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2019年09月06日

縮むスマホ市場…楽天参入、セット販売禁止、iPhone苦境に?

通信・インターネット関連

 スマートフォン市場が縮んでいます。多くの人に行きわたってきたためです。加えて、10月からスマホ端末の値引き規制が始まります。これまでの携帯大手のビジネスモデルは端末を安く売り、高い通信料でもうけるというものでしたが、ひとつの端末を長く使うユーザーに不利なやり方だと批判され、このビジネスモデルが規制されることになりました。そうなると新機種が出るたびに買い替えるようなユーザーは減ることが予想され、スマホ市場が一段と縮むのではないかとみられています。また、10月からは新たに楽天モバイルが業界に参入します。競争は一段と激しくなることが確実です。携帯大手は、まだガラケー率の高いシニア層を残された市場だとみて、売り込みに力を入れています。ここ10年ほどで急激に伸びてきたスマホ市場はここにきて曲がり角を迎えているようです。

(写真は、9月7日にオープンする「アップル丸の内」の正面入り口=東京都千代田区)

楽天モバイルは大手3社の一角ねらう

 携帯電話事業者は日本では大手3社が中心です。2019年3月現在の契約数のシェアをみると、NTTドコモが38.5%でトップ。次にKDDI(au)が27.6%、3位がソフトバンクで22.3%です。残りが、この3社のどこかから回線を借りている格安スマホ会社で、11%ほどになっています。大手IT楽天の子会社、楽天モバイルは大手3社の一角に食い込むことをねらっています。

(写真は、楽天モバイル仙台一番町店の外観イメージ=楽天モバイル提供)

iPhoneの売れ行き鈍るか

 調査会社のMM総研によると、2018年度の国内のスマホ出荷台数は約3000万台と前年度から200万台減りました。19年度はさらに300万台減ると見込まれています。その理由は、改正電気通信事業法施行されるからです。通信契約を条件に端末を大幅に割り引く「セット販売」が禁止されます。これまではセット販売により高額な端末を安く買えるメリットがありましたが、これからは端末代金の負担が重くなります。たとえば、日本では米アップルの「 iPhone 」が5割以上のシェアをしめていて、全世界の平均を大きく上回っています。iPhoneは高級品ですが、日本ではセット販売によって安く買えるため突出してシェアが高くなっている面もあるようです。ただ、これからはiPhoneの売れ行きは鈍るとみられています。

(写真は、2018年9月のアップルの新機種発表=米クパティーノ市のアップル本社)

ガラホは浸透せず

 こうした状況の中、携帯各社はシニア層への売り込みに力を入れています。国内スマホ市場を年代別にみると60歳以上の利用率は約6割にとどまっています。「値段が高い」とか「操作が難しい」とか「ガラケーで十分」といった理由でスマホを使わない高齢者は少なくありません。携帯大手はガラケーに近い形でスマホの機能も一部持たせた「ガラホ」を売り出すなどしていますが、浸透していません。シニア向けの料金プランを打ち出したり、無料のシニア向けスマホ教室を開いたりして、シニア層の開拓に力を入れています。

(写真は、イオンモバイルがシャープと開発した高齢者向けスマホ。ホーム画面からワンタッチで操作できるのが特徴)

いずれ画期的な進化が

 国内スマホ市場が飽和しているといっても、携帯電話業界に将来性がないわけではありません。スマホは社会生活になくてはならないものになっていますので、需要がなくなることはありません。さらに技術革新が進むことも間違いありません。スマホが本格的に社会に入ってきてまだ10年ほどですが、さらなる画期的な進化がきっとあります。ここ数年は競争が激しくなって利益を圧迫する可能性がありますが、そこを通りすぎれば再び飛躍するときも来るでしょう。業界の将来に悲観的にも楽観的にもなりすぎないことが大事だと思います。

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