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2018年03月14日

回転ずし業界が「ファミレス化」する事情 「戦国時代」へ

外食

 回転ずし大手のくら寿司がハンバーグなどの洋食メニューの提供を始めると発表しました。回転ずし大手は最近、ラーメン、カレーなどのほか、コーヒーやパフェといったサイドメニューを充実させています。これまで一皿100円のすしで勝負するビジネスモデルでやってきましたが、原材料や人件費の上昇で利益の確保が厳しくなり、競争が激しくなっています。目指す方向は、ファミリーレストランのように幅広い客の幅広いニーズに応えることのようです。こうしたビジネスモデルの変更によって、業界の再編も進みそうで、回転ずし業界は新しい戦略を必要とする「戦国時代」を迎えています。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

(写真は、くら寿司のイタリアンメニュー)

ボックス席で家族団らん

 回転ずしは1958年に大阪でお目見えしました。人件費が少なくてすむメリットに加え、面白さもあって伸び、80年代には大手チェーン店が登場しました。大手チェーンでは、4~6人座れるボックス席を設け、家族や友人同士が団らんしながら食べるスタイルが定着しました。回っている皿をとるだけでなく、注文もできるようになりました。ほかにも、さまざまなアイデアを生かした機械化や自動化が進みました。

(写真は、回転ずしを生んだ元禄寿司の道頓堀店=1962年、大阪市)

スシローと元気寿司が統合交渉

 回転ずし業界の今の市場規模は約6000億円で、ここ5年で1000億円以上増えています。売り上げ上位5社は、①スシロー②くら寿司③はま寿司④かっぱ寿司⑤元気寿司――の順番です(ランキング表参照)。このうち、スシローと元気寿司は経営統合の交渉が進んでいて、今秋には統合が実現するものとみられています。回転ずしを運営する会社は全国で約500社ありますが、上位5社で売り上げの約8割を占めます。ただ、地方では、行列のできる「グルメ回転ずし」も多く、上位5社に負けない競争力を持っているところがあるのも特徴です。

一皿100円では利益厳しく

 外食産業の中で回転ずしは、まだ伸びている数少ない業界ですが、陰りも見えています。主力の一皿100円のすしは、魚や米などの原材料や人件費の値上がりによって、利益が出にくくなっています。より利幅の大きい一皿180円や280円の高級ずしを投入していますが、安いすしを求める客のニーズとはすれ違いがあります。そこで力を入れているのが、話題になる新商品やサイドメニューです。くら寿司は昨年、しゃりの代わりにカットした野菜を使った「シャリ野菜」を始めました。今年になり、すしとチョコをあわせた「ティラミスシ」も投入しました。そして、3月16日からはハンバーグ、スパゲッティなどの洋食の新メニューも投入することにしました。ほかの大手もラーメン、うどん、カレー、カレーパン、パフェなどで新商品を投入しています。

(写真は、スシローの「苺すぎるパフェ」=スシローグローバルホールディングス提供)

街中や海外で店舗展開

 店舗も郊外一辺倒から街中にも出店するようになっています。若者やサラリーマンなどに客層を広げようという狙いです。また、中国、香港、ハワイなどの海外展開にも力を入れています。ただ、海外は地元資本の回転ずし店が強かったり、すしに高級イメージを持っている人が多かったりするため、勝ち抜くのは簡単ではありません。

ファミレスとの争奪戦激しく

 こうしたことから大手回転ずし業界は、これからも国内市場を主力としていかざるを得ないのは間違いなく、幅広いニーズに対応する「ファミレス化」をさらに進めていくものとみられます。ファミレス業界の市場は回転ずし業界の倍の規模。各社にとって魅力的です。そうなると、回転ずし業界の中だけの競争ではなく、ファミレスとの客の争奪戦も一段と激しくなりそうです。

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