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2018年11月21日

米アップル株急落!スマホの伸びピーク越す?

通信・インターネット関連

 アップル株が世界の株式市場を騒がせています。先月に発売した「iPhone XR(テンアール)」の売れ行き不振が報じられているからです。XRは、この秋にアップルが発売した新機種のうち最も安い機種で、多くの台数が売れると見られていましたが、不調で生産を減らしていると米経済紙が報道したのです。ここ数年、世界景気を引っ張ってきた存在のスマートフォンですが、そろそろピークを越えるのではないかという見方があったところだけに、株式市場は反応し、アップル株だけでなく半導体業界や精密機器業界などハイテク株全体が売られています。アップルは今年8月に世界で始めて時価総額が1兆ドルを超えた価値の高い会社ですので、その影響は株式市場全体に広がる結果になっています。本当にスマホの伸びはピークを越えたのか、それとも一時的な動きなのか、気になるところです。

(写真は、アップルの新製品発表会の会場にあしらわれていたアップルのロゴ=10月30日、ニューヨーク・ブルックリン)

販売台数公表中止も拍車

 アップルの業績に対する懸念から日米の株安が始まったのは、11月12日からです。以来、アップルを材料にしてハイテク株が売られる傾向が続いています。株式市場全体の平均株価を表すニューヨーク市場のダウ平均株価も東京市場の日経平均株価も下落しています。アップルは今月、次回の10~12月期の決算発表から販売台数の公表をやめることを明らかにしました。販売不振を隠そうとしているのではないかと見る投資家もいて、下落に拍車がかかりました。また、アップルは今年4~6月の世界の出荷台数で、中国の華為技術(ファーウェイ)に初めて抜かれ2位から3位になりました。首位は韓国のサムスン電子です。

出荷台数は2年連続で減少か

 市場の懸念はアップルの一機種の不振にとどまりません。スマホ全体の売れ行きがピークを過ぎようとしている兆しではないかと見ているのです。調査機関のIDCによると、世界のスマホの出荷台数自体は2016年をピークに少しずつではありますが減っています。18年も0.2%減って14億6200万台になると予想しています。ただ、台数は減少に転じても、高級機種が売れているので販売金額ではまだ伸びています。しかし、それもどこまで続くか分かりません。

半導体業界への影響大

 スマホの動向が注目されるのは、第4次産業革命と言われる時代の中心機器で、関連する業界が大きいためです。スマホの伸びに伴って半導体業界は好調が続き、大きな設備投資をしてきました。しかし、もともと好不況の波が大きい業界で、スマホが低迷すると半導体へのダメージは小さくないと思われます。スマホ向けに部品を提供しているのは、ほかにも精密機器業界もあります。半導体の大手で日本勢は東芝メモリだけですが、精密機器は日本企業がたくさん生産しており、スマホの低迷は日本企業への影響も出てきます。

「5G」対応のスマホに可能性

 ただ、こうした業界の変調については、短期で見るか長期で見るかという問題があります。確かに目先のアップルの業績には陰りがあるかもしれません。しかし、スマホがなくなるわけではありません。2019年後半には、今の「4G」より通信速度が速くなったり通信容量が大きくなったりする「5G」対応のスマホが売り出される見通しです。使い勝手がもっとよくなれば、買い替え需要が盛り上がる可能性が十分にあります。さらに先を見れば、スマホに代わる新端末が出てくるかもしれません。そうなると、まっさらな市場が広がっているとも考えられます。長い目で業界を見ることも大事だと思います。


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