NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクグループの3社が独占している「自ら通信網を持つ携帯電話事業者」に楽天が新しく参入します。楽天はドコモの回線を借りて格安スマートフォン事業をしていますが、もっと大きな利益を得ようと自前の通信網を持つことにしました。楽天が参入することで携帯電話事業の競争が促され、料金は下がりそうです。利用者にとっては、うれしい競争ですが、業界は過当競争を警戒しています。ただ、第4次産業革命と言われる社会の大変化の主役はスマートフォンです。その役割は増し続けるはずで、まだまだ競争が足りないという見方もあります。
(写真は、楽天の三木谷浩史会長兼社長)
ソフトバンク以来の参入
自前の通信網を持つためには、総務省から携帯向け電波の割り当てを受けないといけません。総務省は防衛省やラジオ局の通信に使われていた電波を携帯電話向けに開放することとし、既存の3社に加えて楽天が申請しました。総務省の審査では新規参入者が優先されるため、3月末にも楽天に認められることが確実になっています。新しく電波が割り当てられるのは、2005年のイー・アクセス以来で、イー・アクセスは2007年にソフトバンクに買収されたため、新規参入はソフトバンク以来となります。
(写真は、ソフトバンクの孫正義社長)
自前の通信網で事業を大きく
今の携帯電話契約数のシェアは、ドコモ、au、ソフトバンクの3社で90%以上を占めています。残りは、格安スマホ事業者で、そのうちのひとつである楽天は0.9%にすぎません。楽天は契約数が少ないうえ、ドコモに回線使用料を払っているため、利益は大きくありません。このため、自前の通信網を持って事業を大きくしたいと考えました。楽天は自前の通信網を整備するために6000億円をかけ、サービスを始める2019年の10年後には今の10倍以上の1500万人の顧客獲得を目指すことにしています。
(図版は、携帯各社の関係と契約数のシェア)
激しい価格競争を警戒
ただ、楽天が全国すべてをカバーする通信網を整備するのは難しそうで、地方はドコモの通信網を使わせてもらうことになります。ドコモの鵜浦博夫社長は「協議はするが、提供は義務ではない」と言っています。楽天の参入を警戒している発言と受け止められています。ソフトバンクが参入した後、激しい価格競争が起きました。最近は落ち着いてきていたのですが、楽天の参入でまた激しい競争が始まるのではないか、と警戒しているのです。
スマホが新しい社会の入り口
家計の通信費はスマホの普及で右肩上がりが続いています。一般的な家庭では月1万3千円超と10年で1割以上増えています。スマホの普及自体はそのうち天井に来ると思われます。日本は人口が減っていきますので、その後は横ばいか減少に向かうでしょう。ただ、スマホの役割はまだまだ大きくなり続けるはずです。すべてのものがインターネットでつながるIoT社会の到来が言われています。その入り口となるキーデバイスがスマホです。生活の場面ごとにスマホが必要になってきます。使用頻度が上がるわけですから、家計の通信費は上がり続ける可能性があります。それは新しい社会の障害になりかねません。競争が激しくなって利用料が下がることは新しい社会に対応することです。携帯電話事業者は電力会社や鉄道会社などと同じように社会の大事なインフラを担う会社です。社会にとっていいか悪いかも考慮しないといけない公益性のある業界だという認識を、就活生も持ちましょう。
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