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2018年06月27日

ダイハツ、スズキ…軽自動車メーカーが生きる3つの道

自動車・輸送用機器

 軽自動車は日本にしかありません。戦後、自動車を普及させるため、国が小さくて税金の安いクルマの独自規格を作ったからです。このため、軽自動車を主力にするメーカーが生まれ育ちました。ダイハツ工業とスズキです。最近は、ホンダも軽自動車に力を入れ、2強に迫っています。軽自動車は地方の足として売れてきましたが、最近は性能やデザインが登録車(軽より大きい自動車)並みの軽自動車も現れています。ただ、軽自動車は日本でしか通用しないクルマのため、人口が減る日本ではじり貧が予想されます。もっと小さくて安全なクルマを開発して地方の足を強化する路線か、都会でも売れるおしゃれなクルマに比重を移すか、海外市場を目指して登録車に力を入れるか、軽自動車メーカーは悩みながら先行きを模索しています。

(写真は、ダイハツ工業の新型軽自動車「ミラトコット」)

圧倒的に地方で売れる

 軽自動車の規格は、1949年に定められました。その後、規格は徐々に大きくなる方向で変わり、現在は長さ3.4メートル以下、幅1.48メートル以下、高さ2.0メートル以下、エンジンの排気量は660cc以下と決められています。この規格に適合する自動車は税金が安くなります。現在、国内で保有されている自動車のうち約4割が軽自動車になっています。軽自動車の世帯あたり普及台数を見ますと、佐賀、鳥取、長野、山形、島根、福井の6県で1世帯当たり1台以上を保有しています。一方、東京都では10世帯に約1台となっており、圧倒的に地方で使われていることが分かります。また、女性と高齢者の利用が多いことも特徴です。値段が安いことや小さくて運転しやすいことから、公共交通が発達していない地方の移動手段として重宝されているのです。

(写真は、長野県内の軽自動車専門店)

ダイハツとスズキが2強

 メーカーとしては、ダイハツ工業とスズキが長らく2強を形成しています。2017年の販売台数はダイハツが60万台、スズキが56万台でした。最近はダイハツのトップが続いていますが、その差は少しです。ホンダは、N-BOXがヒットしていて34万台で3位に定着しています。軽自動車はほかにも、日産自動車、三菱自動車、マツダ、スバル、トヨタが売り出していますが、このうち三菱以外はダイハツ、スズキ、三菱からのOEM供給(相手先ブランドで完成車を供給)です。

(写真は、ホンダの「N-BOX」)

これからの道

 軽メーカーの悩みは、市場が国内に限られることです。海外では税金の優遇はありませんので、大きさやエンジン排気量の規格を守って製造する意味がないためです。軽メーカーのこれからの生き方は大きく分けると3つ考えられます。ひとつは、地方の足をより強化する方向です。たとえば、ダイハツは軽よりさらに小さな1人乗り、2人乗りの電気自動車の研究開発に力を入れています。衝突しない自動運転技術を組み合わせて、地方のお年寄りの買い物や病院通いなどの足にならないかというものです。一方、室内が広く、性能やデザインに力を入れ、価格も軽としては高いN-BOXがヒットしていることから、都会の若者もにらんだ新しい軽需要を開拓する道もあります。また、スズキは登録車を増やす方向を打ち出しています。登録車なら海外市場が広がっていますので、輸出や海外生産に活路を見出そうというわけです。ダイハツはトヨタの子会社なので、グループ内のすみ分けから登録車を増やす方向性はとりにくいのですが、スズキは独立路線のためできるというわけです。

(写真は、スズキの「アルトラパン」)

コスト削減に厳しい

 軽自動車業界も自動車業界の一部ではありますが、独特なところもあります。たとえば、コスト削減に厳しい自動車業界の中でも軽メーカーは一段と厳しいと言われます。スズキを長く経営している鈴木修会長は自ら「中小企業のおやじ」と称して、徹底的なコスト削減を言い続けた経営者として有名です。また、不況に強い点も登録車メーカーとは違います。生活に密着したクルマであり、価格も安いため、景況に関わらず売れる商品と言われます。

(写真は、スズキの鈴木修会長)

別の世界、別の面白さ

 ただ、電動化や自動化という自動車業界全体の変化は軽メーカーにも押し寄せています。ダイハツやスズキの規模では自前で対応するのは難しく、どのようにするのか注目されます。就活生にとっては、自動車メーカーといえばトヨタや日産が頭に浮かぶでしょうが、軽メーカーには別の世界があり、別の面白さもあります。自動車業界でグローバルに活躍したい人には物足りないかもしれませんが、グローバル志向や高級車志向の強くない自動車好きの人は考えてみてはいかがでしょうか。

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