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2018年11月28日

LINEが銀行業に参入!「金融+IT」でキャッシュレス社会へ

銀行・証券・保険

 LINEが銀行業への参入を表明しました。みずほフィナンシャルグループと共同で新銀行「LINE Bank」を設立して、2020年の開業を目指します。新銀行は、スマートフォンを使った少額の送金や短期間の融資などを手がけると見られます。LINEはすでに保険や証券にも参入しており、ゆくゆくはスマホひとつであらゆる金融サービスができるようになることを目指しています。また、みずほ銀行は新銀行で若い層との接点を持つことで、顧客の拡大を狙っています。世界ではスマホを使った決済が広がるなど、ITによって金融サービスに大きな変化が生まれつつあります。その流れは日本にも押し寄せ、IT業界からの銀行など金融業への参入は一段と進みそうです。

(写真は、新銀行「LINE Bank」の設立を発表するLINEの出沢剛社長〈左〉とみずほフィナンシャルグループの岡部俊胤〈としつぐ〉副社長)

金融業界への参入急ぐ

 LINEは無料通信アプリで大きくなった会社で、現在7800万人の利用者がいます。ただ、通信アプリだけでは成長に限界があり、今年に入って金融業界への参入を急いでいます。1月に金融子会社「LINEフィナンシャル」を設立しました。3月には野村ホールディングスと共同で「LINE証券」を設立すると表明、アプリで口座開設から株式売買までできるようにしました。4月には損保ジャパン日本興亜との業務提携を発表し、交通事故対応がアプリでできるサービスや損害保険商品の販売を始めました。8月にはみずほ信託銀行と提携して遺産整理業務ができるサービスを始めました。そして今回の銀行業参入ということで、幅広い金融サービスをアプリで提供する体制がこれから整うことになります。

手続き簡単、コストは安い

 新銀行の特徴は、手続きが簡単でコストが安いことです。当面は少額の送金や融資が中心になるものとみられますが、店舗に足を運ぶことなく、どこにいてもスマホがあれば簡単に手続きができるようになるはずです。また、たくさんの店舗や従業員が必要ないため、コストも安くできるとみられます。そのため、既存の銀行との接点が少ない若者の利用が見込まれます。将来的には、膨大な利用者のビッグデータを新しいビジネスに生かせる可能性もあります。

(写真は、チャット上での事故対応のイメージ=損保ジャパン日本興亜提供)

背景にキャッシュレス社会

 LINEが金融業への進出を急ぐ背景には、世界ではキャッシュレス社会が進んでいることがあります。例えば中国ではスマホの対話アプリによる決済が街の屋台にも広がり、現金で支払おうとするとおつりがないと店に拒否されるとまで言われます。一方、日本では決済総額の8割が現金で、世界のキャッシュレス化に遅れています。LINEは「LINEペイ」という決済手段を持っていますが、まだそれほど広がっていません。新銀行設立を発表した同じ日、LINEは中国のIT大手テンセントと日本での決済サービスで提携すると発表しました。テンセントの「ウィーチャットペイ」を利用できる店舗を国内で増やし、中国人客を取り込もうという考えです。同時にLINEペイを取り扱う店も増やし、日本のキャッシュレス社会化を加速させようとしています。

(写真は、岡山市のデパートに導入された「ウィーチャットペイ」などの専用端末)

金融とITの関係をよく考えよう

 銀行業界は大きな変化の時代を迎えています。預金金利と融資金利の利ザヤでもうけようとしても超低金利で利ザヤが小さくなり以前ほどもうかりません。送金などの様々な手数料で稼ぐビジネスモデルは、安い手数料を提供できるIT業界からの挑戦を受けています。キャッシュレス社会は決済の主導権をIT企業に奪われることになります。危機感を先取りして、店舗や従業員を減らす動きが始まっています。少し前まで安定性が魅力だった銀行業界ですが、今は先行き不透明な業界になっています。ただ、ITをうまく活用できれば、飛躍することもあり得ます。金融関係を志望する就活生は、金融とITの関係をよく考えてみましょう。

(写真は、福岡・中洲の屋台に掲げられた利用可能なキャッシュレス決済の一覧)

◆就活生のための時事まとめ「『フィンテック』は金融の革命!」も読んでみて。

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