カメラ業界は、ここしばらく低迷していました。スマートフォンの普及で、「カメラ機能はスマホで十分」という人が増えたためと考えられています。しかし、ここにきて復活の兆しも見え始めました。インスタグラムの人気などでスマホでは満足できない人が増えたことや、東京オリンピック・パラリンピックに向けてプロや愛好家の間でカメラ需要が出てくる気配があることが背景にあります。これからの売れ筋は軽くて性能がいい高級ミラーレスカメラとみられ、各社の新機種発表が続いています。ただ、この流れがいつまで続くかは不透明です。カメラ専業メーカーなら先行きに不安があるところですが、ほとんどのメーカーはカメラ以外の成長分野を持っているため、会社全体の浮き沈みを必要以上に心配することはないでしょう。
(写真は、各社の高級ミラーレスカメラ。左から時計回りにパナソニックの「ルミックス S1R」、ニコン「Z7」、キヤノン「EOS R」(各社提供)
2017年には久しぶりにプラスに
カメラ業界は21世紀に入ってコンパクトデジタルカメラがよく売れ、フィルムカメラの落ち込みをカバーしてきました。しかし、2010年代になってスマホが普及すると、コンパクトデジカメの売れ行きが落ち、デジタルカメラ全体の売れ行きは前年比マイナスが続きました。しかし、2017年は出荷台数で3.3%増と7年ぶりにプラスになり、出荷額では11.6%増と5年ぶりにプラスになりました。
(図は、昨年9月までのデジタルカメラの出荷台数とミラーレスのシェア)
ミラーレスがデジカメ復活の主役に
デジタルカメラの中でもコンパクトデジカメは依然低調ですが、レンズ交換式のカメラが好調です。レンズ交換式には一眼レフとミラーレスがありますが、2017年は一眼レフの出荷台数が759万台と前年比1割減ったのに対し、ミラーレスは3割増の408万台。ミラーレスの好調がデジカメ復活の主役になりつつあります。
(写真は、高級ミラーレス「Z」シリーズを発表するニコンの牛田一雄社長=中央=ら)
高級機の発表が相次ぐ
ミラーレスは、被写体をファインダーに表示する鏡がなく、一眼レフカメラより小さくて軽いのが特徴です。パナソニックが10年前に世界で初めて売り出しました。その後、ソニーがミラーレスに力を入れ、4割のシェアを持つトップメーカーになりました。ここにきて、ソニーに対抗するように各社がミラーレスの新製品を発表しています。8月には、ニコンが「Z7」を発表しました。大型の画像センサーを搭載した高級機で想定価格は44万円前後です。9月にはキャノンも「EOS R」を発表しました。プロや愛好家向けの高級機種で想定価格は23万円です。パナソニックは「S1R」「S1」の2機種を発表しました。ドイツのカメラメーカー「ライカ」のレンズが使える高級機種です。価格は数十万円になる見込みです。富士フイルムも2019年に100万円台前半という超高級ミラーレスを発売すると発表しました。
(写真は、「EOS R」を発表するキヤノンの真栄田雅也社長=中央=ら)
カメラ好きが求められる
日本のカメラ業界は、キヤノン、ニコンの大手2社が引っ張ってきました。しかし両社は一眼レフに強く、ミラーレスでは後発です。ミラーレスはソニー、パナソニック、富士フイルム、オリンパスなどが力を入れています。ここしばらくはミラーレスが各社の主戦場になると思われます。ただ、映像の世界も技術の進歩は早く、数年先のカメラ市場でさえ不透明です。今のところ言えるのは、普通の人が日常を撮るのはスマホで、プロや愛好者が質の高い写真を撮ろうとするのは高級機という二極化が一段と進みそうだということです。カメラメーカーが扱うのは高級機になりますので、そこで働く人はカメラ好きであることが求められると思います。
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