ビール大手4社の2018年6月中間決算が出そろいました。サッポロホールディングス(HD)は最終損益(税引き後当期純損益=純損益)で25億円の赤字になり、キリンHDも最終損益が50%近い減益となりました。人口減少や高齢化で国内のビール系飲料の市場が縮小していることが苦戦の最大要因です。ただ、ビール各社は、国内では高アルコール度数の缶チューハイや缶ハイボール、清涼飲料などに力を入れるとともに、海外市場を開拓することでビールの落ち込みをカバーしようとしています。国内ビール系飲料市場は今後も伸びることは期待しにくいのですが、ビール大手はどこも歴史のある大企業なので資産や人材が厚く、そう簡単に苦境が深刻化するとは思えません。新分野や海外での展開で、再び成長路線に乗るかもしれません。
(写真は、スーパーのビール売り場=アサヒグループHD提供)
ビール系飲料のシェアはアサヒが首位
ビール大手4社を連結ベースの売上高でみると、サントリーHD、アサヒグループHD、キリンHD、サッポロHDの順になります。ビール系飲料のシェアでみると、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロの順になります。決算では国内ビール系飲料以外の分野の強さが重要になっていますが、アサヒ、サントリーはその分野が比較的好調で、キリン、サッポロはやや苦戦といった状況です。
安売り規制でビール離れに拍車
1~6月のビール系飲料の出荷量は6年連続で過去最低を更新しました。もともと、人口減少と高齢化で日本人の胃袋が小さくなっているところに、昨年強化された安売り規制の影響で小売価格が値上がりし、ビール離れに拍車がかかりました。さらに各社は3月から4月にかけて業務用ビールを値上げしたため、飲食店では生ビールを20円程度値上げしたところが多く、飲食店でビールよりハイボールやチューハイが飲まれるようになった影響も出ました。
(写真は、ハイボールで乾杯する客たち=東京都中央区)
今夏は暑すぎてマイナスか
ビールは夏場に気温が1度上昇すると販売量が2.5%増えるとされています。今夏は記録的な暑さが続いているので、よく売れているはずですが、7月のビールの売り上げは前年同月比でマイナスになった模様です。暑すぎて、ビールより清涼飲料水に流れたとみられています。
ハイボールやチューハイは飲食店だけでなく家庭でもよく飲まれるようになっており、各社は缶入りのハイボールやチューハイに力を入れています。中でもアルコール度数の比較的高いものが簡単に酔えると人気で、さまざまな果汁や炭酸の量などで付加価値をつけた新商品がたくさん出ています。
(写真は、缶チューハイが売り上げを伸ばすスーパーの酒売り場=千葉県松戸市)
腰を落ち着けて仕事ができる
ビール大手は、どこも明治時代に設立された古い会社です。キリンビールは元をたどれば148年前の設立になりますし、アサヒビールとサッポロビールの前身の大日本麦酒は130年前、サントリーは119年前の設立です。サントリーは戦後にビール事業に参入して大きくなりましたが、他に戦後に参入して大手になったビール会社はありません。既存のビール会社が強かったことと全国に工場を作らなければならず多額の投資が必要となるため、おいそれとは参入できなかったという事情があります。今、小規模で個性を出したクラフトビールが人気になっていますが、国内のビール市場の中でクラフトビールのシェアは0.9%にすぎません。ビール業界は4社での陣地の奪い合いは大変ですが、IT業界のようにあっという間に成功するがすぐに脱落していくような激しさはありません。これからの大化けは期待できませんが、腰を落ち着けて仕事をするにはいい業界だと思います。
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