新タイヤは100%植物由来 (12月4日朝日新聞朝刊)
住友ゴム工業は、石油や石炭などの「化石資源」を全く使わずにつくったタイヤ「エナセーブ100」を発売した。すでに天然ゴムなどの植物由来97%のタイヤを出していたが、ゴムの劣化を抑える「老化防止剤」などの化学薬品を、植物由来のものにおきかえる技術を開発した。
住友ゴム工業は、石油や石炭などの「化石資源」を全く使わずにつくったタイヤ「エナセーブ100」を発売した。すでに天然ゴムなどの植物由来97%のタイヤを出していたが、ゴムの劣化を抑える「老化防止剤」などの化学薬品を、植物由来のものにおきかえる技術を開発した。
この記事に出てくるタイヤの「老化防止剤」とは、強い日光や熱などを受けてゴムが変質するのを防ぐ薬品です。フェノール系誘導体や芳香族アミン誘導体などの化学薬品が使われてきました。
野ざらしにされたタイヤが、茶色っぽく変色しているのを見たことがありませんか。あの原因となる物質が老化防止剤です。薬がタイヤ表面に染み出して、強い光や熱に対する保護膜をつくることで、ゴムのひび割れなどを抑えています。けれどもカーマニアらは「茶変」などと呼んで嫌がることもあるそうで、だからタイヤの黒色を保護するワックスなどの商品があるのです。
ところで、なぜタイヤは黒色ばかりなのでしょうか? 赤や青のタイヤを製造すれば、おしゃれで華やかですから人気が出そうにも思いますが、なぜ無いのでしょうか。
それはタイヤにとって摩耗を抑える「カーボンブラック」という物質が不可欠だからです。カーボンブラックとは、簡単に言えば、石油などを不完全燃焼させて作る「すす」のこと。これをゴムに混ぜることで、タイヤが摩耗して破裂するのを防いでいるのです。
「エナセーブ100」は、老化防止剤だけでなく、このカーボンブラックについても、植物由来の成分で代替することに成功しました。つまり、これまでの製品の「エナセーブ97」では、その名の通り97%までは植物由来にできていたのですが、残りの3%が困難でした。カーボンブラックなどの各種成分が、石油などを使って作るしかなかったのですね。
しかし研究を重ねて、この最後の壁がついに乗り越えられました。タイヤが世の中に登場してから120年以上という歴史があるなか、新たな一歩を記した偉業と言えそうです。製品開発者たちがどれだけ苦労を重ねであろうかと想像すると、頭が下がる思いがします。
2024/12/04 更新
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