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2017年12月20日

家電量販店とネット通販がタッグ…流通の将来考えよう

流通

 楽天とビックカメラが提携して、家電の新しい通販サイトを来年4月に立ち上げると発表しました。家電は、近くの家電量販店に行って実物を見て買うのが一般的でしたが、ネット通販で買う人が年々増えています。ビックカメラは楽天と提携することでネット通販での売り上げをさらに大きくすることを狙い、楽天は設置まで一括して申し込めるビックカメラのノウハウを得て顧客の利便性を高めようとしています。広い床面積の店舗に電気製品なら何でも多品種そろえるという家電量販店のビジネスモデルが崩れつつある今、家電量販店はネット通販をどのように強化していくかが課題になっています。
(写真はビックカメラの大型家電売り場。洗濯機がところ狭しと並ぶ=東京都千代田区)

家電はネット比率の高い商品

 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、家電の市場規模に占めるネット通販比率は2016年で29.9%に上っています。この調査では、いろいろな商品やサービスについてネット通販比率を調べていますが、家電は事務用品・文房具に次いで2番目に比率が高くなっています。全体の平均は5.4%なので、家電をネットで買う人が多いことが分かります。

店頭かネットか、メリットはそれぞれ

 家電をネットで買う一番のメリットは、価格を比較しやすいことです。どの商品が安いのかとか、人気のある商品はどれかがひと目で分かります。店頭で買う場合、販売員に誘導されてしまうとか、比較できる商品が少ないなどの不満があるようです。ただ、店頭で買うメリットを感じる人ももちろんいます。実物を見ないと納得できないとか、販売員に性能について質問したり、値引き交渉したりすることができる、購入から設置まで一括して申し込めるなどが理由です。当面、家電量販店は店頭派とネット通販派の両方をにらみながら、売り上げを伸ばしていかなければなりません。
(写真は、ビックカメラなんば店=大阪市中央区)

街の電気屋さんから量販店に

 戦後の高度成長期のころまで、家電はメーカー系列の「街の電気屋さん」が販売の主力でした。その後、デパートやスーパーが家電販売を手がけた時期を経て、家電に特化した量販店が主力になりました。地域の電気店から大きくなったヤマダ電機、エディオン、ケーズホールディングス、ノジマ、カメラ店から大きくなったビックカメラ、ヨドバシカメラ、電気街の店から大きくなった上新電機などが広範囲に展開し始め、大手家電量販店に成長しました。

とりまく環境は厳しいが…

 家電量販店は競争の激しい業界です。これまでも多くの量販店がつぶれたり吸収合併されたりして、業界から消えていきました。人口が減る中、家電の国内市場自体が伸びていません。また、家電の性能やデザインにメーカーごとの違いはあまりなくなり、競争は価格が中心になっています。さらに、アップルストアのようにメーカー直売の店舗展開も一部で広がっています。生き残った「街の電器屋さん」の一部はお客さんとの距離の近さを売りに踏ん張っています。もちろんネット通販との競争もあります。家電量販店をとりまく環境は依然厳しいものがありますが、取り扱う商品やサービスを広げたり、ネット対応に力を入れたり、持っているバイタリティーで時代を切り開こうとしています。これからの流通業界がどう変わっていくか、こうしたニュースから考えてみてください。

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