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2021年09月10日

逆風の住宅メーカー、エコやリフォームに活路 展示場に行こう!【業界研究ニュース】

建設・不動産・住宅

 多くの人にとって戸建て住宅は一生の買い物になります。テレビコマーシャルなどで見る美しい住宅に憧れる人は少なくないと思います。ただ、そんなコマーシャルを流す住宅メーカーにも逆風があります。ひとつは木材価格の上昇です。コロナ禍のアメリカで自宅の価値が見直され、新築やリフォームが盛んになったのが引き金です。木材が世界的な品不足となって国際価格が上がり、住宅メーカーには「ウッドショック」と呼ばれる打撃を与えています。日本の大手住宅メーカーも利益を確保するため木造の住宅価格を引き上げています。この逆風はそのうちおさまるとみられますが、日本の住宅メーカーにとっての長期的な逆風は人口減少による新築住宅の着工戸数の減少です。野村総合研究所の予測では、2020年度に81万戸だったものが2040年度には46万戸にまで減るとしています。一方で、高齢化の影響などで増えるとみられているリフォーム需要や環境問題に対応した「ゼロエネルギーハウス」(ZEH=ゼッチ)に力を入れることなどで乗り切ろうとしています。

(写真は、住宅展示場=2020年2月、熊本市南区)

新築戸数はバブル期の半分程度

 日本の2020年度の新設住宅着工戸数は前年度比8.1%減の81万2164戸でした。コロナ禍で住宅展示場の来場者が減ったことなどが響き、リーマン・ショックの影響で落ち込んだ2009年度の77万5277戸に次ぐ低水準でした。コロナ禍の影響がほとんどない2019年度は約88万戸でした。バブル期の1990年度には約167万戸もありましたので、今はその半分程度になっています。ただ、住宅戸数は人口が減れば減らざるを得ないため、これからも減る傾向は変わらないことが予想されます。しかし、新築を購入することが少ない高齢世代の減り方は小さいため、リフォーム需要は減らず、市場は6~7兆円で微増か横ばいとみられています。

大小さまざまな会社がある業界

 日本には数万ともいわれる住宅建設に関わる会社があります。細長く高低差のある日本列島では気候の違いによってさまざまな仕様の住宅があることや、長く地域に根を張った工務店や大工さんが多数存在するためです。もちろん売上高が1000億円を超えるような大きな住宅メーカーもありますが、売り上げトップ10のメーカーをあわせても新築住宅市場全体の2~3割程度とみられています。大小さまざまな会社が全国津々浦々に存在するのが業界の特徴です。

売り上げトップはダイワハウス トップ10は…

 直近の通期決算による売上高からみた日本の住宅メーカーのトップ10と各社の特徴をざっと紹介します。
大和ハウス工業(ダイワハウス) 戸建て住宅だけでなく土地売買や商業施設の建設なども手掛けているため、
売り上げが大きくなっています。
積水ハウス 技術力やアフターサービスを売りにしています。
飯田グループホールディングス 飯田産業、一建設、東栄住宅、タクトホームなどを傘下に抱えています。
住友林業 木造住宅に強い会社です。
旭化成ホームズ(へーベルハウス) 耐久性がいいという評判があります。
積水化学工業(セキスイハイム) 積水ハウスと似た社名ですが、積水ハウスは積水化学工業から独立した会社で、セキスイハイムはその後、積水化学工業にできた住宅部門のブランド名です。源流は同じですが、今はまったくの別会社です。
一条工務店 断熱性や耐震性のよさをアピールしています。
ミサワホーム 「100年住宅」というネーミングで耐久性などを売りにしています。
⑨パナソニックホームズ 住宅設備や家電なども主にパナソニック製品が使われます。
タマホーム コストパフォーマンスのよさが売りです。

(写真は、大和ハウス工業が愛知県春日井市に建設する複合商業施設のイメージ図=同社提供)

トヨタとパナソニックで街づくり

 住宅メーカー業界には新しい動きもあります。例えば、トヨタ自動車パナソニックが住宅事業を統合し、「街づくり」の会社を2020年1月に作ったことです。新会社「プライム ライフ テクノロジーズ」(PLT)がそれで、傘下にはトヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワホーム、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の5社があります。住宅会社が住宅地の大規模開発をするケースは以前からありましたが、この会社は住宅を引き渡して終わりではなく、住む人とつながり続けて、街の価値を上げていくことを目標にしています。また、新勢力の台頭もあります。家電量販店のヤマダ電機は2011年に中堅住宅メーカーの「エス・バイ・エル」(現ヤマダ・エスバイエルホーム)を買収し、住宅事業に参入しました。さらに2020年には注文住宅などを手掛ける東京証券取引所一部上場のヒノキヤグループの株を買い、連結子会社にしました。ヤマダ電機の住宅事業は業界で存在感を示し始めています。

「ゼロエネルギーハウス」が広がる

 地球温暖化対策は住宅メーカーにも大きな課題となっています。住宅分野は日本の温室効果ガス排出量の15%程度を占めるとされているためです。住宅メーカーは、太陽光発電と高効率の断熱材を組み合わせてエネルギー消費を実質ゼロにする住宅「ゼロエネルギーハウス」(ゼッチ)の建設を進めています。経済産業省は2020年までに新築戸建て住宅の半数以上をゼロエネルギーハウスにするという目標を立てていましたが、ほぼそのペースで進んでいます。最近では、賃貸物件にも広がっています。

(写真は、ゼロエネルギーハウスの展示場=甲府市古上条町)

住宅展示場に出かけてみては

 住宅メーカーはたくさんあって、違いがわからないという人は多いと思います。そういう人におすすめなのが住宅展示場に行ってみることです。大きな会社は自社の売りを強調した住宅を展示し、開放しています。社員が詰めている場合が多く、必要なら説明してくれます。見て回ると、それぞれの会社の特徴や何に重きを置いているかがよくわかります。説明してくれる人から社風の一端が見えることもあるでしょう。学生時代に本当に家を買おうと考えている人はほとんどいないと思いますが、「将来のため」と言ってもいいでしょうし、正直に「就活の業界研究の一環として来ました」と伝えてもきっと丁寧に対応してくれますよ。もちろん企業研究はそれだけで十分とは言えませんが、入り口として便利だと思います。関心のある人は出かけてみて下さい。

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