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2019年08月23日

マツキヨ、ココカラ統合へ ドラッグストア再編が続く3つの理由

流通

 ドラッグストア業界5位のマツモトキヨシホールディングスHD)と業界7位のココカラファイン経営統合に向けた協議を始めました。ココカラファインとの経営統合の相手としては、業界6位のスギHDも名乗り出ていました。ココカラは検討の結果、マツモトキヨシを選んだ経緯があり、協議している経営統合は実現するとみられています。ドラッグストア業界は、もうけの出やすい医薬品や化粧品で稼ぎ、食品や日用品の安値攻勢で伸びてきました。今や百貨店業界の売り上げに並び、コンビニエンスストア業界を追いかける存在にまで成長しました。しかし、成長の壁にぶつかってもいます。異業種も含めた出店ラッシュで価格競争は激しくなり、医薬品を扱う店舗には欠かせない薬剤師は人手不足です。中国からの訪日客の爆買いも一服してきました。こうしたことから、経営統合によって規模を大きくして生き残る動きが出ています。どこまで再編が進むかわかりませんが、コンビニ業界のようにビッグ3くらいにまで集約されてもおかしくないという声もあります。

医薬品のほか多品種を売るチェーン店

 ドラッグストアは一般用医薬品を中心に健康や美容に関する商品、生鮮食料以外の食品、日用品などをセルフサービスで買える小売店です。一般用医薬品に特化した小規模薬局や調剤薬に特化した調剤薬局とは違う業態で、多品種を売る大規模なチェーン店であるのが一般的です。

(写真は、記者会見を終えて握手するマツモトキヨシHDの松本清雄社長〈左〉とココカラファインの塚本厚志社長=8月22日、東京都千代田区)

マツキヨとココカラは経営統合でトップに

 経済産業省の商業動態統計によると、2018年のドラッグストアの販売額は6兆4000億円で百貨店にほぼ並びました。2019年には抜くことがほぼ確実です。スーパーの13兆2000億円、コンビニの12兆円にはまだ及びませんが、差を縮めていく勢いです。ドラッグストアで最も売上高が大きいのは札幌に本社を置くツルハHDで、2位はイオン系のウエルシアHDです。3位は九州中心に展開するコスモス薬品、4位は全国の地場チェーンを取り込んで成長しているサンドラッグ、5位は長くトップ企業だったマツモトキヨシHD,6位は愛知県に本社を置き東海地方に強いスギHD、7位が東京と大阪の大手ドラッグストア2社が経営統合したココカラファインとなっています。マツモトキヨシとココカラが経営統合すると一挙にトップに躍り出ます。

成長の壁に3つの要因

 1990年代あたりから新しい業態として成長してきたドラッグストアですが、そろそろ成長の壁にぶちあたってきました。ひとつは競争激化による価格競争です。異業種からの参入も相次いでいます。もうひとつは、薬剤師不足です。医薬品を販売するには薬剤師がいないといけませんが、出店が増えたため限りある薬剤師の奪い合いとなり、人件費が高騰しています。三つ目が訪日中国人の爆買いに一服感が出てきたことです。日本の医薬品や日用品の評価は変わりませんが、爆買いより観光に力を入れる人が多くなっているようです。

会社はどんどん変化する

 こうしたことから、ドラッグストア各社は経営統合による規模拡大を進めようとしています。大きくなることによって、仕入れが効率化できたり、統合相手のプライベートブランド(自主企画商品、PB)の商品を扱えるようになったり、海外進出する資金力がついたりするメリットがあります。コンビニ業界は、伸びが鈍るにつれて再編が進み、今はセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社に集約されてきました。ドラッグストアもこれから数年で再編がさらに進むものとみられます。業界に就職を考えている人は、会社がどんどん変化するものと考えていたほうがいいと思います。

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