さよなら赤木屋珈琲 (10月18日朝日新聞朝刊)
証券会社が経営するコーヒー店として話題になった東京・日本橋の「赤木屋珈琲」が、今月いっぱいで閉店する。赤木屋証券(現赤木屋ホールディングス)が2012年末に証券業をやめた後も本社ビルで営業を続けてきたが、周辺の再開発でビルが取り壊されることになった。
証券会社が経営するコーヒー店として話題になった東京・日本橋の「赤木屋珈琲」が、今月いっぱいで閉店する。赤木屋証券(現赤木屋ホールディングス)が2012年末に証券業をやめた後も本社ビルで営業を続けてきたが、周辺の再開発でビルが取り壊されることになった。
赤木屋証券という証券会社が廃業後も会社があったビルで喫茶店を続けていたが、それもついに閉店に--さらりと読めますが、その背後にある様々な人間模様や社会の変化を想像させるなど、実は奥深さがある記事なんです。
では、赤木屋証券のように廃業をした証券会社というものは、いったいどれくらいあるのでしょうか。信用調査会社の帝国データバンクは、赤木屋証券が廃業した年でもある2年前の2012年時点で、報告をしています。
それによると、廃業や倒産などで消えた証券会社は、過去20年間で147社もありました。大変な数ですね。その理由として、帝国データバンクの報告書は次のようなポイントを挙げています。
・バブル経済の崩壊による市況の低迷
・規制緩和などによる競争の激化
・インターネットの発展によるオンライン取引の増加
こうした変化を背景に、日本市場に進出してきた外資系の証券会社や、個人向けに手数料を大幅に値下げしたネット系の証券会社が業績を伸ばす一方で、国内の中堅や中小の証券会社は低迷しました。
主な出来事としてすぐに浮かぶのは、外資系のリーマン・ブラザース証券の倒産と、かつて国内で4大証券会社と呼ばれた山一証券の自主廃業でしょう。また、三洋証券の会社更生法申請とその後の破産宣告もありました。
ところで最近、こうした廃業の動きをさらに加速させそうな動きがあります。朝日新聞が9月6日朝刊で報じました。
「株取引 超高速の時代」
と題した記事です。
記事によると、数万分の1秒という猛スピードで株式の売買注文を繰り返す「超高速取引」が増えているそうです。都内にあるデータセンターには、数百台ものコンピューターがずらりと並び、一瞬で大量の取引をしているそうです。
システム開発には数億円規模の資金が必要ですから、業者は激しい競争にさらされます。中小証券会社では太刀打ちできないかもしれません。今後ますます、証券業界は淘汰が進む可能性があるわけです。
どうですか。喫茶店の閉店という街角の風景の背後に、大きなうねりが見えてきませんか。
2024/11/21 更新
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