新しい社会にどれだけ対応できるかが勝負になります。
(写真は、パナソニックがアメリカの家電見本市で発表した自動車=2018年3月7日撮影)
日立、ソニー、パナソニック…
電機メーカーを売り上げ順に並べると、日立製作所、ソニー、パナソニック、東芝、富士通、三菱電機……となります。いずれも家電だけをやっているわけではなく、重電(発電設備などの大型電気製品)や電子部品などの分野もあります。家電分野も大きく二つに分けられています。冷蔵庫、洗濯機、炊飯器など日常生活に使う「白物家電」とテレビ、オーディオ機器などの「AV家電(黒物家電)」です。
(写真は、東京・有楽町ビックカメラの「白物家電」売り場です)
中国、韓国に勝てなくなる
家電業界の不振の原因は、ひとつは国内の人口減少です。特に白物家電は一家に1台あればいいものが多く、人口減少よる世帯数の伸びの鈍化が直接響いています。もうひとつは、中国や韓国のメーカーが世界の市場で競争力をつけたことです。家電は今や最先端の技術を競う製品ではなく、汎用品で組み立てれば一定の品質が得られる製品になりました。競争は価格に向かいがちで、そうなると中国や韓国の製品に勝てなくなっています。東芝が白物家電の分野を中国の美的集団に売ったのは、日本から中国への家電シフトを象徴的に表す動きでした。また、日本のメーカーは21世紀になってもテレビに使う液晶パネルに巨額の投資をするなど、こうした時代が来ることを読み違えた戦略の失敗を指摘する声もあります。
(写真は、中国の大手家電メーカー鴻海の郭台銘会長)
テレビに買い替え需要
家電メーカーが目指すこれからの方向性は、「家電をできるだけ守りながら、新分野で勝負する」ということになります。家電も目先に明るさがないわけではありません。テレビは東京五輪に向けて買い替え需要が出てきそうです。2011年のテレビのデジタル化前に盛り上がった需要から10年近くたち、買い替え時にきているテレビがたくさんあります。しかもフルハイビジョンの4倍の高画質を実現した4Kテレビが出てきています。市場規模の大きいテレビが動くと、業績への影響も大きくなりそうです。
技術力、人材、ブランドで
新しい分野は、IoT関連の新家電、電子部品、ソフトなどが考えられます。自動運転の自動車向けの電子部品や電池なども大きな市場になりそうです。ただ、こうした分野は家電業界の専売特許ではなく、IT企業や電子部品専業メーカーなど競争相手がたくさんいます。電機メーカーは、これまでに蓄積した技術力、豊富な人材、ブランド力などの強みを生かして、勝ち残りたいところです。