業界研究ニュース 略歴

2024年10月25日

ユニクロひとり勝ちが続くアパレル業界【業界研究ニュース】

アパレル・ファッション

 「ユニクロ」のブランドで知られる衣料品大手ファーストリテイリング(ファストリ)が2024年8月期決算を発表しました。売上高は前年に比べて12.2%増の3兆1038億円で、初めての3兆円超えを達成しています。世界の衣料品大手の中で売上高は3位ですが、2位との差は小さいため、遠くないうちに2位になる可能性が高いとみられています。ファーストリテイリングは押しも押されもしない世界トップクラスのアパレル企業になったわけですね。

 一方、国内のアパレル市場の規模はバブル経済期をピークに長期的に縮小する傾向にあり、大手の中にも苦戦を強いられている企業が少なくありません。そうした状況を打破するため、まだ成長を続けている海外市場に力を入れたり、電子商取引(EC)にシフトしたり、環境にやさしいリユース(再利用)市場に挑戦したりするなどの様々な取り組みがおこなわれています。
(写真・ユニクロのロゴ=東京都/写真、図表はすべて朝日新聞社)

企画から販売まで一貫して自社で

 ファストリは、ユニクロ1号店をオープンしてから40年になります。ユニクロやジーユー(GU)などのブランドで流行を取り入れた衣料品を大量生産し、比較的低価格で提供するビジネスモデルを確立しました。商品の企画、開発から、生産、流通、販売まで一貫して自社でおこなうのが特徴です。フリース、ウルトラライトダウン、エアリズム、ヒートテックなど、画期的な技術を使った新商品を開発する力も持っています。また、早くから海外進出に力を入れ、海外では20以上の国・地域に国内の倍にあたる約1600店を展開しています。ファストリの成長はおもに海外での売上高や利益の伸びが大きいことに支えられています。
(写真・クアラルンプールにあるユニクロのマレーシア1号店=2023年2月)

将来世界一も夢ではない

 世界の衣料品大手の売上高は、首位が「ZARA」などを展開するインディテックス(スペイン)で、2位はへネス・アンド・マウリッツ(H&M、スウェーデン)です。インディテックスの売上高は約5兆8千億円(2024年1月期)で、H&Mの売上高は約3兆3千億円(2023年11月期)です。2位のH&Mとファストリとの差はわずかです。ファストリはここ10年で売上高が約2倍になっていますので、このままのペースで成長すれば、世界2位になる可能性は高く、将来世界一になることも夢ではありません。

ファストリに次ぐ2位はしまむら

 矢野経済研究所によると、日本のアパレル市場の規模は1991年がピークで約14兆7千億円でした。それが年々縮小し、今はコロナ禍からの回復期になりますが、それでも約8兆円規模(2022年)と推計されています。若い人口が減少傾向にあることや、低価格で高品質の衣料品が出回るようになったことが影響しています。ファストリに次いで売上高の大きい日本のアパレル企業は、しまむらで、売上高は6350億円(2024年2月期)、全国にしまむらブランドの店舗を1415(2024年2月末現在)、アベイルブランドなどその他の店舗を700以上展開しています。海外では台湾に42店舗あります。大量仕入れや地域への大量出店により高品質低価格を実現し、成長を続けています。大手アパレルとしては、ほかにカジュアル衣料に強いアダストリア、神戸市に本社を置く女性向け衣料に強いワールド、スーツなどを中心とする青山商事オンワードHDAOKIHD、女性下着が中心のワコールなどがあります。ただ、衣類はフォーラムからカジュアル、高価格から低価格へと流れており、経営改革が迫られている企業も少なくありません。
(写真・しまむらの店舗=さいたま市、2020年)

4分の1近くがオンラインで

 衣料品もオンライン販売が増えています。経済産業省が発表した「電子商取引(EC)に関する市場調査」によると、2023年の衣類・服装雑貨等の電子商取引の市場規模は2兆6712億円で、前年比4.76%増でした。この分野のEC化率は22.88%でした。つまり、衣類などの4分の1近くがオンラインで買われていることを示しています。こうしたことから、各社ともオンライン販売にも力を入れています。実際の店舗の新設や拡大に力を入れているファストリでも国内ユニクロ事業のEC売上高が1369億円あり、年々増えています。

自社の服を回収してリユース

 また、アパレル大手の間では客が着なくなった自社の服を回収し、洗濯や加工をして古着として売る「リユース」(再利用)の取り組みが広がっています。三陽商会は、自社が販売した衣料品やバッグなどの回収を、直営全店と百貨店内の一部の店舗でおこなっています。リユースできるものはクリーニングしたうえで販売し、リユースできないものは繊維素材や固形燃料などにリサイクルします。ユニクロも一部店舗で自社製品の古着を販売する試みをしています。古着市場は古着自体の人気向上に加え、フリマアプリの普及や節約志向などにより拡大しています。環境と収益の両面から力が入っています。
(図表・朝日新聞社)

時代を推測する力や地域を開拓する力も

 アパレル業界はわたしたちになじみのある業界です。志望者にはファッションに関心のある人が多いのではないでしょうか。ただ、時代の流れとともに浮き沈みのある業界でもあります。40年前に生まれたユニクロが今や世界のトップ3に入る成長を遂げた一方、その間に市場から消えていった有名ブランドもいくつもあります。こうした歴史をみると、これからどういう時代になり、どういう衣類が求められるようになるかを推測する力が必要だと感じます。また、衣類の市場規模は人口の増減に左右されますので、世界を見渡し、人口が増える地域を開拓する力が必要でしょう。

◆朝日新聞デジタルのベーシック会員(月額980円)になれば毎月50本の記事を読むことができ、スマホでも検索できます。スタンダード会員(月1980円)なら記事数無制限、「MYキーワード」登録で関連記事を見逃しません。大事な記事をとっておくスクラップ機能もあります。お申し込みはこちらから

アーカイブ

業界別

月別