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2018年08月22日

ドコモ、KDDI、SBはもうけすぎか?政府が圧力

通信・インターネット関連

 菅義偉官房長官が札幌市の講演で、日本の携帯電話の利用料について「今よりも4割程度下げる余地がある」と述べました。日本の携帯電話の利用料が高いという声は強くあり、消費に回るお金が増えない一因といわれています。2015年には安倍首相も料金軽減策を総務大臣に求めたことがあります。ただ、携帯大手3社の寡占状態は依然として変わらず、大手3社は大きな利益をあげ続けています。菅官房長官発言はこうした状況に業を煮やし、政府の圧力を一段と強めようとしたものとみられます。この発言が伝えられると、「利用料が下がると業績が悪くなる」という連想で携帯大手3社の株価は軒並み下がりました。果たして、利用料は本当に下がり業績は悪くなるのか、政府と業界の攻防に注目が集まっています。

(写真は、菅義偉官房長官)

大手3社は1兆円前後の営業利益

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクグループの携帯大手3社の業績は好調です。2018年3月期決算は、いずれも売上高営業利益が前年を上回りました。ソフトバンクグループは営業利益が1兆円を超え、NTTドコモもKDDIも1兆円近くの営業利益をあげました。4~6月期も好調は続いています。

(写真は、NTTドコモの吉沢和弘社長)

もうけすぎ批判が政府に届く

 「こうした好業績は利用者に高い料金を課しているためで、もうけすぎだ」という声があります。携帯電話は国民の財産である公共の電波を利用しているため、政府にもそうした声が届いています。具体的には、一定期間の契約を求める「2年縛り」「4年縛り」といった取引慣行、自社のスマホを他社では使えなくする「SIMロック」、端末と通信のセット販売などが不満のもとになっています。

(写真は、KDDIの高橋誠社長)

格安スマホの伸び鈍る

 こうした消費者の不満を背景に、業界と政府にはさまざまな動きが出ています。格安スマホの急激な伸びもそのひとつでした。しかし、昨年あたりから伸びが鈍っています。原因は、大手から借りている回線の接続料が下がらず、これ以上の値下げが難しくなっているためです。大手は少しずつですが値下げをしており、格安業界の安さが際立たなくなっているのです。こうしたことから格安スマホを提供していた楽天は自前で回線を持つ「第4の携帯電話会社」を設立することにしました。また、「4年縛り」「2年縛り」といった取引慣行については、公正取引委員会が「消費者のプラン選択権を奪いかねない」と指摘したことで、3社が見直しを表明することになりました。ただ、消費者にとっての改善はまだ一部で、縛りは残っています。

(図は、「2年縛り」「4年縛り」の見直し)

ニューヨークより安く、ロンドンより高い

 日本の携帯電話料金は海外より高いという指摘もあります。ただ、日本がどこよりも高いかというとそんなことはなく、総務省の情報通信白書によると、データ量の最も少ない水準でみて、2016年度の東京のスマホ通信料金は2680円で、ニューヨークの6187円、ソウルの3819円より安く、ロンドンの2505円、デュッセルドルフの1968円、パリの1915円より高くなっています。

(写真は、ソフトバンクの宮内謙社長)

今の安泰は続かない?

 携帯電話業界は21世紀に入って大きく伸びました。まだ伸びる余地はありますが、その余地はだんだん少なくなっています。人口減少時代に入った国内の携帯電話普及が天井に近づいているのは間違いないためです。国内の競争促進策がうまくいくと、携帯電話大手への「もうけすぎ批判」はやわらぐでしょうが、業界は新しいサービスの開発や海外への展開などが迫られるはずです。今の安泰がいつまでも続くとは思えず、将来への布石をきちんとうっている会社に強みがあると思います。

(写真は、携帯電話事業の認定書を受け取る楽天の三木谷浩史会長兼社長)

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