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2021年06月18日

「かっこいい」…など4Kめざす ゼネコン5社にも個性あり【業界研究ニュース】

建設・不動産・住宅

 建設業界は企業数や従事者数からみると、日本屈指の大産業といえます。建物を建てる建築、ダムやトンネルなどを造る土木は、わたしたちの生活になくてはならない仕事です。ただ、学生の人気はあまり高くありません。建設業は「きつい、汚い、危険」といった「3K」の仕事だというイメージや、過去の汚職事件などからコンプライアンスがしっかりしていないイメージが足を引っ張っているのでしょう。業界最大手である鹿島の押味至一社長は、「給与、休暇、希望、かっこいい」の「4K」の業界にしたいそうです。待遇改善とともにデジタル化を進め、現場ではロボットが活躍する業界になれば、若者のイメージも変わってくるという思いのようです。コロナ禍や東京五輪関係の仕事が終わった影響で、建設投資はここにきて停滞気味ですが、コロナ禍が終息に向かえば、再び盛り上がってくるはずです。建築や土木に関心のある人は、持っている業界へのイメージが実際と同じかそれとも違っているのか、先輩の話を聞くなどして研究してみてください。

(写真は、大成建設が造った国立競技場=2021年5月、東京都新宿区、朝日新聞社ヘリから)

スーパーゼネコンは5社

 日本には約47万の建設業者がいます。働いている人は約500万人です。業者数が多いことからわかるように、日本の建設業界は中小、零細事業者が多いのが特徴です。もちろん大企業もあります。大規模な建設事業は、発注者から注文を受ける元請けがいて、そこから下請け孫請けへと仕事がおろされていきます。元請けとなって工事全体を取りまとめる仕事をする企業をゼネラル・コントラクター、略してゼネコンといいます。ゼネコンは幅広い仕事をしますので、従業員数の多い大企業でないとできません。ゼネコンの中でも、単体の売上高が1兆円以上の企業を「スーパーゼネコン」と呼んでいます。鹿島、大林組大成建設清水建設竹中工務店の5社がそれで、6位以下を大きく引き離す企業規模となっています。

(写真は、鹿島建設が造った日本初の超高層ビルの霞が関ビル=2019年5月、東京都千代田区)

コロナ禍で減収減益に

 2021年3月期の連結決算を見ると、売上高は鹿島が1兆9071億円、大林組が1兆7668億円、大成建設が1兆4801億円、清水建設が1兆4564億円、2020年12月期決算の竹中工務店は1兆2377億円でした。各社とも前期に比べてマイナスで、その幅は5~15%でした。純利益もいずれも前期比マイナスでした。最近は、東日本大震災からの復興需要、災害に備える国土強靭(きょうじん)化、東京五輪・パラリンピック、訪日外国人客数増によるホテル需要などにより、建設業界は好調でしたが、コロナ禍で国内外の工事がストップしたことの影響などで減収減益となりました。しかし、今期以降は回復すると見込んでいます。

(写真は、大林組が造った東京スカイツリー=2020年9月、東京都墨田区)

5社にはそれぞれ特徴あり

 この5社には、それぞれ特徴があります。鹿島は江戸時代末期の創業という伝統のある企業で、どちらかというと土木に強みがあります。海外事業にも積極的です。有名な建築物としては、日本で最初の超高層ビルである霞が関ビルがあります。大林組は、大阪発祥の会社で西日本に強みがあります。東日本での建築物では東京スカイツリーが有名です。大成建設は5社の中で唯一の非同族経営の会社です。市街地開発事業などに強みがあります。最近の建築物では新国立競技場があります。清水建設は200年以上前の宮大工が源流で、明治時代には渋沢栄一の指導を受けていました。再生可能エネルギーや宇宙など非建設事業にも力を入れているのが特徴です。前回の東京五輪で建設した国立代々木競技場は名建築として有名です。竹中工務店は5社の中で唯一の非上場企業です。源流は戦国時代末期にあります。土木事業はほとんどなく、建築に特化しているのが特徴です。最近の建築物としては大阪のあべのハルカスがあります。

(写真は、清水建設が造った国立代々木競技場=2016年9月、東京都渋谷区、朝日新聞社ヘリから)

ゼネコン汚職などでイメージ悪化

 建設業は戦後の日本の発展に大きく貢献しました。新幹線、高速道路、橋、トンネル、高層ビルなどは日本の高度成長のシンボルのようになりました。一方で、公共事業を受注するための汚職談合が長年、問題視されてきました。1993年には建設大臣、知事、市長、ゼネコン幹部などが検察庁に逮捕される「ゼネコン汚職」事件が起こり、世間を騒がせました。バブル経済の崩壊の影響も受け、2002年には建設業界に再編、淘汰の波が押し寄せました。また、女性が少ないとか休日が少ないなど働き方の問題も指摘されてきました。そうしたことが業界のイメージに影響し、入ってくる若者が不足しています。現在の建設業従事者の4人に1人は60歳以上で、高齢化と技能労働者の不足が深刻な問題になっています。

(写真は、竹中工務店が造ったあべのハルカス=2019年1月、大阪市阿倍野区)

スケールに大きな違い

 これではいけないと、建設業界は変わろうとしています。女性の採用や活用に取り組んでいますし、休日を増やしたりデジタル化を進めたりしています。現場の仕事を楽にするためのさまざまな工夫もしています。また、海外工事の受注も徐々に増えていて、海外勤務が増える傾向にもあります。建設業界はスーパーゼネコンから個人事業主までスケールに大きな違いがあります。スケールによって仕事の内容、待遇、文化、勤務地などが変わってきます。いろいろな会社の企業研究をしてみると、それぞれの特徴が見えたり、新たな発見があったりして、建設業界への興味が広がりますよ。

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