業界研究ニュース 略歴

2018年08月01日

三菱商事がペルー銅山開発へ 7大商社の得意分野は?

商社

 三菱商事がペルーの銅山に巨額の投資をすると発表しました。世界最大級の未開発銅山の開発に参画するための投資です。世界的に普及が拡大している電気自動車は、各種の配線に大量の銅を使うため、今後銅の需要は強まると見られています。三菱商事はそうしたことから、単なる権益の取得ではなく開発からの参画という巨額投資に踏み切ることにしたわけです。ただ、資源開発にはリスクがあります。世界情勢次第で、資源価格は大きく変動するからです。日本の大手商社は3年前に資源価格の低迷から業績が悪化し、三菱商事と三井物産は戦後初めての赤字決算となったほどでした。そのため、「脱資源」が合言葉になっていたのですが、ここにきて資源価格の上昇もあって合言葉があまり聞かれなくなっています。脱資源をどこまで進められるのか、商社は難しい舵取りを迫られています。

(写真は、三菱商事が開発に参画するペルー南部のケジャベコ銅鉱山=三菱商事提供 )

資源に強い三菱商事と三井物産

 日本の大手商社といえば、一般的に総合商社のことをいい、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日の7社を指します。それぞれ得意分野は違い、三菱商事、三井物産財閥系2社は資源分野に強く、伊藤忠商事はファッションなどの生活消費関連分野、住友商事は不動産やメディア事業、丸紅は食料、豊田通商は自動車、双日は航空機といった分野に強みを持っています。他には得意分野により特化した専門商社がたくさんあります。

(写真は、三井物産が2010年から参画しているペルーのリン鉱山=三井物産提供)

価格が下がり赤字決算

 三菱商事と三井物産が強い資源分野はいったん権益を確保すると、それほど労力をかけなくても大きな利益を得られるというメリットがあります。ただ、世界的不況などで資源価格が下落すると、おおきな赤字を背負うというリスクもあります。2016年3月期決算では、原油や銅の価格が大幅に下がったことから、投資を回収できず、三菱商事が資源関連で3850億円、三井物産が2800億円の損失をだし、戦後初めての赤字決算となりました。伊藤忠商事など資源依存の小さい商社は業績の悪化は小さく、伊藤忠商事がこの期の利益トップとなりました。

(商社はコンビニ事業にも力を入れている。図は各社の関係性を示す。HDはホールディングスの略)

「脱資源」の流れ続く

 このため、業界では「脱資源」の必要性が言われ、コンビニ、農業、発電、電力小売り、メディア事業などに力を入れる動きが目立つようになりました。こうした流れは今も続いていますが、一方で資源も復権しています。2018年3月期は、石炭や鉄鉱石などの資源価格が上がったことも影響し、大手7社のうち三井物産と双日を除く5社が過去最高益となりました。三井物産が過去最高益に届かなかった理由のひとつがチリの銅事業で損失が発生したことで、資源分野には光と影があることも示しています。

◇2018年3月期実績

<三菱商事>
売上高 7兆5673(6兆4257)
純利益  ★5601(4402)

<三井物産>
売上高 4兆8921(4兆3639)
純利益   4184  (3061)

<伊藤忠商事>
売上高 5兆5100(4兆8384)
純利益  ★4003  (3522)

<住友商事>
売上高 4兆8273(3兆9969)
純利益  ★3085  (1708)

<丸紅>
売上高 7兆5403(7兆1288)
純利益  ★2112  (1553)

<豊田通商>
売上高 6兆4910(5兆7973)
純利益  ★1302  (1079)

<双日>
売上高  4兆2090(3兆7455)
純利益     568   (407)

※単位は億円。かっこ内は前年比増減率パーセント。★は最高益

精神的にも肉体的にタフさ必要

 商社は就職人気の高い業界です。給料が高い、国際性がある、仕事の幅が広い、など人気の理由はいろいろあります。ただ、漠然と「人気があるから挑戦してみよう」といった生半可な気持ちでは挫折するかもしれません。たとえば、ペルーの未開発銅鉱山の開発を担当することになると、ペルーの山奥で生活することになります。日本人はまわりに少ししかいなくて、食事や娯楽も日本にいるようにはいかないでしょう。それでもここから銅を世界に供給するんだという強い意志をもって仕事をしなければなりません。もちろん商社の仕事はほかにもたくさんあります。脱資源の分野に進み、国内ばかりで仕事をする道もあるでしょう。商社の仕事は人の要素が強い仕事です。個人の創意工夫が求められます。どこで仕事をしようが、精神的にも肉体的にもタフで柔軟なことが求められると思います。

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

業界別

月別