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2020年07月03日

自動車販売サバイバル 併売・ネット販売・サブスク…【業界研究ニュース】

自動車・輸送用機器

 国内の新車販売が低迷しています。もともと人口減少、若者の車ばなれ、消費増税などで苦戦していましたが、新型コロナウイルスでさらに苦境になっています。6月の国内の新車販売台数は前年同月より22.9%減りました。減少は9カ月連続になります。自動車メーカーは大変だと思いますが、商圏が国内に限られる自動車販売業界はもっと大変かもしれません。トヨタ自動車の車を扱う販売店(ディーラー)は、5月からトヨタ車ならどの車種でも売る併売を始めました。また、オンラインでの商談や販売にも取り組み始めています。車を売るだけでなく、月々定額の料金を払えば車に乗れるサブスクリプション(定額制)やカーシェアリングなどの新しいサービスにも力を入れようとしています。自動車業界は大きな変革期を迎えていますが、販売業界も変革期に来ています。

(写真は、三重トヨタ自動車の「トヨタウン名張店」。トヨタ店では従来取り扱えなかった「カローラ」など店内外に新車約30車種が並ぶ=2020年6月18日、三重県名張市)

103万人が従事

 自動車に関連する産業は日本にとって大きな産業です。日本自動車工業会によると、従事している人は546万人に上ります。このうち自動車販売・整備部門に携わっている人は103万1000人います。日本自動車販売連合会によると、2018年時点で会員の自動車販売会社は1552社あり、販売する事業所は1万5890店あります。ほとんどはメーカーと特約店契約を結んだ会社です。多くは県単位などのエリアで販売店を展開しています。

最後に残ったトヨタも併売に踏み切る

 日本の自動車メーカーは戦後、独特の販売形態をとりました。特約店を何系列にも分け、売る車種を分散しました。販売台数を増やすには販売店を増やす必要があるという論理からです。販売店は売れる車種がほしくなりますので、中には同じ車台を使いデザインもほとんど同じ兄弟車を作り、車名だけを変えて別々の系列で売るということもありました。20世紀終盤には系列数が増え、中堅メーカーのマツダでさえ5系列を持つまでになりました。しかし、国内の新車販売台数は1990年をピークに減り始め、メーカーはたくさんの系列を抱えていられなくなりました。日産自動車ホンダ、マツダなどは系列をやめ、どの販売店でもそのメーカーのすべての車種を買うことができるようにしました。最後まで残っていたのが販売力の強いトヨタ自動車ですが、今年5月にトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4系列が同じ車を売る併売を始めました。客にとっては、どの店に入ってもトヨタ車の中の好きな車種を選べるので便利ですが、販売店にとっては競争が激しくなるので痛しかゆしです。それでも時代の流れに逆らえないと、併売に踏み切りました。

ネットでクルマを売る時代

 インターネットの利用も始まっています。新型コロナ禍により、実際に会う商談が難しくなったため、オンラインでの商談を積極的に増やしています。オンラインで話がまとまれば、ネットで契約し、店に一度も行くことなく車を買うことができるようになります。日本では実際にクルマを見たり試乗したりしないで買う人はまだ少ないのが実情ですが、アメリカはネット販売で先を行っています。トヨタの4月のアメリカ販売は予想の5万台を大きく上回る8万台でした。実数は明らかではありませんが、底上げしたのがオンライン販売だったそうです。また、マツダはアメリカの4割の販売店でネット販売ができるようになっています。メキシコでもネット販売のシステムができていて、4月は2割、5月は3割ほどがネットで売れたといいます。

(写真は、オンライン販売について説明するトヨタの米国販売店のウェブサイト=ホームページから)

モビリティーカンパニー宣言

 販売店は新ビジネスにも力を入れています。月々定額を払えば乗れるサブスクリプション(定額制)やカーシェアリングなどは、「クルマ離れ」といわれる若者などに乗ってもらう狙いがあります。このほかにも保険や携帯電話を店舗内で販売するなど、自動車以外の商品の販売にも取り組み始めています。トヨタは車を売るだけでなく移動サービスを手掛ける「モビリティーカンパニー」を宣言しており、販売店を幅広く活用していくものと思われます。

(写真は、トヨタウン名張店に設けられている「おトクの窓口」。新車や中古車をはじめ、レンタカーやリース、定額制での利用など幅広い相談にのる=2020年6月18日、三重県名張市)

新しいアイデアが必要

 自動車販売会社の主な仕事は営業ですが、かつてのように売り歩くといったスタイルではなくなりつつあります。客のニーズをつかみ、ネットを駆使して情報を得たり分析したりして客の満足度を上げることが大事になっています。また、移動サービスに関わることなら何でも守備範囲だと思って、新しいアイデアを出したり新しいビジネスに取り組んだりすることもこれから必要になってきます。

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