顧客の資産が外部に流出するトラブルが相次ぐ仮想通貨業界ですが、大手企業の参入が続いています。LINE、楽天、ヤフー、マネックスグループ、SBIホールディングスなどがすでに参入したり、参入を正式に発表したりしています。不正流出を防ぐためには、多大な資金と技術が必要ですが、それ以上に仮想通貨のもとになっているブロックチェーンという技術に将来性を感じているからです。独自の仮想通貨「LINK」の取り扱いを始めるLINEの出沢剛社長はブロックチェーンを「スマホ登場に匹敵するパラダイムシフト」と言っています。大手の参入で信頼性が上がり、仮想通貨が広く決済にも使われるようになると、仮想通貨業界は大きく成長します。まだ先行きは見通せませんが、大化けする可能性のある業界だというのは、流出事件があっても変わらないと思います。
(写真は、LINEによるブロックチェーンを使った事業構想の発表会)
みなし業者は16社から3社に
仮想通貨業界というのは、仮想通貨交換業を行う業界のことです。仮想通貨の売買を仲介して手数料を受け取るほか、自分でも売買して利ざやを狙います。交換業をするためには金融庁に登録しなければならず、今のところ「登録業者」は16社あります。登録を申請している状態の会社は「みなし業者」と呼ばれます。金融庁が立ち入り検査を強化して法令遵守の意識が薄かったりリスク対策が不十分だったりする業者に業務停止命令や改善命令を出したため、こちらは16社から3社に減りました。
(写真は、金融庁の入る庁舎=東京・霞が関)
LINEなどは独自の仮想通貨発行
登録業者もみなし業者もほとんどは小資本のベンチャー企業ですが、大手企業はこうした企業を買収したり出資したりして参入しようとしています。ネット証券のマネックスグループはみなし業者の「コインチェック」を、楽天はみなし業者の「みんなのビットコイン」を買収しました。また、SBIホールディングスはみなし業者の「LastRoots」に出資しており、3社あるみなし業者はすべて大手の傘下に入りました。また、LINEやサイバーエージェントは独自の仮想通貨を発行する方向で、自前で登録申請するものとみられています。
(写真は、LINEの出沢剛社長)
ビットコインは200万円から70万円台に
仮想通貨業界は1月にコインチェックで580億円相当の資金が外部に流出する事件がありました。9月にはテックビューロで70億円相当の資金が流出しました。このほかにも少額の流出は頻発しており、警察庁によると今年上半期だけで158件の不正流出、不正送金がありました。こうしたことから、代表的な仮想通貨のビットコインの価格は1月には200万円もしたのが、今は70万円台に落ちています。
(写真は、テックビューロの本社が入るビル=大阪市西区)
大手は参入しやすい状況に
金融庁は少し前まで緩い規制で業界の育成を優先してきましたが、相次ぐ不正により姿勢を変え、業者の数を絞って規制を強化する方向に転換しました。つまり、不正対応ができない業者は退出させ、不正対応がしっかりできる業者だけを登録していく方針です。この方針に合致するのは、大手IT企業や大手金融企業となり、大手にとっては逆に参入しやすい状況になっているわけです。
ブロックチェーンで信頼高まるか
仮想通貨の将来性については見方が分かれます。仮想通貨は現時点ではほとんどが投機の対象で、実際の決済に使われるのはごくわずかです。実際の決済に使われなければ、通貨とは名ばかりのネットギャンブルにしかなりません。決済に使われるためには、厚い信頼が必要になります。ブロックチェーン技術を高く評価する人は「これから信頼が高まっていく」とみますが、「完全なセキュリティー対策は無理」とみる人は今後も信頼は高まらないだろうとみています。ただ、仮想通貨には送金手数料がほとんどかからないなどの利点もあります。グローバルなネット社会では、ドルや円といった国の信頼をバックにした通貨の使い勝手が悪くなっていくことも予想されます。長い目で見れば、仮想通貨に将来性はあるとみるほうが有力ではないでしょうか。
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