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2014年11月11日

新日鉄住金、320億円の損失見込み

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新日鉄住金は320億円の損失 (10月31日朝日新聞朝刊)

 新日鉄住金は10月30日、名古屋製鉄所(愛知県東海市)で火災などが相次いだことから、2015年3月期に320億円の損失が出る見込みだと発表した。設備を直す費用に加え、鉄をつくるのに欠かせないコークスを外部から購入する費用もかさんだ。

【目のつけどころ】火事で損失出ても純利益は増加のわけ

 新日鉄住金の第2四半期決算発表をめぐる記事です。発表には、大きく二つの注目ポイントがありました。そして、二つのどちらに重点を置くかで、新聞やテレビなどのメディアの報道も分かれました。

 一つ目のポイントは、火災事故の影響です。新日鉄住金では今年1月から、名古屋製鉄所で停電や火災事故が相次ぎました。この事故による来年3月期決算への影響について同社は、損失が320億円にのぼると発表しました。

 事故現場の近くでは、トヨタ自動車が保管していた出荷前の約2万3千台の車が黒煙に含まれるタールやすすで汚れ、補償をしました。事故による生産の減少や設備の修理費などもかさみました。こうした対応に要した費用が今回、はっきりと金額で示されたわけです。

 二つ目のポイントは、会社全体の業績そのものです。来年3月決算の見通しをめぐっては、日立製作所や三菱電機などの国内電機メーカーが「過去最高の営業利益となりそうだ」と予想するなど、いまの日本経済は景気回復の流れが鮮明です。株価の上昇も続いています。

 こうした中、鉄鋼最大手の新日鉄住金がどのような決算予想となるのか、大いに注目されていました。発表によると、純利益は3%増え、2500億円になるという見通しです。原料価格が値下がりする一方、売り上げは大幅に伸び、好決算に貢献するようです。

 どうですか。朝日新聞をはじめメディア各社は、おおむね「事故による損失額」に注目したニュースが多かったようですし、その金額も320億円と多大です。しかし、会社の利益全体から見れば、この損失分は吸収され、最終的には大幅な黒字決算となる見通しです。

 この全体像は、損失だけを見ていても分かりません。ニュースの価値をどのようにバランスよく判断できるかが重要ですね。

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