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2018年10月10日

スーパー、コンビニ、ドラッグストア…業態の垣根が消えゆく小売業界

流通

 スーパーのユニーが本社を愛知県稲沢市から名古屋駅近くに25年ぶりに戻しました。ユニーは2016年、コンビニエンスストアのファミリーマートと一緒になってユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)という持ち株会社の傘下に入りました。2018年には商社の伊藤忠商事がこの持ち株会社の親会社になりました。また、ディスカウント店のドンキホーテHDとは2017年に資本業務提携をしました。ユニーとしては東京に本社を置くファミマ、ドンキ、伊藤忠との会合などで頻繁に東京に行かなければならなくなり、東京との移動時間を1時間ほど短くできる名古屋駅前に本社を移転したというわけです。今や小売業界は商社、スーパー、コンビニ、ディスカウントストア、ドラッグストア、ネット通販などが業態の垣根や国境を越えて争う時代になっています。違う業態の会社との合従連衡や新技術によるこれまでになかったサービスが重要になっています。

(写真は、座席を固定しないフリーアドレス制を導入したユニーの新本社)

ネット通販の躍進

 小売業界の変化が激しくなっている理由の一つは、ネット通販の躍進です。ネット通販大手のアマゾンは2017年4月に「アマゾンフレッシュ」という生鮮食品の宅配サービスに乗り出しました。それまでもネットで生鮮食品を注文すれば家に届けてくれるサービスはありましたが、ネット通販で最強と言われるアマゾンが参入したことで各社とも迎え撃つ体制を強化しています。セブン&アイHDはネット通販大手のアスクルと生鮮食品のサービスを始めました。イオンもヤフーなどと食品のネット通販に乗り出そうとしています。各社ともネットに詳しいIT企業と組むことで強化する狙いです。

(写真は、野菜などの生鮮品が届くアマゾンフレッシュ)

人工知能の発達

 もう一つの変化の理由は人工知能(AI)の発達です。少子高齢化の日本では、小売業の人手不足が深刻です。AIによる顔認識技術が発達すれば、コンビニなどでは無人店舗を作ることができて、人手不足の問題が解消されます。日本でもすでに実験的に実施されています。他にも商品開発や在庫管理などの分野でもAIが活躍する可能性は大きく、これからAIが小売業に大きな変化をもたらすのではないかとみられています。

(写真は、ソウルにある無人コンビニ)

ネット通販がスーパー上回る

 2017年の日本の小売業界の売上高を業態別にみると、スーパーが13兆円、コンビニが11兆7000億円、百貨店が6兆5000億円、ドラッグストアが6兆円となっています。この中で最も大きく伸びているのはドラッグストアで、次にコンビニ。スーパーは少しだけ伸び、百貨店はわずかに減っています。こうした傾向は長らく続いており、いずれコンビニがスーパーを抜くのではないかといわれています。ただ、2017年のネット通販全体の売り上げは16兆5000億円で、すでにスーパーの売り上げも上回っています。

(写真は、ドラッグストアの店内。一部の生鮮食品を扱う店が増えている)

商社が小売りに力を入れる

 商社が小売りに力を入れているのも最近の特徴です。伊藤忠はユニー・ファミリーマートHDへの出資を今夏、50.1%に引き上げて親会社になっています。三菱商事は17年にコンビニのローソンへの出資を50%超に引き上げて子会社にしました。三井物産はセブン&アイHDに1.83%出資し、セブン‐イレブン・ジャパンなどとの関わりを強めようとしています。また、ディスカウント店やドラッグストア、家電量販店などが総菜や食品に力を入れるといった業態の垣根を越えた動きも目立っています。

(写真は、ユニー・ファミリーマートHDの子会社化について記者会見する伊藤忠商事の鈴木善久社長)

少し先の社会と消費者ニーズを予測

 小売業界は競争の激しい業界です。これまでにもいくつもの有名企業が市場から消えたり、ライバル会社に吸収されたりしました。社会が変化しているのに素早く対応できなかったり、将来の姿を見誤って過大な投資をしてしまったりしたのが原因でした。これからはますます変化が速く激しくなります。少し先の社会とそのときの消費者のニーズを的確に予測できる会社が強いと思います。

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