コンビニエンスストア業界1位のセブン-イレブン・ジャパンは、名前にちなんで7月11日に沖縄県に出店しました。沖縄にはこれまでセブン-イレブンの店はなく、最後の空白県でした。2024年までに250店を出店する計画です。2位のファミリーマートと3位のローソンは、すでに全都道府県に出店しており、これで大手3社がすべての都道府県に出店したことになります。コンビニはこれまで重点地域を決めてそこに大量出店するやり方で店舗数を増やしてきました。しかしそのやり方もセブンの沖縄が最後となり、各社は出店ペースを大幅に落とすことにしています。コンビニ業界はほかにも課題を抱えています。人手不足により24時間営業が難しくなっていたり、食品ロス問題から定価販売が崩れようとしていたり、プラスチック製レジ袋の廃止の検討を迫られていたりしています。社会インフラとして成長し続けてきた日本のコンビニ業界は、どうやら曲がり角に来ているようです。
(写真は、沖縄初出店のセブン-イレブンに並ぶ人たち=7月11日、那覇市)
ローソンはついに店舗数ゼロ増に
国内には5万5000店余りのコンビニがあります。店舗数が最も多いのはセブンで約2万1000店。次に多いのがファミリーマートで約1万6500店、3番目がローソンで約1万4700店。この3社で約9割を占めます。ただ、出店ペースは大幅に落としています。セブン-イレブンは2019年度の国内店の増減について150店の増加としています。これは前年度実績より466店も少ない数です。3位のローソンは前年度に667店増やしましたが、2019年度は増減ゼロの計画です。ついに店舗数が横ばいになります。ファミリーマートは2019年度に126店増やす計画ですが、経営統合したサークルKの店を含む不採算店を閉めるなどの特殊要因があった2年間を除くと、36年ぶりの少ない出店数になります。
人手不足で従業員確保できず
今年度の出店数が少なくなるのは、空白県がなくなったことに加え、人手不足で従業員を確保できないことがあります。人手不足は、コンビニのビジネスモデルである24時間営業も脅かしています。「少ない人間で24時間営業するのはもう限界だ」というコンビニ経営者の悲痛な声を背景に、3社とも時短営業の実験を実施しています。またセルフレジを導入したり、無人店舗の実験に取り組んだりもしています。ただ、未明に店を閉めると、朝のかき入れ時に備えて新鮮な商品を届けることができなくなり、業績に影響します。このため、24時間営業の原則は崩したくないというのがコンビニ本部の本音です。
(写真は、自分で会計するセルフレジも設置された横浜市のファミリーマート佐江戸店)
食品ロス批判で値引き販売
また、コンビニは定価販売が基本でしたが、一部で値引き販売が始まっています。ローソンは6月11日、消費期限が迫った弁当やおにぎりの値段を、ポイント還元の形で事実上引き下げる実験を沖縄県と愛媛県の全店で始めました。セブンも今秋、消費期限が近づいた弁当などでの5%程度のポイント還元を全国2万余の店で始めます。値引き販売は、まだ食べられる食品が捨てられる食品ロスへの批判があるためです。環境省などによると国内の食品ロスの発生量は年640万トン。6割近くがコンビニやスーパー、食品メーカーなどの企業から出ています。政府は2030年度までに2000年度の半分にすることを目指しており、コンビニも値引き販売により、捨てる食品の量を減らそうとしているわけです。
(写真は、消費期限が迫ると、ポイント還元の対象になるおにぎり=沖縄県浦添市のローソン内間四丁目店)
レジ袋、スマホ決済、成人向け雑誌
また、マイクロプラスチックによる地球環境への悪影響が問題になっていることから、プラスチック製レジ袋の廃止も迫られています。セブンは紙製の袋を試験的に導入しており、2030年をメドに完全になくすことをめざしています。また、セブンは独自のスマホ決済「セブンペイ」を始めたところ、多額の不正利用の被害が分かり、開始わずか4日目で新規登録の停止に追い込まれました。スマホ決済への対応も課題として浮上しています。ほかにも、セブンとローソンは国内の全店で成人向け雑誌の販売を8月末までに原則中止することにしました。営業上必要という声もありますが、女性、子ども、訪日外国人などに配慮することにしました。
(写真は、横浜市のセブン-イレブンで試験的に導入している紙製のレジ袋=セブン&アイ・ホールディングス提供)
アジアなど海外ではまだ伸びる
ここにきてコンビニは多くの課題を抱えることになっています。なかでも人手不足の問題が最も深刻になっています。政府が外国人受け入れを認める14技能にコンビニの業務は入っていません。外国人に頼るにしても留学で日本に来ている学生をアルバイトで雇うしかなく、それではこれまでと変わりません。国内に大手3社の空白県がなくなった時期と人手不足が深刻になった時期とが重なり、コンビニの飽和感がはっきり感じられるようになっています。国内での伸びはこれまでのようには期待できないかもしれません。ただ、アジアなどの海外ではまだまだ成長の余地があり、コンビニの将来性に過度に悲観的になるのは、まだ早いと思います。
(写真は、ローソンが開いた留学生向け研修=2018年)
◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから。