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2017年12月13日

休み始めた外食業界 「便利さ」と「働き方」考えよう

外食

 365日開いているのが当たり前だった外食業界に休業日を設ける動きが出てきています。「炭火串焼テング酒場」などを展開するテンアライドは、大みそかの12月31日に全122店舗が休業すると発表しました。また、24時間営業をしていたファミリーレストランやファストフード店の中には、深夜営業をやめる動きも出ています。外食産業は、パートやアルバイトに頼っていますが、人手不足が深刻になり、「いつでもやっている」というビジネスモデルを変えざるを得なくなっています。営業時間短縮の動きは外食産業の正社員の働き方にも変化を及ぼすはずです。外食業界に関心のある就活生は、人手不足が業績や働き方にこれからどんな影響を与えるか、考えてみてください。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)
(写真は、大阪北新地の歓楽街。居酒屋チェーン店も多い=大阪市北区、多重露光)

ロイヤルホストも一斉休業

 テンアライドが一斉休業するのは、1969年の創業以来初めてです。大みそかだけでなく、再来年は元日も休業にすることを検討しています。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングスも、来年から一斉休業日を設けることにしています。休業日は元日を含む計3日間にする予定です。傘下の天丼チェーン「てんや」でも、ほとんどの店で元日を休むことにしています。
(写真は、ロイヤルホスト桜新町店。全国で一斉に休業する日を導入する=東京都世田谷区)

すかいらーくは午前2時閉店

 休業日を設ける動きの前に、24時間営業を見直す動きが先に出ていました。すかいらーくは今年に入り、大半の店を午前2時閉店にしました。ロイヤルホストやマクドナルドも24時間営業の店を大幅に減らしています。そのほかにも、客が自分で会計するセルフレジやセルフ式ドリンクバーといったセルフ方式を導入する動きも出ています。
(写真は、「大戸屋」のセルフレジ=東京都千代田区)

時給1000円超えは当たり前

 背景にあるのは、深刻な人手不足です。景気がいいことに加え、若年人口が減っているため、条件のよくない仕事には人が集まりません。外食業界のパートやアルバイトは特別な技能や資格が必要な仕事ではありませんので、もともと時給が高くありません。それでも、ここ数年は上がり続け、都市部では1000円を超すことが当たり前になっています。特に深夜の時間帯は時給を上乗せして1300円くらいがふつうですが、それでも人が足りない状況です。

無理のあるビジネスモデルだった?

 日本の少子高齢化、人口減少はこれからも進みます。外国人労働者を受け入れる政策をとれば人手不足はかなり解消されるでしょうが、政治的に困難だとみられます。となると、これからも人手不足は続きそうです。外食業界は1970年代から営業時間を延ばしてきました。店舗数を増やすだけでなく、営業時間を延ばすことで売り上げを増やそうとしてきたのです。24時間営業や年中無休はその行き着く先でした。しかし、そのビジネスモデルが労働力の制約によって継続不能になってきました。考えようによっては、もともとかなり無理のあるビジネスモデルだったのかもしれません。客の便利さを追求するあまり、働く人の無理に目をつむってきたことが表面化したとも言えそうです。

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