業界研究ニュース 略歴

2018年12月12日

無人スーパー、コンビニ増 店にとっては一石二鳥!?

流通

 今年1月、アメリカ・シアトルでアマゾン・ドット・コムが無人店舗「アマゾン・ゴー」の1号店を開業し、世界的な話題になりました。今年は日本でもスーパーマーケットやコンビニエンスストアで無人レジを導入する動きが目立ってきました。ディスカウントストアを展開するトライアルカンパニー(本社・福岡市)はレジをすべて無人にし、夜間は店内も無人にする新型スーパーを福岡県大野城市に開きました。スーパーの無人店舗はおそらく日本で初めてでしょう。コンビニも無人レジの導入を急いでいます。ローソンは利用者がスマホのカメラやアプリを使うことでレジ利用者を減らせる店舗を拡大しています。アメリカや中国に比べて出遅れているといわれた日本の無人化ですが、ここにきて急拡大しそうな気配です。

(写真は、レジ機能が付いたカートで決済用通路を通ると自動で決済し、レシートが出てくる福岡県大野城市のスーパー)

夜間は従業員いなくなる

 トライアルカンパニーの無人化店舗は「トライアル Quick」というスーパーです。レジはすべてセルフで、利用者が商品ごとにバーコードを読み取らせて自ら会計を済ませる仕組みです。レジ機能のついたカートもあり、カートについたスキャナーでバーコードをスキャンしておけば、決済用通路を通るだけで専用のプリペイドカードで支払いを済ませることができます。午後10時から午前5時までの夜間は売り場に従業員はいなくなるといいます。

(写真は、福岡県大野城市のスーパーのセルフレジコーナー。現金やプリペイドカードで決済ができる)

ローソンは100店舗に拡大

 24時間営業が普通のコンビニはスーパー以上に無人化を急いでいます。ローソンは4月から都内の3店舗でレジに並ばないでいい決済方法を導入しました。棚から手に取った商品のバーコードをスマホのカメラで読み取らせるだけで支払いが完了する仕組みです。万引きの増加が心配されましたが、増加は認められず、2019年2月までに都心部を中心に100店舗に導入することにしました。ローソンは2025年を目標に別の仕組みの無人決済も開発しています。商品には無線ICチップを埋め込んでいて、利用者は買いたい商品をバッグに入れたら、スマホのアプリを起動させて QRコードを表示させて機械に読み込ませます。そのままバッグをゲートに通すと決済されます。いちいち商品のバーコードを読み取らせる必要がなく、利用者にとってはさらに簡単になります。コンビニ各社はさまざまなやり方で無人レジや無人店舗を実現させようとしています。まだ実証実験の段階ですが、実用段階は目前になっています。

中国は顔認証が進む

 米中はすでに先に進んでいます。「アマゾン・ゴー」は来店客と商品の動きを店内のカメラやセンサーで把握し、決済は事前登録のアプリで済ませる仕組みです。入店して商品を手にとり店を出るだけで決済ができるタイプで、アマゾンは2021年までに最大3000店規模に増やす計画です。中国はすでに1000店以上のコンビニが無人化しているとみられています。スーパーや衣料品店などでも無人店舗が増えています。利用者の顔を端末に読み取らせる顔認証も実用化しており、そのうち利用者はスマホすらいらなくなります。

(写真は、中国の無人レストラン。セルフサービスで壁に並ぶ箱から食事を取り出し、支払いはスマホで済ます)

レジ係という仕事がなくなる

 日本で無人レジや無人店舗が急がれている最大の理由は人手不足です。特に夜間に働いてくれる人は少なく、無人化、省人化できなければ、営業時間を短くせざるを得なくなり、売り上げの減少につながります。もうひとつは、買い物にかかる時間を短くすることで、利用者数を増やしたり購買額を増やしたりすることです。買い物にかかる時間が短くなれば、買い物のストレスが減って買い物をする機会が増えると考えられるからです。全国のコンビニの店舗数は6万近くになり、飽和状態と言われながらも増え続けています。その分、既存店の売り上げは減り続けていて、客の奪い合いに拍車がかかっています。無人化は、人件費削減と売り上げ増の一石二鳥と見ているわけです。一方で、レジ係という仕事がなくなる一里塚でもあります。デジタル社会の高度化でいろいろな職業がなくなるといわれますが、その先駆けでもあり、便利になると喜んでばかりでいいのかという気もします。

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

業界別

月別