最近、ホテルの予約がとりにくいとか、値段が上がっているといった話をよく聞きます。訪日外国人客が増え続けているため、需給がきつくなっているのです。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開かれるため、政府は今より5割近い多い年間4000万人の訪日外国人を想定しています。そうなるとホテル不足がますます深刻になると、都市部ではホテルの建設ラッシュが続いています。大和ハウス工業も、グループ会社ダイワロイヤルが全国展開するシティ・ホテルやビジネスホテル(ダイワロイネットホテル)の新設計画を朝日新聞のインタビューで明らかにしました。ただ、こうした増室や民泊の解禁で2020年の需要は満たすことができ、オリンピック・パラリンピック後には過剰に苦しむという見方もあります。今のホテル建設ラッシュはバブルなのか、そうでないのか、ホテル業界に関心のある人は考えておいた方がよさそうです。
(写真は、今年2月にオープンした福島県郡山市の「ダイワロイネットホテル郡山駅前」=ダイワロイヤル提供)
訪日客3000万人が視野
訪日外国人客は依然として増えています。2017年は9月に前年より1カ月早く2000万人を超え、最終的に2800万人程度になりそうです。いよいよ3000万人が視野に入り、政府が見込む2020年に4000万人という目標も夢物語とは言えなくなっています。
(写真は、銀座で買い物してバスに乗り込む中国人観光客ら=2017年1月19日撮影)
大阪、東京など大都市で稼働率高い
訪日外国人客の増加に伴って都市部のホテルの稼働率(客室が埋まっている割合)がじわじわ上がっています。2016年の稼働率を都道府県別に見ると、大阪府が最も高く83%です。東京都は79%、愛知県と福岡県が70%、京都府は67%となっています。全国平均が60%なので、大都市部の稼働率が高いことが分かります。タイプ別では、シティ-ホテル、ビジネスホテルの稼働率が高く、出張者がホテルを予約しにくく感じるのは、そのためです。
(写真は、外国人観光客であふれる大阪のビジネスホテル=2015年10月1日撮影=2017年4月17日撮影)
2020年には余るとの見方も
こうした情勢をホテル業界が指をくわえてみているはずはなく、大和ハウスだけではなく多くの会社が東京、大阪、京都などを中心にホテルの新増設計画を進めています。ホテル関係の調査機関の調べでは、2020年には東京や大阪の大都市部では今より客室数が3割近く増えるとみています。京都は36%、大阪は35%、東京は26%増えるという見立てがあります。みずほ総研は、今年初には「2020年に全国で3万3000室が不足する」としていました。しかし、9月には最近のホテル建設ラッシュを加味して推計し直すと「不足するのは最大でも4000室」としました。ホテル建設ラッシュに加えて来年6月には、全国で民泊が認められるようになります。それも含めれば、2020年の宿泊者需要は十分に満たし、余るくらいだという見方もあります。
(写真は、東京・京橋の新しいカプセルホテル。外国人や女性客向けに高級路線に=2017年4月17日撮影)
不足と過剰のサイクル知っておこう
ホテルの部屋数だけでなく、世の中のモノやサービスは不足と過剰を繰り返します。自由な経済の下では、不足しているという情報があるとビジネスチャンスとみて生産・供給を増やす会社が続出します。全体の調整はできませんので、結局本来の需要を超える生産・供給となり、過剰になります。過剰になると値段が下がってもうからなくなりますので、生産・供給が絞られ、今度は不足することになります。経済にはこうしたサイクルがあることを知っておけば、いっときの好不調で業界を判断する失敗を避けることができます。ホテル業界は将来も有望であることは間違いありませんが、今のような熱気がずっと続くとは考えない方がいいと思います。