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2019年09月27日

縮むアパレル市場、伸びる海外が鍵 デジタル・AIで進化?

アパレル・ファッション

 2009年、東京・原宿に日本1号店を開業したアメリカのファストファッション、フォーエバー21が日本から撤退することになりました。「安くておしゃれ」なファッションとして大きな話題になった日本進出でしたが、10年余で終わることになりました。アメリカの本社が破産を申請する準備に入ったことに伴うものですが、日本でも最近は売れ行きが芳しくなかったようです。人口減少やフリーマーケットアプリ(フリマアプリ)の拡大などで、国内の衣料品アパレル市場は縮んでいます。フォーエバー21だけでなく、アパレル業界にはほかにも苦闘している企業がたくさんあります。ただ、世界に目を向けると、アパレルは伸びゆく産業です。日本企業でも「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのように海外事業が伸びることによって企業規模を順調に大きくしている企業もあります。また、インターネットを使った販売や人工知能(AI)を使ったデザインなどの新しい課題も出ています。アパレル業界は経営の舵取り次第で勝ち組にも負け組にもなれる時代を迎えているようです。

(写真は、フォーエバー21渋谷店=2019年9月25日、東京都渋谷区)

国内市場規模はバブル期の4割減

 日本のアパレル市場の規模はバブル期の約15兆円をピークにじわじわと減り続け、今は約9兆円と4割減になっています。事業所数もピーク時の4分の1ほどに減っています。人口が増えなくなったことや、値段が安くて質のいい衣料品が出回るようになったことが主な原因です。また、最近はメルカリのようなフリマアプリが盛んになったことで中古衣料が流通するようになったことも新品市場を圧迫する結果になっています。

(写真は、メルカリのロゴ)

世界市場は300兆円規模に

 ただ、国内と違って世界のアパレル市場はまだまだ伸びそうです。経済産業省によると、2025年までの年平均伸び率は実質ベースで3.6%増、2025年には300兆円市場になるとみられています。アジア、アフリカ、中東、南アメリカなどの地域では大きな経済成長が見込まれ、これまで以上に服装にお金をかけるようになるからです。こうした流れを見通して、衣料専門店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは海外展開に力を入れ、2018年8月期の決算で初めて海外の売上高が国内の売上高を上回りました。稼ぎ頭は中国で、台湾や香港も加えると国内の売上高の半分に達しています。

(写真は、ユニクロのインド1号店となる「ユニクロ アンビエンスモール・バサントクンジ店」〈イメージ〉=ファーストリテイリング提供)

ユニクロはZARA、H&Mに次ぐ3位

 世界のアパレル業界では、「ZARA」を展開するインディテックス(スペイン)と、「H&M」のへネス・アンド・マウリッツ(スウェーデン)が売り上げ規模で2強と言われています。「ユニクロ」はこの2強を追う3位の位置づけです。いずれの企業も世界で大量に生産し、世界で大量に販売するモデルを作り上げています。

(写真は、H&M渋谷店=2018年11月13日、東京都渋谷区)

生産と販売の手法には進化の余地

 アパレル業界には、海外展開以外にも課題があります。9月、ヤフーは衣料品通販サイト「ZOZO」を買収しました。ヤフーは衣料品のネット通販に将来性を見ているようですが、実物を見てから買いたい商品である衣料品の場合、ネット通販にどこまで向き合うかは難しい選択です。また、生産体制のデジタル化が進めば、受注生産と大量生産の両立ができる可能性が出てきます。また、人工知能を使ったデザインなども考えられます。生産や販売の手法にはまだまだ進化の余地がありそうです。国内市場の伸びにはあまり期待できませんが、世界を視野に入れ、新しい手法を開発すれば、今後も「ユニクロ」のような成功があり得る業界と言えるでしょう。

(写真は、ヤフーとの資本業務提携の会見で撮影に応じる左からソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏とZOZO創業者の前沢友作氏=2019年9月12日、東京都目黒区)

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