生命保険業界は戦後大きく伸びた業界のひとつです。「生保のおばちゃん」と呼ばれる女性営業職員の活躍で契約を増やし、現在約33兆円という市場規模の業界に育ちました。しかし、難しい時代に直面しています。国内市場は飽和状態に近くなっているうえ、超低金利により円での運用では十分な利回りが得られなくなっています。そんな中、住友生命とソニー生命が業務提携で合意しました。ソニー生命の強みである外貨建て保険商品を住友生命の販売網で売り出します。業界が円建て商品から外貨建て商品にシフトしていることを示しています。ほかにも、生保各社は競争の激しさから魅力的な新商品の開発に力を入れたり、海外市場に力を入れたりしています。万が一の時の備えとして生命保険の必要性はこれからも変わらないでしょうし、寿命の延びによる利益の自然増もまだ続きそうですので、苦境というほどではありませんが、長く続いた追い風がなぎに変わりつつあるとはいえそうです。
(写真は、住友生命保険の橋本雅博社長)
1兆円超えは日生など9社
生命保険業界で、収入が1兆円を超える会社は2018年3月期決算で9社あります。多い順に並べると、日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命、プルデンシャル・グループ、メットライフ生命、T&D、アフラック生命、ソニー生命となります。このうち、プルデンシャル・グループ、メットライフ生命、アフラック生命の3社は外資系です。これ以外にライフネット生命のようなネット専業の生命保険会社もありますが、ネット専業の市場規模は200億~300億円とみられ、約33兆円の業界全体から見れば、まだごく小さな存在です。
(図は、生保大手の2018年3月期決算)
為替次第で元本割れのリスクも
生命保険大手の業績を見ると、増益の会社が多く、順調に見えます。ただ、内実は日本銀行のマイナス金利政策で国債による運用が厳しくなっていて、円建ての商品は不振です。代わりに力を入れているのが外貨建ての商品で、円安が追い風になって利益を上げたという構図です。為替が一転円高に振れると元本割れになるリスクもあるわけで、今の生保の経営は盤石とは言えません。
(写真は、日本銀行の黒田東彦<はるひこ>総裁)
海外の生保を買収
そもそも主力の国内市場は人口減少により、大きな伸びは期待できません。そのため各社の視線は海外に向いています。日本生命は今年3月、アメリカ系の中堅生保マスミューチュアル生命保険を買収すると発表しました。また、同じ3月にドイツの資産運用会社に出資することも発表し、海外展開に積極的な姿勢を見せています。第一生命も海外事業の利益を2020年度までの3年間で1.5倍超に引き上げる目標を掲げています。また東南アジアにも目をつけていて、人口の増えているカンボジアとミャンマーに駐在員事務所を開いて参入の機会を探っています。中国も魅力的な市場で、大手生保はすでに参入していますが、規制緩和が進んでいるため、日本の損害保険会社や証券会社も中国の生命保険業界に参入しようとしています。
(図は、最近の生保業界の買収)
銀行窓販や保険ショップ増加
かつての生命保険は、自分から積極的に加入することは少なく、営業職員に薦められて加入することの多い商品でした。そのため、各社は多くの女性営業職員を抱えて売り込みに力を入れてきました。こうした商法の限界も指摘されるようになり、銀行での窓口販売(保険の窓販=まどはん)やネット販売に徐々にシフトしています。また、各社の保険商品を売る「保険ショップ」も増えています。ただ、営業職員は業界全体でまだ約23万人いるとされ、伝統的な営業が残っています。
(写真は、保険商品を販売する銀行の窓口)
金融に関心があれば誰でも
生命保険会社が力を入れようとしているのは、海外と新商品です。海外展開のためには、タフで語学力のある人材が求められます。また、新商品の開発のためにはアイデアや数理計算が必要で、頭が柔らかくデジタル技術にも強い人材が求められます。もちろん、営業職員を統率したりする従来型のゼネラリストも必要です。固定的な適性はありませんので、金融に関心のある人なら誰でも検討してみるといいと思います。
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