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2018年10月03日

「甘さ控えめ」でじり貧の砂糖業界 甘党のアジアで挽回できるか?

食品・飲料

 砂糖を作る精糖業は、日本市場では苦戦しています。健康志向の高まりなどから食物が「甘さ控えめ」に向かい、消費量が徐々に減っています。一方で、国内の精糖会社の数は多く、過剰な設備と過当競争体質が指摘されています。ただ、世界に目を向ければ砂糖の消費量が日本よりはるかに多い「甘さ大好き」な国が少なくありません。特に東南アジアは砂糖の消費量が多く、魅力的な市場です。製糖業界最大手の三井製糖は、シンガポールの高級砂糖メーカー「SIS」を買収しました。アジアの高級品市場に進出するためです。国内市場が飽和しているため、海外市場に進出するケースは食品業界で相次いでいますが、砂糖業界も海外進出がポイントになっています。

(写真は、フルーツが載ったかき氷を食べる台湾の子どもたち)

大手メーカーのバックには商社

 製糖業界は大手だけでも十数社あります。売り上げの大きい会社は、三井製糖、日本甜菜(てんさい)製糖、日新製糖、塩水港精糖、フジ日本精糖、東洋精糖といった順番になります。ほとんどの会社に商社が大株主としてついていて、原料の輸入や海外進出に力を発揮しています。大手でみると、三井製糖に三井物産、日新製糖に住友商事、塩水港精糖に三菱商事、フジ日本精糖に双日、東洋精糖に丸紅がついているといった具合です。日本甜菜製糖の大株主には商社ではありませんが、菓子などのメーカーの明治ホールディングスがついています。

(写真は、シンガポールのスーパーの砂糖関連商品の棚=三井物産提供)

国内消費は30年で3割減

 国内の砂糖消費量は少しずつ減っています。一昨年度は8年ぶりに増加に転じたのですが、昨年度は再び減少し、190万トンを割りました。ここ30年で3割減ったことになります。日本の人口が減り始めていることに加え、「甘さ控えめ」が定着してきたことが大きいようです。

世界平均を大きく下回る日本

 精糖工業界によると、1人あたりの砂糖消費量の世界平均は年間23キログラムですが、日本は16.6キロです。主要国で日本より少ないのは11.4キロの中国くらいです。最も多いのはマレーシアで55.1キロ、タイは44.4キロで、東南アジアの砂糖好きが目立ちます。EUは36.9キロ、アメリカは31.8キロとなっており、日本の少なさが目立ちます。

(写真は、シンガポールのかき氷。氷の下にはあんこが入っている)

国内産原料は海外より割高

 砂糖の原料は、サトウキビと甜菜です。日本で作る砂糖の原料の7割ほどは輸入ですが、3割ほどは国内生産です。サトウキビは沖縄と鹿児島、甜菜は北海道がほとんどです。ただ、サトウキビが離島の主要作物になっていることもあり、国内産原料については政府が価格調整をしています。こうしたことから、海外の原料に比べてやや割高になる面があります。そうしたことからも日本メーカーは品質のいい砂糖で勝負しなければならないわけです。

(写真は、真夏の日差しを浴びるサトウキビ畑)

世界市場狙いのリスクある仕事増える

 国内消費量がじわじわと下がっている砂糖業界ですが、食生活に絶対に必要なものであることは間違いありません。見方によっては、比較的安定している業界とも言えます。しかし、その安定に安住していると10年後、20年後は大変です。世界はますますボーダーレスになっていくでしょうから、8兆~9兆円と言われる世界市場を狙ったリスクのある仕事を増やしていかざるをえないと思われます。

(写真は、ベルトコンベヤーで運ばれる甜菜)

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