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2018年05月30日

人手不足の建設業界、ロボット活用で「新3K」めざす

建設・不動産・住宅

 今、建設業界はバブル期並みの人手不足だそうです。東京オリンピック・パラリンピックを前にして工事はたくさんあるのですが、現場で作業をする人が足りません。軽い人手不足なら「うれしい悲鳴」ということができますが、建設業界の場合、労務費の高騰が業績の足を引っ張るレベルになっています。対策として、初任給の引き上げ、週休2日の完全実施、フレックスタイム制導入、非正規の正社員化などあれやこれやの待遇改善をしていますが、追いつきません。抜本的な対策として、外国人の単純労働者の受け入れや作業のロボット化が現実的になってきています。今後、景気次第で人手不足感が緩むこともあるでしょうが、少子高齢化という構造は変わりませんので、当面の慢性的人手不足感は解消しそうにありません。志望する人は、会社に入ってからこの問題にどう取り組むかのアイデアを考えておくといいと思います。

(写真は、建設中の新国立競技場=朝日新聞社ヘリから)

就業者は3割近く減っている

 建設業界は中小企業が多く、業者数は全国で約47万社に上ります。就業者数も492万人と、他の業界に比べて多くなっています。ただ、業者数は1999年のピーク時に比べて22%減っており、就業者数も1997年のピーク時に比べて28%減っています。就業者数の減少の原因はふたつあると考えられます。ひとつは建設業界に「きつい、きたない、危険」の3Kイメージがあり、それを敬遠する若者が多いことです。もうひとつは、年齢の高い就業者が多く、毎年多くの人がリタイアしていくことです。今も50代以上が3割以上を占めていると言われています。

(写真は、建設現場で働く外国人労働者)

ゼネコン4社のうち2社が減益予想

 建設業界の最大手は、ゼネコン4社といわれる鹿島、大林組、清水建設、大成建設です。現在、業績はおおむね好調です。2018年3月期決算を見ると、清水建設が売り上げも営業利益も落としましたが、ほか3社は増収増益です。東京オリンピックを目指して首都圏では建設ラッシュとなっており、すでに受注している手持ち工事残高は過去最高水準に達しています。しかし、今期の業績予想では大成建設と鹿島の2社が大幅な営業減益を予想しています。その理由は、労務費の増加や資材費の高騰です。仕事はたくさんあるのですが、コストがそれ以上に多くかかるという構造です。

週休2日にする動きがでる

 日本銀行の調べでは、約4割の業種で人手不足感が過去最悪となっています。運輸や宿泊・飲食サービスと並んで強い不足感を示しているのが建設です。一方で、建設業は過労死問題への対策も求められています。昨年、新国立競技場の建設工事に携わっていた新人男性社員が自殺した問題は、過労死による労災と認定されました。業界は人が足りないからといって残業で乗り切るわけにはいきません。こうしたことから、業界はこれまで建設現場では一般的だった週休1日を週休2日にするように動いています。また、奥村組のように働く時間を自由に選べるフレックスタイム制の導入を始めるところもでています。初任給を上げたり、正社員を増やしたりする動きも建設業界では目立っています。3K職場ではないというアピールで人を集めようという狙いです。

(写真は、ビル建設現場でインターンシップをする高校生たち)

頼みは外国人労働者とロボット

 それでも不足感はやわらがない可能性が高いと思われます。そこで政府は抜本対策として建設、農業などの業種を対象に幅広い外国人労働者を受け入れる方策を検討しています。これまでは原則的に禁じられていた単純労働の外国人の受け入れを実質的に開放しようというものです。かなり大きな政策変更になります。また、業界はロボットの導入にも力を入れています。ロボットはセンサーやカメラで状況を捉えながら、高いところへの板の取り付け、床のコンクリートをコテでならす作業などの3K仕事を担おうとしています。並行して、ロボット導入の前段階として人間の作業を楽にするアシストスーツ(パワードスーツ)の導入も進めています。

(写真は、清水建設が実験中の天井をつくるロボット)

子や孫の世代にも誇れる仕事

 3Kといわれてきた建設の仕事ですが、とても夢のある仕事でもあります。今年は霞が関ビル竣工50年ということで、当時は画期的だった超高層ビルを建設した人たちの物語がメディアで取り上げられています。霞が関ビルだけでなく、後世に残る建築物を造るのに関わることは、子や孫の世代にも誇ることができる仕事です。ロボット活用の朝日新聞の記事の中で大和ハウス工業の専務さんが「高い『給料』、長い『休日』、『希望』がもてるという新3Kに変えたい」と言っていますが、そうなれば夢だけでなく働きやすさもある仕事になります。

(写真は、大和ハウス工業が開発した耐火被覆吹付ロボット)

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