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2016年06月14日

衣料品もプライベートブランド時代、生き残りのカギは?

アパレル・ファッション

百貨店、PB売り出し中 アパレル生産減受け(2016年6月14日朝日新聞朝刊)

 大手百貨店が婦人向け衣料品のプライベートブランド(PB)の開発・販売に力を入れている。商品を供給してきたアパレルメーカーが生産を絞り、品ぞろえが難しくなっているためだが、収益性の高いPBを広める利点にも目をつけた。
 東京都内の伊勢丹新宿店の2階フロアの一角に、「ナンバートゥエンティワン」というロゴの付いた棚に様々な婦人靴が並ぶ。三越伊勢丹ホールディングス(HD)が企画し、客の要望を生かして複数の靴メーカーと共同開発。2011年から始めたブランドだ。

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 「ナンバートゥエンティワン」は、グリム童話21番目のストーリー「シンデレラ」をベースに誕生したブランド。もとは靴のブランドでしたが、ことし春にバッグや帽子、靴、ハンカチなど品揃えを増やしました。

 「ナンバートゥエンティワン」のように、小売企業が自社で製品を企画、製造、流通するところまでを担うビジネスの業態を「SPA(エス・ピー・エー)=speciality store retailer of private label apparel」といいます。アパレル業界では米のGAP、日本のユニクロなどが有名で、中間業者をはさまないため余計なコストがかからず、商品の売れ行きに応じて製造量をうまく連動させられれば無駄な在庫を減らせるというメリットがあります。むろんニーズをとらえきれなければ在庫がかさむわけで、事業者としてはしっかり消費者の動きをつかむ努力をしなければいけません。

 三越伊勢丹HDは、このSPA事業の売り上げを2015年度の9.8億円から2018年度には30億円にまで引き上げる計画を発表しました。強みとして掲げているのは、「中間消費層マーケットの空白アイテム」(2016年3月期決算発表会資料より)。1万円台前半の靴を中心に、ユニクロやH&Mのようなファストファッションでもなく、ハイブランドでもないちょうどいいブランドを探していた層のニーズをつかむ商品を売りに三越伊勢丹の店舗だけではなく他の小売店への卸売ビジネスも広げていく計画をたてています。

 ただ、続々と上陸するファストファッションブランド、インターネット通販の普及により、多種多様な選択肢を得た消費者の心は値段の安さだけではつかめません。「ナンバートゥエンティワン」はメーカーと連携し、足の横幅が広かったり外反母趾に悩んでいる人向けの「ザ・マジック」シリーズを展開して消費者のニーズを細かく拾っています。これからの市場縮小時代に生き残るのは、とにかく消費者の「こういう商品が欲しい!」というニーズに正面から向き合った企業。BtoC企業を目指す方は、特に心にとめておいてください。

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